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Interview with 小川 隆夫 “衝撃的著作を連発”の
ジャズ・ジャーナリストに訊く
後編
取材:ARBAN
撮影:天田 輔

小川 隆夫

INTERVIEW
INFORMATION


“ジャズ・ジャーナリスト”小川隆夫の著作、そして人物に迫るインタビュー第二弾。ロックに傾倒した青年時代、そして著述家としてのスタンスを語った前編に引き続き、後編ではいよいよマイルス・デイヴィスとの関係。さらに、意外な親族の話も……。


——小川さんが最初に衝撃を受けた「ジャズ的なもの」って何でしたか?

「あれは中学二年の時でしたね。その頃、兄貴たちは高校生と大学生で、彼らの間でアイビールックが流行りだしたの。で、二人がそれっぽいシャツとかジャケットとか着てるわけ」

——VANとか。

「そうそう。中学生のぼくとしては憧れるわけですよ。で、その夏、マドラスチェックのシャツを着たくてね、親にねだって銀座のテイジン・メンズショップに行ったんだ。1800円をもらってね。で、シャツを買おうと店に入ったんだけど、店内で何とも言えない魅惑的な音楽が流れてるの。アコースティック・ギターなんだけど、これまで聴いたこともない旋律でね。僕はクラシックギターをやってたから、すごいシンパシーを感じて、思わず店の人に聞いたんだ。この音楽はなんですか? って。すると、レジの横に『ゲッツ/ジルベルト』のジャケが置かれていてね」

——これだよ、と。

「すぐに店員に訊きましたよ。これはどこで売ってるんですか? って。すると『すぐそこのヤマハで買ってきたんだよ。まだあると思うよ』って言うから、すぐに銀座のヤマハに行って、シャツを買うはずのお金でレコードを買って、家で一生懸命コピーしたわけ。ボサノバなんか全然わかんないし、ジャズのコードもわかんないけど。クラシックギターの先生のところへ行って、このレコードの、こういうギターをやりたい! って言ったら『これはクラシックじゃないからダメ』って。せめて押さえ方だけでも教えて欲しい、って頼んだら、先生が弾きながら譜面を書いてくれたんだよ」

——なるほど。コードではなく音符なんですね。

「そう。クラシックギターって、譜面はあってもコードの概念がないからね。例えばドミソって言われればわかるけど、Cって言われてもわからない。そこから始まったわけです」


突き刺さるように強烈な音……
のちに邂逅する“米粒サイズの偉人”



——つまり、『ゲッツ/ジルベルト』の“スタン・ゲッツ要素”ではなく、ジルベルト要素、つまりボサノバに惹かれたわけですね。

「そうだね、そのすぐ後に別の作品で“ジャズマンとしてのスタン・ゲッツの魅力”を知るんだけど、あの時はボサノバ・ギターに惹かれたんだよね。ちなみに、同じ時期(1965年)にベンチャーズのコピーバンドみたいなことも始めて、さらにその年にマイルス(・デイヴィス)のステージを観るんですよ」

——初来日公演ですか?

「そう、場所は新宿厚生年金会館。じつは、兄貴が行けなくなってチケットもらって行ったんだけど、そのときの僕はマイルスの名前も聞いたことあるかないかくらいの認識だったし、もちろん曲も知らないし、ジャズって音楽のことも知らないし。でもまあ、聴きに行って」

——どうでした?

「何も感銘を受けなかった。というのも、席が後ろの方でね。米粒くらいにしか見えなかったんだ。ただ、突き刺さるような強烈な音がするなぁ、とは思った」

——中学生のときに見た米粒大のマイルスが、いつしか等身大で目の前に現れるなんて、想像もしなかったですよね。

「そうだね(笑)。ちなみにその時はジャズのこと知らなかったけどね、66年くらいにはジャズ喫茶によく行くようになったし自分でもレコード買ったりギター弾いたり、結構のめりこんできて。そんな時期に、NHKのジャズ番組で『マイルス・スマイルズ』が流れたのね」

——66年だから「新譜」として番組で紹介されたわけですね。

「そう、新譜紹介のコーナーだった。それをすごくカッコイイと感じてね。そのとき初めてマイルスを意識した。以降はマイルスが最優先の人になって、アルバムが出たら必ず発売日に買いに行ってました。それまでは僕の中でビートルズが一番だったけど、優先順位はマイルスが上になった」


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