Arban

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DIG散歩/DJ JIN編

WHAT's DIGGER

「中古アナログレコードを探す行為」を「Dig(=掘る)」と形容することがあります。これはおもにDJやレコードコレクターの間で使われる言葉ですが、さらに、それを生業にする人や、熱心過ぎてどうかしている人のことを「Digger(ディガー)」と呼んだりします。これは英語としても通用する表現ですが、普通はDigger=「金鉱掘り」を指す場合が多く、転じて「お金目当てで結婚する人」や「ダフ屋」という意味もあるようです。
 私が知るディガーさんの中には、安いレコード盤を掘り当てて転売して利益を得る、まさにダフ屋みたいな人もいて、その意味の符合に戦慄してしまうのですが、ディグ転売の場合、費やす時間や肉体的な過酷さを考えると「これはもう立派な労働じゃないか」って話なんですが、どうでもいい話ですね。すいません、本題に移りましょう。
 さて、そんな腕利きのディガーさんに、本誌が現金1万円を渡し、知識も体力もない私たちの代わりに、レコードを掘ってもらう。で、そのレコードを読者のみなさんにプレゼントしよう、というのが本企画『DIG散歩』です。連載二回目の今回、登場いただくのはDJ JINさん。一体どんな“レコード掘り”を披露してくれるのでしょうか。

本日のディガーさん

DJ JIN
ライムスターのDJ/マイクロフォン No. 3。ファンク/ソウル/ジャズなど幅広い音楽を独自のフィルターで引用、モダンなサウンドをクリエイトする音楽プロデューサーとしても知られる。さらにヒップホップをベースとして、あらゆるクラブ音楽にクロスオーヴァーするDJの集合体"breakthrough(ブレイクスルー)"を主宰。世界中のDJ/ミュージシャンとコネクトしている。レギュラーラジオ番組にJFN系列「Joint & Jam」(2010年~)。
Today's Digger
ディグ散歩の掟 予算は1万円以内 制限時間は3時間 購入対象はアナログレコードに限る 購入枚数に制限なし 購入店舗に制限なし

DIG START

ーーさて、本日最初のディグは、ここ新宿から。この街を選んだのは、何か理由があるんですか?
「新宿エリアには愛着があって、昔からこの界隈でよくレコードを買ってるんですよ」
ーーなるほど。そんなホームグラウンド新宿で、最初に行くお店は「HMV record shop新宿ALTA」。今年(2016年10月1日)オープンしたばかりのお店です。
「じゃ、さっそく始めましょうか」
ーーいまちょうど12時ですね。
「オープンしてまだ1時間なので、お客さんも少ないですね」
HMV
HMV record shop 新宿ALTA

〒160-0022

東京都新宿区新宿3-24-3 新宿ALTA 6F

☎︎ 03-5362-3360

http://www.hmv.co.jp/store/ALT/

ーーちなみに、こういう大型店でレコードを掘るときのセオリーってあります?
「これは僕のDJのスタイルとも関係してるんですけど、対象ジャンルが広いんですよ。つまり、ジャズもソウルもラテンもファンクもヒップホップも全部見なきゃいけない」
ーーしかも、シングルもLPも。
「そう。全部。だから、行く前にある程度の目星をつけて、効率よく探す努力をしてますね。時間もお金も限られてますから」
ーー確かに。今回の企画も同様、資金は1万円。3時間という制限がありますよ。
「そうは言っても、こんな楽しい仕事、なかなかないですよ(笑)。ただし自分が欲しいレコードをスルーしなきゃいけないので辛い……。精神衛生上よくない企画とも言えますね」
ーーところで……さっきから、ちょいちょい、他のお客さんから話しかけられたり、知らない人と握手してたり、店員さんにまで自己紹介される始末ですけど。レコード屋さん行くと、いつもこんな感じなんですか? っていうかJINさん、どんだけ人気者なんですか?
「そんなことないですよ。今日はたまたま知り合いが多いだけですよ。あとほら、カメラが同行してるから、変に目立ってるんじゃないですか?」
ーーいや、知り合いっていうか、みんなファン丸出しで話しかけてくるじゃないですか!
「ちょっと集中したいんで静かにしてもらっていいですか?」
ーーあ、すいません。俺がいちばん話しかけてました。
HMV record shop 新宿ALTA

