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Interview with The Internet グラミー賞ノミネートで全世界が注視
元“負け組”たちが奏でる極上アーバンソウル
取材・文:大前至
写真:Masanori Naruse、難波里美

The Internet

INTERVIEW
INFORMATION

 ロサンゼルスを拠点とするヒップホップ集団=オッド・フューチャーのDJでもあったシド・ザ・キッドが、アトランタ出身のプロデューサー、マット・マーシャンと共に結成したグループ、ジ・インターネット。ソウル、ヒップホップ、エレクトロなどさまざまなジャンルを取り込みながら、ストリートに根ざした若い感性が全面に出たオルタナティヴなサウンドを確立し、オッド・フューチャーのファン層だけでなく、より幅広い層の支持を獲得することとなる。そして、昨年リリースされた3枚目のアルバム『Ego Death』は、サウンド的にもさらなる進化を遂げ、第58回グラミー賞のベスト・アーバン・コンテンポラリー・アルバム部門にノミネートされるなど(残念ながら受賞は逃したが)、高い評価を得た。
 今回のインタビューは、ジ・インターネットとしては初来日となる恵比寿リキッドルームでの公演当日(1月27日)のバックステージにて行なわれた。彼らの人気を物語るかのようにレコード会社には取材依頼が殺到したようで、我々に割り当てられた取材時間は10分のみ。しかし、控え室に登場したシドとマットの二人は、取材スケジュールの過密さなど微塵も感じさせず、まるでこの空間を純粋に楽しむように、気持ち良いくらいのテンポで饒舌に語ってくれた。


――まず、ジ・インターネットはどのようにして今のメンバーが集まっていったのでしょうか?
シド:私と彼(マット・マーシャン)で2011年にジ・インターネットを始めたの。最初は二人だけで一緒にファースト・アルバム『Purple Naked Ladies』(2012年)を作ったわ。それからライブをブッキングした時に生音でやりたかったから、バンドのメンバーを集めたの。その時に入ったのがドラマーのクリス(・スミス)とベースのパトリック(・ペイジ)。その頃はテイ・ウォーカーという別のキーボード・プレイヤーがいたの。テイは歌手でもあるからその後、ソロに転向して、ジャミール(・ブルーナー)にキーボードを弾いてもらうことにしたの。それから、ジャミールと高校時代の親友だったスティーヴ(・レイシー)がギターで参加して、今のメンバーになったの。
――マットはジ・インターネットの音の部分の要となる人物ですが、シドにとって彼はどういう存在でしょうか?
シド:マットは私にとって世界一の親友みたいなものよ。一緒にいろんな経験をしてきたしね。私がすごく辛かった時期もそばに居てくれた。音楽よりもずっと深い関係だわ。一緒にこのバンドを作ったし、彼が居てくれることでずっと気楽になれる部分がいっぱいあるのよ。
――逆にマットにとってシドはどのような存在ですか?
マット:シドは妹であり姉でもあるという感じだからちょっと変なんだ(笑)。俺にアドバイスを求めてくることがあるかと思えば、俺が彼女の顔色をうかがう時もある。年下なんだけどそう見えないことがあるというか。とにかく奇妙な関係なんだ。けど、お互い自然な形で共感し合っていると思うよ。似たような価値観で育てられているから気楽だしね。それにバンドとしても、強力な女性シンガーがいるのは良いことだと思う。女性の方が聡明だしね。
シド:直感的なのよ!
マット:直感的で、それでいて男性より理性的で。だから女性シンガーがいるのは良いよね。女性のほうが注目されるし(笑)。バンドのメンバーとして彼女に感謝しているのはそういう点だな。
――ジ・インターネットを始める前はどういった音楽を聴いてきましたか?
シド:ネオ・ソウルを聴いて育ったわ。エリカ・バドゥ、ミュージック・ソウルチャイルド…。それから父親がジャマイカ出身だから、レゲエもちょっと聴いていたけど、大半はネオ・ソウルだったわ。あとはヒップホップ。マットと出会ってからはいろいろ聴くようになって、J・デイヴィ(J*Davey)とか昔のエイミー・ワインハウスとか。
マット:変なソウルをいっぱい聴いたよね。
シド:エクスペリメンタルな音楽。サーラー(Sa-Ra Creative Partners)みたいなのね。彼とつるむようになった頃、心が一気に開けたような気がしてクールだったわ。音楽に対してグッとオープンマインドになったの。
――同じくマットはどのような音楽に影響を受けてきましたか?
マット:コモドアーズ、ジャミロクワイ、ア・トライブ・コールド・クエスト、そういうのにたくさん影響を受けたね。クールなコード・チェンジがあったり、変な展開があったりするものが好きだね。俺自身はミュージシャンとしてちゃんと教育を受けてきたわけじゃなくて、単に頭のなかにあるものを音にする方法を知っているだけなんだ。サーラー、エリカ・バドゥ、アウトキャスト…そういうのを聴いて、俺もやってみたいと思ったんだ。

