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Interview with 菊地成孔 鬼才・菊地成孔が誘う至高のディナーショウ、再び。 取材・文/三浦信(COLAXO)



photo by Masahiro Sanbe

菊地成孔

INTERVIEW
INFORMATION

 ジャズマンであり、グルマンとしても知られる菊地成孔。この両側面を堪能できるのが、モーション・ブルー・ヨコハマで12月1日から2日間に渡って催される『晩餐会 裸体の森へ 第二回』だ。「菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール」の演奏とともに、菊地成孔プロデュースの料理を堪能できる同イベント。その意図と内容について、本人に聞いた。

——まずは、この企画の発端から教えてください。

「そもそものきっかけは、青山のブルーノート東京で“あること”に気づいてしまって」

——あること、とは?

「普通、ワイン好きならそのお店のセラーに何があるのか気になるし、それを見たうえで着席したいし、それこそブルーノート東京なんて、素晴らしい銘柄を取り揃えているわけですよね。でもその時はお客さんとして行ったら周りはポテトとビールばかり注文していて、6人体制のソムリエがそれを運んでいるのを目の当たりにしたらなんだか忍びない気持ちになってしまって」

——自分にも身に覚えがあります。

「そこで自分の公演のときに僕がお薦めするワインを出したいと思い、機密文書とも言える下代まで書かれたワインリストを拝見させてもらってグラスで出せるものを見立ててみたところ、これが大当たりで。確か創業以来のワイン売り上げを達成したはずです。飲食ってお酒を動かさないといけないビジネスじゃないですか。でも酒でそこまで出しゃばるミュージシャンもいない。だいたいバーテンがオリジナルのカクテルを作ってなんとなく自前の曲名をつけて出すってのがオチ。それじゃ全然意味がないからもっと実質的なことをやってみたというのがこの企画ですね。ブルーノート東京の段階ではまだお酒のアレンジまででしたが」

昨年に実施された『晩餐会 裸体の森へ 第一回』の様子


——それがモーション・ブルー・ヨコハマにスピンアウトすることになったのは?

「ブルーノート東京が好景気に沸いたら当然、姉妹店のモーション・ブルー・ヨコハマが黙ってはいないわけです(笑)。正直言って、モーション・ブルー・ヨコハマの食事とサービスは日本の高級ジャズクラブの中でも随一だし、制作(ブッキング)の岡島くんが飲食業界出身のグルメで、彼とは食事も行くので、確か去年かな? モーション・ブルー・ヨコハマの料理は本当にレベルが高いだなんて話をしたらその場でじゃあこの企画をやろう! ということになって」

——なるほど。

「料理はワインとの相性も考えてジビエがいいとか素材のリクエストはしましたけど、それをもとにシェフの試作があったうえでのメニュー作りだったので、ルセット(レシピ)をゼロから僕が作ったというわけではないです。ワインも料理とのマリアージュで店側がセレクトした銘柄の提案があって、そこから選ばせてもらいましたが、低価格帯から高価格帯のものまでバランスよくセレクトできました」


『晩餐会 裸体の森へ 第二回』特別乾杯酒(演奏開始用)


——普段はどんな食生活を? 

「100%外食ですね。フレンチは勿論ビストロやトラットリア、寿司も中華も好きだけどラーメンは食べません」

——食に対するこだわりは、幼少期から培われたものなのでしょうか?

「父親が料理人ってことは公に知られていると思うんですけれど、実際僕はお袋の味をあんまり知らないんですよ。病気になったときに母親に作ってもらった料理の記憶なんかは当然残ってますけれど、日々の生活において大半を占めているのは父親や周りの職人さんが作った味で。あとは小さい頃から自分でも料理を作っていましたね」

——お酒については? 

「環境として酔っ払いも当然多くなるのでトラウマ的にお酒はしばらくダメでしたね。舌の英才教育って側面でいえばお酒は早いうちから呑めた方がいいんですよ。食との“合わせ”が分かるようになるっていう意味でも。でも僕はお酒が呑めないのにチェーンスモーカーっていう舌にとっては百害あって一利なしの過程を経てきました。キューバの葉巻ならともかく日本の紙巻は舌をバカにしてしまいますからね。お酒が大丈夫になったのはほんとここ十数年くらいの話です」



——ワインはよく飲みますか? 