〒160-0022

東京都新宿区新宿3-24-3 新宿ALTA 6F

☎︎ 03-5362-3360

http://www.hmv.co.jp/store/ALT/

HMVでLP3枚を購入。次は歩いて3分の大型店へ

HMVでLP3枚を購入。次は歩いて3分の大型店へ

Disk Union
ディスクユニオン新宿

〒150-0042

ラテン・ブラジル館
東京都渋谷区宇田川町11-11 柳光ビル本館2階

☎︎ 03-5428-3501

http://diskunion.net/shop/ct/shinjuku_latin

〒160-0022

ソウル/ブルース館
東京都新宿区新宿3-28-2 フクモトビルBF

☎︎ 03-3352-2031

http://diskunion.net/shop/ct/shinjuku_soul

〒160-0022

クラブミュージックショップ
東京都新宿区新宿3-28-2 フクモトビル3F、5F

☎︎03-5919-2422

http://diskunion.net/shop/ct/shinjuku_club

ーーさて、JINさん。まずは「ディスクユニオン新宿ラテン・ブラジル館」で軽くディグって、次も近隣の「ディスクユニオン新宿ソウル/ブルース館」。さらに「ディスクユニオン新宿クラブミュージックショップ」を軽快にハシゴするという、全ジャンル網羅型ディギンをキメていただきました。
「結構いいのが掘れましたよ」
ーーユニオンのハシゴで、最後にサクッと100円コーナーを見てましたよね。
「はい。90年代から2000年代初頭のヒップホップ名曲をいろいろ買いました。中古レコード屋さんとか行くと、いわゆる“Jディラもの”として、ちょっと高めで売買されるやつが100円コーナーに眠ってたので、そういったものも交えて。これはもう“救出”ですね。放っておけなかった」
ーーありがとうございます。ナイスディギンです。
「しかもこれ、自分でもDJで頻繁にプレイする曲なんで、これは俺が買わなきゃダメでしょ、ということで。是非この4枚セットでプレゼントしたいですね」
ーーいいですねー。DJ JINが見つくろった名盤セット。
「ちなみにこれは、その中の1枚でね、グランド・プーバの“A Little Of This”なんだけど、(エサ箱から)抜いた瞬間に『あれ?』と思ったんですよ」
ーー何か変なところがありますか?
「いや、見ただけじゃわからないんです。ほら、これ手で持ってみて。ちょっと分厚くて重いでしょ? この作品は12インチ盤1枚のはずなのに、2枚組みたいな重み」
ーーあ、ホントだ。これ2枚入ってますね。
「そう、元のオーナーが普段から“2枚使い”してて、そのまま売却して、そのままの状態で店に並んだのかな、と。でね、中を見たんですよ」
ーーそこ重要ですよ。ヒップホップだから、同じ盤が2枚入ってる可能性が高い。あるいはサンプリングのネタ曲が入ってる可能性もある……。
「ネタが入ってるとしたら、これにはボビー・ハンフリーが入ってる、ってことになりますねぇ」
――ですね。「Just a Love Child」のイントロを使ってるんでしたっけ。しかし100円レコードの中からブルーノートの名盤が出てくるなんて、夢があるじゃないですか!
「そう。ところが! 入ってたのはコレです!」
ーーん? ヒストリー…、アメリカズ・グレイティスト・ヒッツ。謎のLPですね。
「なんでアメリカのベスト盤とグランド・プーバ? ネタだっけ? よくわかんないですね(笑)」
ーーしかし、こんなことがあるから中古レコ掘りは楽しい(笑)。しかも、ジャケに触った瞬間、違和感を察知して抜くあたりが、一流ディガーって感じです。さすがです。
「ただし、この特技は日常生活ではまったく役に立たないですけどね」
ーーはい。悲しい特技です。「12インチシングルの違和感を瞬時に察知する能力」で地球を救うとか、そんな話聞いたことないですもん。
「あはは。『A Little Of Thisのサンプリングネタは、ボビー・ハンフリーのJust a Love Childなんです』って言っても、世間の多くの人にとって『は? だから何?』って話ですからね」
ーーしかも「Just a Love Child」は、じつは7インチも存在して、逆面がこれまたメロウな良曲「Chicago,Damn」なんだよね。って言ってもキャバクラではモテないですから。
「でしょうねぇ(笑)」
ーーいや、JINさんはミュージシャンだからいいですよ。さすがプロですねぇ、ってなるじゃないですか。っていうかJINさん男前だしさ。優しいし。モテるし。人気者だし。なんかズルいっすよ。
「まあまあ、落ち着いて(笑)」

