Arban

Arban

Interview with 須永辰緒・松浦俊夫・原田潤一 三者が案内する「モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン 2016」徹底ガイド 取材・文:富山英三郎
写真:モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン

須永辰緒・松浦俊夫・原田潤一

INTERVIEW
INFORMATION

 昨年、大きな話題を呼んだ「モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン」が今年もやってくる! そんな期待で胸が高鳴るなか、スイス大使公邸にてフェスの始まりを告げるレセプションパーティがおこなわれた。当日は、野宮真貴さんによる50周年を迎えた本国スイスの模様のレポートや、出演者でもあるDJの須永辰緒さん、松浦俊夫さん、さらに主催者兼プロデューサーの原田潤一さんによるトークセッションがおこなわれた。ここでは、このトークセッションの内容を紹介。これを読めば、今年の見どころがすべてわかる!

原田:ここでは「モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン 2016」の見どころを紹介していきたいと思います。スイスではすでに7月1日(金)から16日(土)の期間でおこなわれまして、しかも今年は記念すべき50周年。私も行ってきましたが、とても盛り上がっていて最高の雰囲気でした。そこで、まずはおふたりがこのフェスについてどんな印象をお持ちかを伺いたいと思います。 
須永:僕のイメージとしてはやはりレコードですね。ジャケットに「Live at Montreux」と書かれた作品はたくさんありますから。ジャパンに関しては昨年から東京で開催され、ラインナップを見たらジャズにとどまっていないので俄然興味を持ちました。
松浦:モントルーは3大ジャズフェスティバルのひとつとして昔から知っていました。一方で、僕はミュージシャンではないですが、U.F.O.(ユナイテッド・フューチャー・オーガニゼイション)時代からDJであっても当たり前のようにそういう場所に出られることを目指してきたんです。まさか本当に出られるとは思っていなかったですけど。
原田:松浦さんがご出演されたのはいつでしたっけ?
松浦:1999年です。マイルス・デイヴィス・ホールというところで出演しました。当時、イギリスのトーキン・ラウドというレーベルに所属していたので「Talkin' Loud Night」の一環としてU.F.O.の2人と、デトロイトのDJ カール・クレイグ。彼はインナーゾーン・オーケストラ名義でライブをして、あとは2ステップで人気だったMJコールが参加したり。キャパが数千人規模の場所なのですが、そこにDJが3人立っているのは不思議な光景だったと思います。でも、スイスの人たちは音楽に対してすごくリベラルでしたね。



原田:では、本題である今年のラインナップについて語っていただきましょう。今年は10月7日(金)、8日(土)、9日(日)の3日間、恵比寿ザ・ガーデンホールでおこなわれます。それと同時に代官山UNITでも「モントルー・ジャズ・ラボ」と題して7日(金)、8日(土)の2日間パーティがおこなわれますが、今回は時間の関係上ガーデンホールについてお聞きできればと思います。まずは初日、ここでは昨年にはなかったエレクトロニックミュージックにフォーカスした1日となっていますが、このラインナップで注目されているアーティストはいますか?
須永:僕は全部かな。デリック・メイとヘンリク・シュワルツが同じ会場にいるっていうだけでもすごい。1500人のキャパじゃ足りないんじゃないかな。僕は初日から遊びに行きたいと思います。
松浦:個人的にはヘンリク・シュワルツ featuring 板橋文夫 & Kuniyukiですね。アルバムは出ていますがライブとしては初披露ですし、ヘンリク・シュワルツのエレクトロニックな部分と、板橋さんとKuniyukiさんのスピリチュアルな部分がどう融合するのか楽しみです。これは「モントルー・ジャズ・フェスティバル」らしさがあって、さらにはジャパンらしい先進性も感じられる。ある意味でこのフェスを象徴するラインナップだと思います。
原田:フランチェスコ・トリスターノ presents ピアノリグ featuring デリック・メイも日本初となります。今年の「ソナー・フェスティバル」で初披露されたばかりで、世界的にも大きな話題ですのでご注目ください。あと、タイムスケジュールをまだ発表していないのでここだけの秘密なのですが、今年のトップバッターはMETAFIVEです! これを僕はやりたかった!! 楽しみにしていてください。
須永:そうきましたか。


