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Column with A CUP OF MUSIC #01 コーヒーと音楽の絶妙な関係

A CUP OF MUSIC #01

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A CUP OF MUSIC #01

コーヒーと音楽の絶妙な関係

取材/文:三浦 信(COLAXO)
撮影:森山祐子
 

 このたった数年で東京におけるコーヒーシーンの在り方が変わってきたような気がする。老舗の純喫茶は今も存在するし、スターバックスにだってお世話になりっぱなしだけれども、以前と異なるのはインディペンデントでありながら自由度の高い新しいお店が続々と生まれて、お店と街の、店主と常連の関わり方に変化が生まれてきている。“アメリカ西海岸”の云々だとか“サードウェーブ的な〜”とか飾りの形容詞は一旦忘れて、東京の街をより魅力的にするコーヒー屋とその常連にお時間をいただき、お店と人と音楽について語るarban的コーヒー企画。

 

はじめての会話は音楽だった

 今回訪ねたのは富ヶ谷(東京都渋谷区)に今年2月にオープンした『Little Nap COFFEE ROASTRES』(以下ROASTERS)。店主の濱田大介さんはメディアのコーヒー特集に多数登場するベテランのバリスタであり、ミュージックラバー。お客さんと共通の接点も音楽であることが多い。取材に協力いただいたDJの高木慶太さんもそのうちのひとり。長きに渡る交流のそのはじまりは、お店でかかったある1曲がきっかけだった。


入るのに少し勇気のいるお店だった



高木 正確に言えば僕は代々木公園の『Little Nap COFFEE STAND』(以下STAND)の常連なんですよ。言わずと知れた濱ちゃんが6年前に作ったお店。普通に生活していたら気づかないような場所にあるんで確か何かのメディアで知ったのがきっかけ。入るのに少し勇気が必要な雰囲気だったし、実際中に入れば濱ちゃんと僕ふたりだけっていうシチュエーション。その時なにを頼んだかも覚えていないけれど、なにか話した方がいいかな?って思っていたところにFriscoの「Virtual Insanity」(ジャミロクワイの代表曲)がかかって、これ『これ誰ですか?』って聞いたのがいちばん最初の会話です。
 

焙煎は独学で。試行錯誤を経て今に



濱田 そうだった?(笑)STANDでは信頼の置ける焙煎士にオリジナルで焙煎してもらってから、その日に出せる一番のもの、お客さんに合わせて出していたんだよね。慶太さんだったら南米のイメージで豆はコロンビア、音はクンビアみたいな。実際は忙しいからお店でかかっているレコードもお客さんにひっくり返してもらうようなこともあったけど、豆に関してはROASTERSが出来てからよりフレキシブルに幅広く提供できるようになりましたね。焙煎に関しては基本、独学で。工程や味覚に対して大きなイメージはもともとあったし、それを立体的にオーガナイズする作業だと思ってたので、試行錯誤を経て今に至る次第です。


アトリエとして始まった店から



高木 コーヒーの焙煎だけじゃなくて、チーズケーキもそうだよね?

濱田 そうそう。STANDの狭いカウンターの中で家庭用のオーブンで作ってて。みんなよくこんなところでやってるね?って言うんだけど、自分の作りたいものを追求するのに場所は関係なかった。これもDIYで出来るんだってひとり盛り上がってましたね。

高木 そのために新しくROASTERSを構えたのかと思ってたよ。

濱田 あながちそれはハズレではなくって。まずは自分のアトリエとして作って。ずっとバリスタをやってきて、お店のプロデュースとか仕事の幅も広がった矢先、今のまんまじゃ20代の自分に敵わないんじゃないかって思って原点回帰の意味で作ったのがSTAND。でも焙煎もやりたかったので第二の原点回帰の意味で作ったのがこのROASTERSですね。


ちょっとした寄り道をさせてくれる場所


高木 自分はフリーランスだから家から出ないで1日仕事をし続ける日もあり得るけど、やっぱそれじゃいけないわけで。濱ちゃんのお店にこうして通うのは自分にとって足りないピースを見つける感じ。自己完結をリセットして、気持ちのうえでも時間的な意味でもちょっとした寄り道をさせてくれる場所。おまけにこの歳になって人間関係もここから広がるっていうオマケつき。