「フランスものがほとんどであとはイタリア産がちょっと加わるくらいですかね。カリフォルニア産は一切手をつけないし、ドイツ産も然り。まだ十年ちょっとしか飲んでないので全然追いつけないんですよ。ましてや食とのマリアージュってことを考えればボトルでオーダーしてワインに比重が置かれることは好ましいやり方じゃないかな、と。僕は基本、料理ごとにグラスを変えるペアリングでないとダメですね。ぶっちゃけボルドーなんて3杯目から舌が麻痺して味が分からなくなる(笑)。おまけで言うと、逆に酒を呑まない方が分かる味もあるんですよ。アルコールと温度は誤魔化しが効きやすいんで。いずれにせよ土地や作り手を追うようなことはしてなくて、基本、ソムリエに聞いてワインは選びますね。信頼できるソムリエを見つけることがいちばん大切」



——レストランの新規開拓も頻繁に行なっているのでしょうか? 

「新規開拓は常にしてますけど、もっと大切にしているのはお気に入りのお店を見つけて上顧客になることですね。これはレストランに限らず洋服やライブハウスにクラブでも同じこと。レストランだったらシェフやソムリエに現場のスタッフも含めて仲良くなって、彼らと新しいお店に行きますね。だから僕の友達関係はほぼ料理関係か音楽関係ばかりなんですよ」

——食事のときに音楽は耳に入ってきますか?

「音楽家なので当然意識はします。ただ音楽以前に料理と酒、空間と装飾などの幾層ものマリアージュがあるわけで、音楽はそのうちのひとつですよね。そしてそれらのマリアージュって絶対予測不可能なものだと思うんで。予備知識で図式的に合わせることが難しくて、同時にそれが面白さでもあるかな、と。ミラノでも東京でもリストランテでヴェルディがかかっていたら合うか?っていうと実際重いというかもたれちゃうと思うんですよ」
 

『晩餐会 裸体の森へ 第二回』スペシャル・コース


——今回の『晩餐会 裸体の森へ』で、特に配慮した点はありますか? 

「日本の高級ジャズクラブはレストラン登記だから厨房さえあればどこでも似たような企画は出来るかもしれないけれど、現実的にここまでアップリフティング出来るのはここ(モーション・ブルー・ヨコハマ)だけでしょう。あらゆる側面においてバランスを配慮しました。お客さんの舌が酒で麻痺する前に乾杯の時間を決めて(笑)、食べ過ぎて眠くならないよう料理も3皿にまとめて、どの料理にも合うワインを選ばせてもらって。あと照明を落とし過ぎちゃうと食事がしづらいでしょうからそんなところにも配慮して、これがやれる形の極限値だと思います。実際に音楽好きが来て、音楽と料理が合うなって実感してもらえれば。ジャズもフランス料理も古いものだけど、これらが有機的に結びついた魅力=エロティシズムを感じてもらえれば幸いです」


  イベントタイトルとなった『裸体の森へ』は伊藤俊治による18世紀から20世紀までのポルノグラフィをエンサイクロペディア的に集めた著作より。菊地成孔が通奏低音として唱えるエロティシズムを立体的に体験するに、最高の舞台がモーション・ブルー・ヨコハマで整えられた。そのマリアージュを堪能できるかは貴方次第。舌が麻痺することなきようワインを嗜み、食事を楽しみ、ペペ・トルメント・アスカラールの音に身を委ねた先に見えるものは一体なにか?それは実際に足を運んでみることでしか知り得ない。そしてなにより官能の夜にはドレスアップをお忘れなく。



菊地成孔本人による晩餐会メニューの解説はこちら
http://www.motionblue.co.jp/special/naruyoshikikuchi2017/



菊地成孔がぺぺ・トルメント・アスカラールとともに提供する
『晩餐会 裸体の森へ 第二回』


モーション・ブルー・ヨコハマ
2017年12月1日(金)~12月2日(土)

ステージ数:
計3ステージ(12/1 ソワレ 1ステージ/12/2 マチネ&ソワレ 各1ステージ)

12/1(金)
 ソワレ開場時間 6:45 pm / 開演時間 8:30 pm
12/2(土)
 マチネ開場時間 1:00 pm / 開演時間 2:45 pm
 ソワレ開場時間 5:45 pm / 開演時間 7:30 pm

※12/2(土)は入替制の公演となります。
※予約受付順に整理番号を発行します。


ミュージックチャージ:
 自由席 ¥18,000(全席スペシャル・コース、ウェルカム・ドリンク、乾杯酒付。税サ込み)
 ※BOX席は2名様利用のみ¥42,000(全席スペシャル・コース、ウェルカム・ドリンク、乾杯酒付。シートチャージ、税サ込み)

『晩餐会 裸体の森へ 第二回』 ご予約はこちらから
https://reserve.motionblue.co.jp/reserve/schedule/show_event_info/1411/#1411