Arban

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至福のときを彩る音楽
至福のときを彩る音楽
 

 読者のみなさんはシャンパーニュについてどのようなイメージをお持ちでしょうか? おそらく高級なもの、お祝いのときに飲むものといったイメージを持たれるかもしれません。なぜArbanでシャンパーニュを?と思われるかもしれませんが、ひとつのシャンパーニュ・メゾン「テタンジェ」が世界3大ジャズ・フェスティバルである「モントルー・ジャズ・フェスティバル」の50周年を記念したボトルを作りました。しかも、本国スイス以外ではイギリスと日本のみでしか手に入りません。このメモリアルなシャンパーニュをせっかく味わうのであれば、音楽好きとしては素敵な音楽を聴きながら嗜みたい。そこで、選曲のプロ中のプロに「至福のときを彩る音楽」をテーマに選曲してもらいました。ナビゲーターはDJ/プロデューサーの松浦俊夫さん。1999年にはスイスの「モントルー・ジャズ・フェスティバル」に日本人のDJとして初めて出演。以降もジャズのDJとしての活躍のほか、インターFMで放送中のラジオ「Tokyo Moon」で毎週多くの音楽を紹介しています。彼の頭のなかの膨大なアーカイブからいったいどのような「至福のときを彩る音楽」を紹介してくれるのでしょうか?

取材・文:山本将志
写真:Atsuko Tanaka

——本題に入る前にスイスの「モントルー・ジャズ・フェスティバル」出演時のこと教えてもらえますか?
93年にU.F.O.(United Future Organization)が日本のレーベルと契約したんですけど、そこはジャイルス・ピーターソンのレーベルTalkin' Loudのグループレーベルでした。彼は毎年スイスの「モントルー・ジャズ・フェスティバル」のなかで、「Talkin' Loud Night」というイベントを行っていました。そこに誘われたのが出演のきっかけですね。99年にU.F.O.はヨーロッパとアメリカをまわるワールドツアーがあり、その一環で来ないか?と。
——憧れのステージに立ったときの気持ちはどうでしたか?
やっぱり、世界3大ジャズ・フェスティバルのひとつに出演したことへの達成感は大きなものでしたよ。
——お客さんの反応はどうでした?
モントルー・ジャズ・フェスティバルに日本人DJが出演したのは、わたしたちが初めてだったと思います。なので、“日本人DJが出演した”というインパクトは強かったようですね。ただ、最初は様子を窺われているというか、見られている感じでした。会場の大きなステージにDJブースが組まれており、客席からはけっこう離れてるシチュエーション。このなかでどう自分たちのムードをどうやって作ろうか?と第一に思いました。それでも自分たちがいつも変わらなかったのは、日本人だけど海外に匹敵する、あるいはそれ以上のもので印象を与えなければいけないという気持ちでやっていたからだと思います。
——当時、かけた曲で覚えているものはありますか?
覚えてないんですよ。U.F.O.の曲をかけたとは思いますが曲名までは…。ただ、99年だったのでおそらく4枚目のアルバム『Bon Voyage』の中からかけたんじゃないかなと思います。
——オフの日は何をして過ごしましたか?
ワールドツアーの関係で1日しかいれなかったのでゆっくり過ごせませんでした。ただ、出演前に何か残しておきたいなということで、持って行った浴衣を着てレマン湖のほとりを歩きました。今となれば何でそんなことをしたのかわかりませんが(笑)。
——出演する前と後で、本国スイスの「モントルー・ジャズ・フェスティバル」に関して何か印象は変わりましたか?
ジャズ・フェスティバルという名の下にジャンルを越えたアーティストたちが集まって、何日にもわたりライブを繰り広げられる環境が羨ましいと思いました。日本にもなくはなかったですが、モントルー・ジャズ・フェスティバルのような規模のものはなかったので。
——規模としては徐々にだと思いますが、昨年東京でも「モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン」が開催されました。出演していかがでしたか?
LIQUIDROOMでやった時、mama!milkから始まって、シャソル、モッキーといった今までにないラインナップを実現されたことの素晴らしさ、いろいろな年代のお客さんが早い時間からやって来てくれた、そういった面に感動しました。このラインナップが受け入れられたんだと。今年で2回目ですけれど、主催者の出演アーティストへのこだわりが強いことがいいと思っています。ブッキングに意味があるというか。これから徐々に規模が大きくなっていったとしても、このこだわりは変わらないでほしいと思います。