ソンゼイラ・ライブ・バンドはブラジル音楽のアベンジャーズ(須永)
原田:はい。そして2日目、一番の注目はソンゼイラ・ライブ・バンドになると思います。ジャイルス・ピーターソンが今年5月に来日した際に「ソンゼイラをライブでやろうよ」と言ってくれて実現しました。また、昨年圧倒的なパフォーマンスを見せてくれたメラニー・デ・ビアシオが今年も来てくれます。さらにピート・ジョセフ、彼が昨年リリースしたアルバム「COLOUR」は本当に素晴らしくて、今年のフェスのティザームービーでも使わせていただいています。そしてDJは須永辰緒さん。
 須永:この日は自分が出ているので客観的には観られないですけど、ソンゼイラ・ライブ・バンドは世界初なんですよね? ブラジル音楽のアベンジャーズみたいな。
原田:あははは、確かにそんな感じですね。
須永:ジャイルス(ピーターソン)はDJはしないんですか?
原田:します。
須永:それも楽しみだなぁ。
松浦:僕は(須永)辰緒さんが何をかけてくれるのかなと。でも、このラインナップは悩みますよね。
須永:逆に何をかけたらいいですか?
松浦:日本代表として辰緒さんらしいアプローチで聴かせて欲しいなと思います。メラニー・デ・ビアシオに関しては、昨年このフェスで来日した後にアルバム「BLACKENED CITIES」を1枚出していて、それが1曲24分。彼女はそれをやってくれるんじゃないかと思っています。また、ピート・ジョセフもどうライブで聴かせてくれるのか楽しみです。
原田:メラニーが歌う24分の曲は、松浦さんのラジオ番組「TOKYO MOON」でノーカットでオンエアされましたよね。
松浦:はい。1時間番組でその半分を費やした挑戦的な試みでしたけど、すごくいい楽曲だったのでかけるしかないなと。でも、ライブはもっとかっこよくしてくれるんじゃないかなと思います、バンドメンバーもすごくいいですから。
原田:僕はソンゼイラにかなり期待しているところがあって。世界初ライブで、もしかするとこれが最後になってしまうかもしれない。
松浦:その可能性はあるかもしれないですね。
原田:ちなみにこの日は、恵比寿ザ・ガーデンプレイスと同じ敷地内にある恵比寿ガーデンシネマにて、ソンゼイラのドキュメンタリー映画「ブラジル・バン・バン・バン」をお昼くらいから上映します。また、これも同じ敷地内ですが「恵比寿文化祭2016」という別のフェスティバルが開かれていて、そこでは「サンバ100年の歩み 100 Years of SAMBA」というイベントをマイラ・フレイタスなどとおこないます。さらに、南仏最大級の音楽祭「Gilles Peterson’s Worldwide Festival 2016」でスタンディング・オベーションを浴びた、井上純、Kan Sano、熊谷和徳のステージもありますので、お昼過ぎから恵比寿ガーデンプレイスに来ていただければ、音楽好きはずっと楽しめる趣向になっています。その意味でも2日目が一番濃いかもしれないですね。