気を取り直して次の街、高円寺へ。

気を取り直して次の街、高円寺へ。

universounds
universounds

〒166-0003

東京都杉並区高円寺南 3-46-9 プラザU 202

☎︎ 03-3314-5185

http://www.universounds.net/

ーーはい、やってきました。高円寺です。新宿から車で15分くらいでした。電車だと10分くらいで着くんですね。
「そう。近いんです」
ーーというわけで、到着したのはユニバーサウンズさん。マニアにはおなじみの名店です。
「ここは昔からすごくお世話になってるお店で、セレクトのセンスも抜群だし、大好きなお店ですね」
ーーお、いきなり7インチのコーナーを掘り始めましたが、何かお目当てはあるんですか?
「いや、特にないんですけどね、この店に来れば、必ず“何か”に出会えますから。もちろん、7インチだけじゃなくてLPもカッコイイ音が揃ってますよ。最後はこの店で、制限時間いっぱい粘ります」
ーーところで、残金は?
「4945円です」
ーーおお、夢が膨らみますね。(そして40分が経過)
「決めました。最後はこの3枚。全部シングルです!」
ーーなるほど。これはいい選曲ですね〜。しかも全部オリジナル盤じゃないですか。じゃ、さっそくレジへ。
「買ってきましたよ」
ーー残金はいくらですか?
「85円!」
ーーすごい! 見事に使い切りましたね。
「この記録はしばらく破られないんじゃないですか?」
ーーそうですねぇ。さすがです。というわけで、今日はDJ JINさんのディグっぷりを横でずっと見てきましたけどね。
「はい。どうでした?」
ーー収穫物の内容も、金額もお見事です。読者のみなさんも、きっと大喜びですよ。ただね、気になることがひとつ。
「え? なんですか?」
ーー今回のディグ。たった3時間のあいだに、あなた一体、何人の人に声をかけられ、握手を求められましたか?
「ああ。えーと、3人くらい?」
ーーーー7人ですよ! 7人‼︎ しかも今日まわった全部の店、すべての街で、男からも女からも。さっきも高円寺の道端で、ちょっと目を離した隙に(某ミュージシャンとばったり会って)立ち話してるし。アンタ、どんだけ人気者なんだよ! 羨ましいよ! 俺だってモテたいっすよ!
「まあまあ、落ち着いて……」

TIME UP

というわけで、今回の『DIG散歩』は無事に終了。
そして、お楽しみの「本日の成果」はこちら。

今回はプレゼントの振り分け(セット)も、DJ JINさんがコーディネートしてくださいました。
みなさん、奮ってご応募ください。

ディスク紹介

  • アルバム2枚セット A
    ●Tania Maria
    『Come With Me』
    ※国内盤
    ●PHIL MOORE III AND THE AFRO LATIN SOULTET
    『Afro Brazil Oba!』
    ※再発盤
  • アルバム2枚セット B
    ●H.P. RIOT
    『H.P. RIOT』
    ●Al Hudson & The Soul Partners
    『Especially For You』
  • 7インチ3枚セット
    ●かまやつひろし
    「我が良き友よ/ゴロワーズを吸ったことがあるかい」
    ●Sugarman Three
    「Cherry Pickin’/Turtle Walk」
    ●Niteflyte
    「If You Want It/I Wonder(If I’m Falling In love Again)」
  • 12インチシングル4枚セット
    ●MOS DEF feat.Q-TIP & TASH
    「Body Rock/Manifesto」
    ●Grand Puba
    「A Little Of This」
    ●De La Soul
    「Much More/Shoomp」
    ●Common
    「ONE-NINE-NINE-NINE」
| 盤質について
本誌の機材で「針飛び」のチェックを行っていますが、再生環境によって針飛びの可能性もあります。
また、盤によっては多少のスクラッチノイズが発生する可能性もあります。あらかじめご了承ください。

応募要項

■ 応募の方法
プレゼントに応募するにはARBAN MEMBERSへの会員登録(無料)が必要です。
下記URLより所定の手続きにそって登録してください。
https://www.arban-mag.com/entry

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■ 応募締め切り
2017年1月15日まで。当選の発表は、当選者へのみ1月下旬にメールでご連絡いたします。