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Interview with 小川 隆夫 “衝撃的著作を連発”の
ジャズ・ジャーナリストに訊く
前編
取材:ARBAN
撮影:天田 輔

小川 隆夫

INTERVIEW
INFORMATION


 書店でジャズ関連のコーナーを眺めていると、必ず目に飛び込んでくる「小川隆夫」という著者名。さまざまな媒体への寄稿はもちろん、これまでに50以上の音楽関連書籍を上梓している著述家だが、整形外科医としての顔も持ち、音楽プロデューサー兼プレイヤーとしても活動。本人は「ジャズ・ジャーナリスト」を自称するが、ロックやブルース、ソウルミュージックへの造詣も深い。ちなみに、これらのジャンルを融合したジャズマンの代表がマイルス・デイヴィスだが、そんなマイルスから慕われたジャーナリストであるという事実も容易に頷ける。



──私が小川さんの存在を初めて知ったのは『ジャズ批評』の別冊『全ブルーノート・ブック』でした。たしか80年代半ばの刊行だったと思います。

「ああ、あれは1986年ですね」

──あの本はブルーノートの作品を番号順にカタログっぽく紹介した本ですけど、小川さんや行方均さんによる座談会みたいな記事も載っていて。

「そうだったね。そもそも僕がこの業界に入ったのは、行方さんが見つけてくれたっていうか、彼がいろんなきっかけを作ってくれたことに始まっているんですよ」

──これは多くのジャズファンが知るところですが、当時、行方さんは東芝EMIの洋楽部にいて、ブルーノートの諸作品を担当していました。

「そう、かつてブルーノートの日本盤はキングレコードが出していたんだけど、1983年に東芝に権利が移って、その時の担当ディレクターが彼だった。で、まずは、出す作品のジャケット写真を撮らなきゃいけない、ということで、渋谷のJAROってレコード店に相談したらしいんだ。すると店主が『だったら小川さんって人が持ってるよ。ただしニューヨークに住んでるけどね』と。そんなわけで、当時ニューヨークに住んでいた僕を訪ねてきた。ちなみに、当時『スイングジャーナル』の編集者で、のちに編集長になる中山(康樹)さんも一緒に来た」

──当時はニューヨークの大学病院に勤務していたわけですよね。

「そう。でもレコードは日本にあるから、貸す約束だけして。それで日本に帰ってきて、行方さんと中山さんと僕の3人でメシ食いながら話してた時に、ジャケットの提供だけじゃなくて、ライナーノーツも書いてみては? って提案があったんです」

──そんなに詳しいなら解説も書いてくれ、と。

「僕は文章なんか書けないって言ったんだけど『何でもいいから書けそうなやつ選んで、好きこと書けばいいから』って言われて。そしたら中山さんからも『ニューヨークにいると、いろんな面白い話あるでしょ? それ書いてください』って言われて、スイングジャーナルにも書くことになった。“もの書き”としては、そこがスタートですね」

──それまで、ジャズに対しては“いちファン”として接していたけれど、報じたり論じたりする側になったわけですよね。

「意識としては、いまだに“ファン”ですよ。自分じゃ絶対に“評論家”とは名乗らない。ジャズ・ジャーナリストとか言ってるけど、ただのジャズファン。そもそも僕は評論とか、そういうものは書けないと思ったのね。だけど、例えば“ミュージシャンの言葉”は伝えられる。あと、当時はしょっちゅうニューヨークに行ってたから、いま何が起こってるかとか最先端のこととかを自分で伝えられると思ったわけ」

──そのスタンスって、レポーターに近いですよね。

「そうです。ある事象を客観的に見て『いま、こんなことが起こっていますよ』とレポートする。そこに僕の意見は入れない。でもまあ、ジャズ・レポーターよりはジャズ・ジャーナリストの方が聞こえがいいかなと思って」

 

徹底した調査と確認作業
著作にも顕れる“ドクター気質”



──小川さんの著作はいろいろなテイストのものがありますが、ほぼすべてにおいて、そのスタンスは共通していると思います。徹底した取材と調査を基にした「データ主義」ですよね。

「うん、それはあるかもしれない」

──ひとつの事象に対して、まず徹底的に材料や証拠を集める。もちろん反論や反証も集める。マスコミ的には「ファクト(事実)」という言葉を使いますが、医学的には「エビデンス(根拠)」といったところでしょうか?

「そうだね。医者だから、っていうのはやっぱりあると思う。最近は書いてないけど、学会で論文を発表とかするんですよ。そうすると過去の論文を全部精査して、それを盛り込んだ上に新しい論説を自分なりに述べないと意味がない。例えば、ある病気に対して、自分としてはこういう発見をしました、と。でも、過去にはこういう発見とこういう発見とあって……って、いろいろぶつけるの。一方通行じゃないんです。いくつもの意見をミックスした上で自分の論を述べないと、医学論文って成立しない」

──そういった「ドクターとしての気質」みたいなものが著作にも顕れている?

「そう思います。あとね、僕は整形外科だから手術をすることが多いんですよ。そうすると責任はすべて僕にかかってくる。手術は一人ではできないから助手が二人いて、僕がメインで手術して看護師がいてチームでやるんだけど、何かあったら僕が全部の責任を負わなきゃいけない。で、責任を負うからには、それぞれに確認しなきゃいけない。麻酔かかりました、はいどうぞ、って。綿密な確認の上に成り立っているわけです。確認しておかないと心配で仕方ない。そういう癖というか性分が、こっち(音楽)の仕事にも出るんだろうね」


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