音楽には空気を整えるような役割がある

——ラジオ「Tokyo Moon」について伺いたいのですが、始めた経緯というのは?
当時、一緒によくDJをしていた友人が広告代理店のラジオ担当だったということもあって、番組を持つべきだと環境を作ってくれたんです。日曜日の夜7時からの30分番組として、2010年1月3日から始まりました。「新旧問わず、好奇心旺盛な大人が聴く音楽番組」というコンセプトは、今も変わらずにやっています。30分番組だった頃の方が今よりはシックだったのかなとは思います。
——「Tokyo Moon」という名前には上品さがありますよね。
わたしの月へのイメージですが、“静かだけど力強さもある”というところが、大人に似ていると思うんです。大人だからこその経験からくる言動に通ずる部分があるのかなと思って。“月を見上げるように、自然に音楽を聴ける番組”というのがそもそものイメージです。ちなみに番組は、シャンパーニュにも通じていますよ。以前は日曜日の夜7時からの放送だったので、番組を聴いてもらいながらシャンパーニュを食前酒として飲みながら料理を作ってもらい、番組が終わって食事はメインに入っていくというイメージ。だから当時はシャンパーニュのスポンサーを探したりもしたんです。
——ライフスタイルのなかに自然と音楽があるイメージですね。
わたしは「エアコンディショニング」という言い方をしているのですが、空気を整えるようなものの役割として音楽があるんじゃないかと思うんです。音が漂っているなかに身を置いてもらって、飲みものだったり食べものだったりを楽しめたらと思うんです。
——松浦さんはどのようなときにシャンパーニュを飲まれていますか?
外だとDJ、パーティー中が多いです。泡の効果もあると思いますがやっぱり気持ちを高揚させてくれますよね。高揚すれば選曲も変わっていくと思いますし、聴いてくれている人たちの気分も上がっていくでしょう。共に上がっていけるような関係性を作れるお酒ですよね。
——プライベートでは?
プライベートでは何か区切りをつけるときや、メモリアルな日のものとして、日常とは異なる特別なときに飲んでいます。
——では「至福のときを彩る5枚」を紹介してもらう前に、テタンジェ・ブリュット・レゼルヴを飲んでもらい、味を音楽で例えたら?といったお題をひとつお願いしたいのですが…。
いいですよ。いわゆるスウィート系ではないので、イメージとしては今日持ってきているレイチェル・グールド&チェット・ベイカーの『All Blues』ですね。ジャズですがブルージーな世界観と力を抜いたソフトな演奏、洗練された音楽がブリュット・レゼルヴの味わいと重なります。
ーーなるほど! では、このまま「至福のときを彩る5枚」としてレイチェル・グールド&チェット・ベイカーの『All Blues』から紹介してください。

Rachel Gould, Chet Baker

All Blues

チェット・ベイカーがボーカリストのレイチェル・グールドとコラボレーションしたアルバムです。チェット・ベイカーの力の抜けた独特の演奏に彼女のボーカルがブルージーに絡んできます。技術的に秀でているというよりも、そのふたつが交わったときの独特のブレンド感を感じるのです。大人の楽しみとしてあるようなアルバムです。

V.A

Parle avee elle

ペドロ・アルモドバル監督の映画『トーク・トゥー・ハー』のサウンドトラックです。劇中にカエターノ・ヴェローゾ本人が演奏するシーンがあり、そこに来ているみんなが演奏を聴いて涙しているんです。今回、「モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン」で11年ぶりの来日。しかもソロ弾き語りでのライブパフォーマンスが観れるということで非常に楽しみにしています。

板橋文夫

渡良瀬

板橋文夫さんも「モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン」に出演されますね。今やこの「渡良瀬」が日本と海外を繋ぐアンセムになっているように思うんです。HEXのメンバーであるKan Sanoさんが南仏のフェスティバルでこの曲を演奏しました。昨年、南仏のフェスティバルでわたしも別バージョンをかけました。日本人の情緒感みたいなエモーショナルなものがひとつになった素晴らしい楽曲だと思います。

Carl Drevo und die Clarke-Boland Big Band

Swing, Waltz, Swing

ビッグバンドでワルツを演奏するアルバムです。DJでもかけています。個性的なミュージシャンが集まっているところが、普通のビッグバンドとは違います。楽曲は「My Favorite Things」といったスタンダードなのですが、それを敢えてビッグバンドでやっているというところもカッコ良さのひとつです。情緒的な雰囲気も大人がじっくり味わうのにふさわしい作品じゃないかなと思います。

Yusef Lateef

Jazz ’Round The World

ユセフ・ラティーフがいろいろな国の楽曲をジャズに落とし込んで演奏した作品です。インドだったりアフリカだったり、日本の曲もあります。日本では「リンゴ追分」を演奏しています。この曲はザ・トロージャンズのスカバージョンは、知られていると思いますが、ジャズで「リンゴ追分」をやるっていうところの意外性に驚きました。そして、その1枚のアルバムで世界を巡る音楽の旅ができる楽しさというのがある作品だと思います。

——ありがとうございます。紹介してもらった作品は、バラードのような曲だから特別な時間に合うとか、踊れるような曲だから合わないというわけではないんですね?
そうですね。どちらかというと、フィジカル的に踊らせるというよりは、“気持ちが躍るものがそこにあるかどうか”で選びました。そこがシャンパーニュに繋がっていく部分があるんじゃないかなと思います。聴いてもらえれば、心が躍る感じがわかってもらえるかなと思います。

モントルー・ジャズフェスティバル50周年記念スリーヴァ―ボトル

伝統と先進性を併せ持つ家族経営のシャンパーニュ・メゾン テタンジェ。自社ぶどう畑はシャンパーニュ地方屈指の288ヘクタールを誇り、シャルドネ種を主体とする。そのテタンジェが作るブリュット・レゼルヴは、白のシャンパーニュ(辛口)で、果実やブリオッシュ、桃や白い花、バニラなどを想わせるアロマと生き生きとしたフレッシュでクリスピーな味わいが特徴。高品質でエレガントなシャンパーニュとして、世界各国で愛されている。

公式サイト:
http://www.sapporobeer.jp/wine/taittinger/brutreserve/index.html

Ginza Music Bar
2014年に大沢伸一氏、音楽プロデューサー小林武史氏とTORIBA COFFEEの鳥羽伸博氏の三者が“銀座で音楽”をコンセプトにオープン。音楽をかけるセレクターが常駐しており、つねにその場の雰囲気に合わせた曲で楽しませてくれる。有名DJが選曲を務める日も。店内のカウンターや椅子、ソファーなどはすべて特注で作られ、音楽以外にも強いこだわりが感じられる。

公式サイト:
http://www.ginzamusicbar.com/