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Interview with Tommy Guerrero ストリートの英雄が歩み続ける「終わりなき道」 Interview & Text/楠元伸哉
Photo/石井 健

Tommy Guerrero

INTERVIEW
INFORMATION

 はじまりは「路上」だった。10代半ばにして、当時(80年代初頭)最強のスケートボード・チーム「ボーンズ・ブリゲード」に所属。そんなスーパースター集団の中で、特にストリートでのクルージングを重視し、前人未踏のスケート・スタイルを確立した“伝説のスケーター”がトミー・ゲレロである。
 90年代に入ると、彼はミュージシャンとしても頭角をあらわす。さらに、ファッションやグラフティアートなども同調させ、いつしか、西海岸のストリート複合カルチャーを象徴する存在に。
 そんな彼が通算9枚目となるソロアルバムを発表した。アルバムタイトルは『ザ・エンドレス・ロード』。ストリート・カルチャーの権化は、いまでも「路上」から世界を見ている。


ーー初めてお会いしたのは、ファーストアルバムのときだから、もう10年以上も前です。
「そうか、ずいぶん経ったね。互いに歳をとるわけだ」
ーー今回のアルバムも、非常に面白く聴かせてもらいました。ラテンやカリビアン、アフリカンのフィーリングまで入っていて。三拍子とか六拍子も採用していましたね。
「この数年はそういうビート感に興味があって、今回のアルバム楽曲にも採用したんだ。これまでの典型的なウェスタンの“4の4”ビートに飽きてきている、というのもあるね」
ーー他に何か新しい試みはある?
「演奏は、ほぼ全部自分でやったよ。ドラムもギターもベースも。パーカッションも自分で叩いて、それをループして。サンプルとかは使わずに、すべて自分の音で作ったんだ」
ーー他人に任せたくなかった、ってこと?
「うーん、それはイエスでもありノーでもあるな。まず、大人数で同じ絵を描こうとするのは非常に困難なことだよね。俺の求めているビジョンを完璧に作りたいと思ったら、他の人と一緒にやるのはなかなか難しい。ただ、その一方で、俺は自分のバンドを持っているわけじゃないから“何かを表現したい”と思ったら結局、自分ひとりでやるしかない。これもまた現実だ」
ーー作曲や録音のプロセスはいつも通りに?
「そうだね。事前に曲を書いて演奏したり、デモを作ったりもしない。スタジオに行って、頭の中のビジョンを自分で弾いて、録音する。それだけだ」
ーーアルバムのタイトル『ザ・エンドレス・ロード』にはどんな意図が?
「人生においても、音楽においても、アートにおいても、見るべきものや学ぶべきものは常にたくさんある。可能性というのは無限にあるのだから、いろんなやり方で、いろんなことを探求すべきだ。そんな意味を込めた」