カエターノ・ヴェローゾのソロ、ひとり上を向きながら泣くと思います(松浦)
原田:では、3日目のラインナップを見ていきたいと思います。皆さんご存知だと思いますが、八代亜紀さんは素晴らしいジャズシンガーでもありまして。そこで今回は「夜のアルバム」という素敵なアルバムを再現していただきたくお呼びしました。レコーディングでは小西康陽さんとやられていますが、今回はクリヤ・マコトさんとライブ仕様のバンドで登場します。そして、大きな話題となっているのが、11年ぶりの来日となるカエターノ・ヴェローゾ、しかもソロ弾き語りでのライブパフォーマンスです。ルル・ゲンズブール featuring アラ・スタルクにおいては、彼が素晴らしい作曲家であることを十分に承知したうえで、あえて父・セルジュの曲を歌って欲しいとリクエストしました。ちなみに、フィーチャリングのアラ・スタルクは、デザイナーであるフィリップ・スタルクの娘さんです。また、テレーザ・クリスチーナは、カエターノ・ヴェローゾが是非一緒に連れて行きたいと言ってくれたブラジルのシンガー。そして昨年に引き続き、松浦俊夫さんにDJをしていただきます。
須永:ブルーノートで八代亜紀さんのライブを観ていますけど、小西さんの編曲はすごく独特なので、あれがどう変化するのか楽しみですね。そして、カエターノ・ヴェローゾの弾き語りがあのフロアで聴けるっていう。それがレア過ぎて、もうどうしようかなって感じです。今年はブラジルイヤーでしたけど、その総決算と言えるんじゃないでしょうか。普段フェスには自分の出番しか行かないんですけど、これは本当に3日間参加しないとまずいなって思いますね。
松浦:映画「トーク・トゥ・ハー」のなかで、カエターノ・ヴェローゾが演奏しているときに皆が涙するシーンがありますよね。そこで流れる「ククルクク・パロマ」は、思わず泣いてしまいそうなほどパッションがある曲。それをこちらがお願いする前に、ヨーロッパツアーで演奏していることを原田さんから伺って。しかもあのシーンのようにスタンディングで聴けるわけで、たぶんそのときはひとり上を向いて涙してしまいそうです。
原田:僕も泣くと思います。松浦さんとふたりで無言で上を向いて泣いてるかもしれない(笑)。
松浦:あと、八代亜紀さんはもちろん、ルル・ゲンズブールもファーストアルバムではお父さんの楽曲をいろんなアレンジで聴かせてくれたし。我々の知らないテレーザ・クリスチーナも楽しみですね。アーティストの認知度に関わらず、素晴らしい3日間が続くと思うと心してかからないといけない。事前にちゃんと走り込んどいたほうがいいかなと思っていますから(笑)。これは絶対に3日間来るべきフェスティバルだと断言できます。
須永:でも、原田さんは感覚がDJだよね。僕らが観たかったものを凝縮していて、このラインナップは完全にDJ目線ですよ。
松浦:主催者であってプロデューサーでありながら、我々を代弁しているようなところが他のフェスティバルと大きく違いますよね。海外フェスのようなマインドなんだけど、海外でこのラインナップは考えられない。だからジャパンも面白そうだなって。こんな素晴らしいフェスティバルに我々は出演させてもらって。
須永:本当に光栄です。
原田:「モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン」としてはダンスミュージックも大事なパートで、ここでは紹介できませんでしたが代官山UNITにも国内外の素晴らしいDJたちが参加されます。よく「このフェスはジャズじゃない」と言われますが、私の考えるジャズとは「大人が楽しめる洗練された音楽」なんです。どの日にち、どの場所でも、足をお運びいただければ必ず楽しめると思いますので、どうぞよろしくお願いします。今日はありがとうございました。



この日行われたレセプションパーティーのレポート記事『スイス大使公邸のパーティーに潜入前代未聞のDJシステムに業界騒然⁉』もこちらからご覧いただけます。また、本トークセッションとは別に須永さん、松浦さんにオススメのモントルーのライブ盤を紹介してもらいました。
 
  
須永辰緒
1991
Miles Davis & Quincy Jones
『MILES & QUINCY Live at Montreux』
エレクトリック期以降のマイルスしかリアルタイムで知らない世代に唯一残したモダンジャズ音源ということで選びました。クインシー(ジョーンズ)と旧知の仲間たちと、モントルー25周年記念行事のステージに降り立ったドキュメンタリー番組のようなイメージもあります。

 
松浦俊夫
1973
Gary Bartz NTU Troop
『I've Known Rivers And Other Bodies』 
これほどDJでプレイしたライブ盤はないだろうと言っても良いほどいつもレコード・バッグの中に入っている名盤。この演奏を生で観ることが出来た観衆をいつも羨ましく思う。

LATEST
ARTICLE