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青野賢一(BEAMS RECORDSディレクター/ビームス創造研究所)|  2016 The Best Albums あの人が選ぶ今年の3枚
 

青野賢一
BEAMS RECORDSディレクター/ビームス創造研究所

主に社外のクライアントワークに従事するビームス創造研究所に所属。ビームスの音楽部門BEAMS RECORDSのディレクターも兼務する。またファッション、音楽、映画、文学、美術などを横断的に論ずるライターとして、『CREA』(文藝春秋)、『ミセス』(文化出版局)などで連載を持つ。選曲家、DJとしても長いキャリアを誇る。
http://www.beams.co.jp

年明けすぐに『META』をリリースしたMETAFIVE、トリッピーで中毒性がありつつも和める『できれば愛を』がよかった坂本慎太郎、ザ・レディオ・デプトを思わせる哀愁を帯びたインディ・ロックを聴かせるPictured Resortなど、日本人アーティストの作品が充実していた印象だが、そんな中でも、やくしまるえつこのYakushimaru Experimentとギタリスト・鈴木大介の武満作品がフェイヴァリット。個人的に振り返ってみると実験的でエッヂィな作品に惹かれるものが多く(Yakushimaru Experimentはその最たるもの)、ジャズ系だとジェイムスズーやRVNGのリイシュー作品のいろいろをよく聴いていたように思う。

  • Yakushimaru Experiment
    Flying Tentacles

    相対性理論のやくしまるえつこがYakushimaru Experiment 名義で放った、即興、朗読、数字を扱う実験コンセプト・アルバム。相対性理論やこれまでのプロジェクトに見られる外見上のポップさはなく、どこまでもアヴァンギャルド。オリジナル9次元楽器「dimtakt」を使った即興セッション、作家・円城塔とのコラボレーション作、夏目漱石の骨格から復元されたモンタージュ音声と共演した朗読などが収録されている。実験精神に溢れながらも、その声の圧倒的な存在感で聴き手を引き込んでしまうのはさすが。音響的な配置も抜群だ。

  • The Orb
    Cow / Chill Out, World!

    アレックス・パターソンとトーマス・フェルマンのユニット、ジ・オーブの最新アルバムは、これまでのキャリアの中でも最もアンビエント色が強い作品。ライブ音源やフィールドレコーディング素材を即興感覚で再構築したということだが、フィールドレコーディング音の使い方のお手本のような仕上がりに円熟味が窺える。アンビエントというものの、ビート感がある曲もあり(あくまでも「感」だが)、飽きることなく聴くことができるので、アンビエント嫌いの人にもおすすめ。そこはかとなく漂うユーモアもいい。

  • 鈴木大介
    森のなかで

    2016年は武満徹没後20年。その武満徹をして「今までに聴いたことがないようなギタリスト」と言わしめた鈴木大介が武満の映画音楽と最後の作品「森のなかで」に真っ向から取り組んだアルバムが『森のなかで』。「夢千代日記」、「伊豆の踊り子」、そして「波の盆」といった名旋律を真摯に奏でる鈴木のギターの響きにとっぷりと浸れる素晴らしい内容の一枚だ。個人的には「青幻記」が最近のお気に入り。沖縄音階を使い、ミニマルに引っ張る中盤がじつに心地よい。