ーーなるほど。てっきり「スケートボードでどこまでも進む」みたいなニュアンスかと思ってましたが「終わらない探求の道」ってことなんですね。しかし、あなたほどの人でも、まだ探求したいことがあるんですね。
「もちろんだ」
ーー15歳の頃の自分と比べても、好奇心や探求心は変わらない?
「むしろ大きくなってるよ。10代の頃は周りの物しか見えてなかったからね。現在の方が好奇心や興味の幅が広がるのは当然だ。っていうかさ、10代の俺は本当にヒドかったからね。何も知らない、バカ丸出しのガキだった(笑)」
ーー私もそうでした(笑)。ところで「柔道」って知ってる?
「ジュードー? ああ、知ってるよ。日本の伝統的なマーシャルアーツだろ」
ーージュードーの「ドー」は「道」って字を書くんだけど、これ「ロード」って意味なんです。もちろん、単なる道路のことじゃなくて、今あなたが言ったスピリチュアルな意味の「エンドレス・ロード」を意味しています。
「そうなの?」
ーーそう。終わりのない“修練と探求の道”という意味です。ほかにも、剣道とか茶道とか華道とか、いろんな「道(どう)」があって、それらはすべて同じ意味。だから多くの日本人は、あなたが言う「エンドレス・ロード」の感覚を、深いところで理解できるんじゃないかな。
「へぇ! なんか、すげー」
ーーでもね、ちょっとダメな側面もあって、日本人は何でも「道(どう)」にしがちなんです。遊びやゲームにまで「道」の精神を持ち込んで、精神修養とか道徳とか根性までもセットにしちゃう。野球なんかはその最たる例で、高校球児が丸刈りでプレーする(競技上の)合理的な理由なんかないのに、みんな丸坊主。つまり彼らがやってるのはベースボールではなく「野球道」なんだよね。もちろん、いい面もあるけど、もっと自由に気楽に不真面目にエンジョイしてもいいのになぁ、って思います。
「ふーん」
ーーだよね。よくわかんないよね(笑)。あ、ところで先日の渋谷でのライブ見ましたよ。すごい楽しかったです。
「そうか……そりゃよかった」
ーーあれ? 急にテンション下がりましたね。何かマズいこと言っちゃった?
「うーん、じつは、あの東京公演は他の(ツアーの)会場に比べて観客が静かだったんだよね。特に曲間とか、ものすごくおとなしくてさ。みんな楽しんでくれてたのかな?って、いまだにモヤモヤしてる」
ーーそれ! それがまさにいま説明した、日本人の“道(どう)マインド”なんですよ。つまりね、あの日のお客さんの多くが、あなたを神様みたいに崇拝してたんです。「スケボー道」とか「音楽道」とか「おしゃれ道」の求道者としてね。だからあなたの一挙手一投足を“ありがたいもの”として静かに見守ってしまった。本当はもっと気楽に“イエーィ!”って楽しんでもいいんだけど、どうしても“お勉強スタンス”で見ちゃうんです。まあ、要するに、あなたは偉大だってことです。
「そうか。ごめん。結局は俺のせいなんだな……」
ーーでも、みんな心の中は超エンジョイしてたと思いますよ。
「だといいけどなぁ。バンドで出演してれば、その責任をみんなで背負うんだけど、ソロのステージだったからね。ひとりで背負っちゃってさ……。俺ちょっと落ち込んだよ(笑)」
ーーいや、あのライブは大成功。観客が本当に大切そうにあなたを見守る感じが、マジで素晴らしかった。
「そうか? ……ちょっと元気になってきたぞ」
ーーははは。さっき「好奇心と探求心は10代の頃を上回っている」って言いましたけど、いま最大の関心事は何?
「ビジュアルアートかな」
ーーそれは昔から興味があったはずでは?
「うん、これまでも自分でビジュアルアートの作品を手がけてきたけど、この何年かは忙しくて全くやれてなかったんだ。これからしばらくはビジュアルアートの世界を探求したい。より物理的な芸術を作り上げたいんだ」
ーーなるほど。音楽もスケーティングも「物体」ではないですからね。ところで、あなたと会うたびに毎回驚くんだけど、どんどん若返っているように見えます。容姿も感性も言動も。40代でそのフレッシュさをキープする秘訣は何?
「ははは! 秘訣を教えよう。緑茶とスケートとPMA(Positive Mental Attitude=ポジティブ思考)だ。それからもうひとつ。子供の心を忘れないことだよ」
ーー子供の頃は“バカ丸出し”だったくせに?
「それとこれとは別の話だ(笑)」




リリース情報
アーティスト:Tommy Guerrero
タイトル:The Endless Road
発売日:12月7日
価格:2,500円(税込)
レーベル:RUSH! X AWDR/LR2

■Amazon
https://www.amazon.co.jp/Endless-Road-Tommy-Guerrero/dp/B01M1KSMEK/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1484308405&sr=8-1&keywords=tommy+guerrero

 
■iTunes
https://itunes.apple.com/jp/album/the-endless-road/id1176121011

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