リキッドルームのバックステージでのマット(左)とシド(右)

――今回のアルバム『Ego Death』は前2作と比べて、よりシンプルで強いサウンドになっていると思うんですけれども、そうなった理由は
マット:確かにドラム・パターンはそぎ落とした音になっている。そうしたのは、カジュアルに音楽を聴いている人たちは、リズムがいろいろ切り替わるよりも、ビートが絶えず流れ続けているのを望むからなんだ。より聴きやすいものをね。ドラムスが良いものを提供すれば、聴き手はドラムスについていってくれることがわかったんだ。ドラムのうえにクレイジーな音がのっても大丈夫。よく聴けばその中核にはシンプルなドラム・ビートがあるから。プロダクション面では、俺とスティーヴでビートを作る時に、新しいものを作ろうという心持ちでやっているね。「とりあえずやってみようぜ」みたいな感じで。考えすぎてしまったらそれが音に現れてしまうからね。自然な流れのあるサウンドにしたいんだ。それで、いろんなサウンドを実験してみたら、それがどうやら上手くいって、人々に気に入ってもらえたみたいなんだ。
シド:グラミー賞のノミネートも確実に私たちの自信を上げてくれたわね。自分たちが迎合することせずに、望ましいことをやっているんだってわかるから。
マット:アーティストの怖いところはそこだよね。曲を作るとする。自分では良いものだって思っていても、どこまで良いものかは分からないからね。音楽を作るのが大好きで、「すごいのができた!」と思っても、他人に聴かせたら「うーん…、良いんじゃないの?」なんて言われたりして、自分がやろうとしていることの出鼻を完全にくじかれるんだよね。だから『Ego Death』で自分たちがトライしたものが認められたのは良かったね。
――いま、話に出てきましたが、『Ego Death』がグラミー賞にノミネートされてどんな気分でしょうか?
マット:泣いたよ。2分くらい。本当にワンワン泣いたわけじゃないけどね。
シド:そうね…なんだかすごく超現実的な感じがしたのよね。
マット:俺もいまだに実感がないよ。周りは俺たちより大喜びしてくれているけど、自分ではふとした時に「そうか、俺はグラミー賞にノミネートされているのか」って思いだす感じだよ。
シド:私は誕生日が3か月続いているような気分よ。みんなが「おめでとう!」なんてメッセージを送ってくれるんだもの。それも毎日(笑)。すごく良い気分だったわ。「オーケー、自分たちがやっていることは何かしら望ましいことに違いない」ってことに気付かせてくれるから。自分では予想もしなかったけど。
マット:それにオッド・フューチャーの中では自分たちはアンダードッグ(負け組)だったからね。こんなことになるなんて誰も期待していなかった。音楽界の究極の存在であるグラミー賞に存在を認識されるなんて、「ワオ!」って感じだよ。自分が正しいと信じた道を行って、そのプロセスを信頼すれば良いって思わせてくれた。
シド:自分たちのアイデアを信じることね。
マット:そうすれば、おのずと望ましい形になっていく。それが友人たちへのインスピレーションにもなってくれると良いなと思うよ。彼らの多くは夢を持っているけど、そういう奴らに「俺のことはよく知っているだろう? 一緒に学校に行っていたんだから、俺がこうなったなら、お前も俺みたいになれるはずだ」って示すことができるんだ。
――最後の質問になりますが、これからジ・インターネットとして日本で初となるライブが行なわれますが、今、どういう気持ちでしょうか?
マット:とても楽しみだよ。今まで感じたこともないような、不思議なドキドキ感があるよ。道端でもファンに呼び止められるし、ホテルでもサインを求められるんだ。
シド:クレイジーよ。私がオッド・フューチャーで来日した時もそういう人たちがいてくれたけど、自分たちのグループにそんなことが起こるなんて思いもしなかったもの。ライブはどんな風になるのか何も予想ができないわ。言葉の壁はあるだろうけど、前にもそういう経験はあるから大した問題じゃない。本当にハッピーよ。とても楽しみだわ。
マット:俺たちにはグルーヴがあるからね。グルーヴはユニバーサルだし、音楽もユニバーサルなんだ。俺たちが何のことを歌っているのか言葉ではわからなくても、それを感じ取ってくれると思う。そうやって上手くいくのはクレイジーだなって思うけど、実際それで上手くいくんだ。とにかく感謝しているよ。去年は世界のどこに行ってもこんなことできなかったんだから。日本に来てこんな会場でプレイさせてもらって、人々が観に来てくれるなんてね。




リリース情報:
アーティスト:The Internet
タイトル:Ego Death
レーベル:Odd Future
発売日:2015.8.19

■iTunes
https://itunes.apple.com/jp/album/ego-death-japan-version/id1027253491

■Sony Music Japan
http://www.sonymusic.co.jp/artist/theinternet/

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