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大前 至(音楽ライター)| 2016 The Best Albums あの人が選ぶ今年の3枚
 

大前 至
音楽ライター

96年より音楽ライターとしての活動をスタートし、ヒップホップをメインに記事を執筆。03年から15年までLAを拠点に活動。音楽に加えてファッション、アートなど様々な分野の記事を手がける一方、アーティストの来日ツアーなどにも携わる。現在はライターとしての活動の他、アーティストのマネージメントやPファンクをテーマにしたアートショウ「The Mothership Returns To Tokyo」を主催するなど、多方面で活躍。

個人的には昨年LAから戻って以降、日本の音楽を聴く機会もあらためて増えてきて、とくに日本のヒップホップはフリースタイルブームなどもあり、非常に面白い年でした。また、社会情勢と音楽との関わりという面でも考えさせられた一年でもありました。とくにアメリカでは大統領選の影響がヒップホップシーンにもダイレクトに現れていて、それが今回のセレクションにも表われていると思います。そして、音楽の聴き方そのものが急速に変わった年でもあり、Apple MusicやSpotifyなど、ストリーミングで新作アルバムを聴くのが(個人的にも)当たり前になっていて、それが今後、音楽業界全体へどのような結果をもたらしていくのか、非常に興味深いです。

  • Common
    Black America Again

    ミスター・コンシャス・ラッパー=コモンが彼ならではのスタイルをストロングに貫いたアルバム。当初はもっと早い時期に出す予定だったものを、あえて大統領選直前にリリース。コモンが思う今のアメリカの切実な状況をラップで綴っていて、非常にヘビーでありながら、愛に溢れた感動的な作品です。ロバート・グラスパーが携わった数曲を除いて、大半の曲をカリーム・リギンスがプロデュースを手がけていて、緊張感みなぎるサウンドも実に素晴らしい。ちなみにカリームは来年、ソロの新作をリリース予定で、そちらも期待大です。

  • A Tribe Called Quest
    We Got It From Here… Thank You 4 Your Service

    ある意味、2016年最もサプライズなアルバムで、まさか18年ぶりにATCQの新作が聴けるなんて夢にも思わず、さらにそれがこれほどまでに素晴らしい作品になるとは!! と二度驚かされました。今年3月に亡くなったファイフの存在感も相変わらず素晴らしく、さらにQティップとの相性もバッチリ。さらにサンプリングを極力控えて、ほぼスタジオミュージシャンによる生演奏で構成されていて、Qティップのプロデューサーとしてのセンスの高さも高評価のポイント。単なるノスタルジーではない、今現在のATCQを聴けたことに感謝です。

  • NxWorries
    Yes Lawd!

    アンダーグラウンド作品の中で2016年最も聴いたのは、LAビートシーンの次世代を担うプロデューサー、ノレッジと現在最高峰のヒップホップ・ソウル・シンガー、アンダーソン・パックによるユニット=ノー・ウォーリーズによるこちらのファースト・アルバム。とにかくノレッジのビートとアンダーソン・パックの歌の組み合わせがじつに素晴らしく、お互いにとっても(現時点では)最高傑作とも言える出来だと思います。来年出るであろうアンダーソン・パックのドクター・ドレーのプロデュースによるアフターマスからのデビュー作も楽しみ!