濱田 STANDに関して言えばカフェではなくスタンドっていう形態がよかったのかも。お客さん同士のボーダーラインがないうえ、サービスもない。狭いから自然発作的に場所を譲り合ったりしてコミュニケーションが生まれる。ある意味、適当さが売りで、常連さんたちがお店やその空気を作っている気がしますね。


それぞれがお店で聴きたい3曲


高木 今日はお店で聴きたい3曲を紹介ってことだったので。Little Napならちょっとひねりがあってオルタナティブなものがいいかと思って選んでみました。Bitty Mcleanは濱ちゃんとリンクする部分があって、とてもDIYなひと。元々レコーディングエンジニアで、自分でオケも作れば歌うという。新譜のロックステディですね。ジルベルト・ジルはジョアン・ジルベルトのレパートリーを取り上げてるんですけどドラムがドメニコなのでちょっと変態的なリズム。レオン・ブリッジズは若くてサム・クックのフォロワー。サザンソウルでヴィンテージ感がありながら、モダンでスタイリッシュな印象。





濱田 僕はまず実際にお店に来たアーティストの代表ということでキングス・オブ・コンビニエンスを。夜中にyoutubeで映像観てた日の翌日に本人がいきなり現れたときは思わず「I LOVE YOU!」って叫んじゃいましたね。あとはヴァン・ダイク・パークス。ウチに来てくれるお客さんにはちょっと旅行に来たような気分を味わってもらいたくて。だからこういうカリプソはトリップ感の演出にハマる気がして。ちょっと慶太さんっぽいし。あとペンギン・カフェ・オーケストラは実験的的ありながらメロウで分かりやすいので。






人が店を作り、店は街を作る

 人が店を作り、店は街を作るというのは間違った仮説ではないだろう。濱田さんと高木さんの会話からは1杯のコーヒーからは溢れてしまいそうな交流の足跡が垣間見え、実際濱田さんは代々木エリアの飲食をはじめとする個人経営者たちに呼びかけて“YOYO GIG”なるイベントも主催する。きっかけはコーヒーでしかない。でもこだわりの豆を自身で焙煎し、お気に入りの音楽を鳴らしながらブレることなく差し出されるその1杯は、街を彩り型作る大切な要素として今日も濱田さんのアトリエでドリップされている。



<Profile>
濱田大介
『Little Nap COFFEE STAND』『Little Nap COFFEE ROASTERS』オーナーバリスタ。1997年イタリア各地を旅して、エスプレッソを初めて口にするとともにバール文化に触れる。そのあとすぐにバリスタとして活動開始。2011年代々木に『Little Nap COFFEE STAND』開業。その後浅草『Bridge』、日本橋『COFFEE in the HOUSE』、原宿VACANT内に『NEW COFFEE STEPPERS』などプロデュースした後、2017年富ヶ谷に『Little Nap COFFEE ROASTRES』オープン。


高木慶太 
'“No samba, No life!”をキーワードに、『セレソン』(BMG)、『フレスカ・サンバ』(EMI)、 『ファンク・ブラック・リオ』 (EMI)、『ベン・ヂマイス』(ユニバーサル)といった褐色系ブラジル・コンピレーションの共同監修を手掛けたほか、 USENの人気チャンネル「DH-3 usen for Cafe Apres-midi」の選曲も務める。自称「BGM屋」として、「空気を変える、空気を読める」セレクトで、全国のバカラ・ショップをはじめ、幅広いクライアントに対応する。




<Shop Information>
Little Nap COFFEE ROASTERS(リトルナップ コーヒーロースターズ)


●住所/東京都渋谷区富ヶ谷2-43-15
●電話/03-5738-8045
●営業時間/9:00~19:00
●定休日=不定休
●アクセス=小田急線代々木八幡駅、東京メトロ代々木公園駅より徒歩5分

 

 

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