Arban

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Interview with サンダーキャット 超人の知られざる過去と
ベースギターへの想い
後編
取材・文/林 剛
撮影/天田 輔

サンダーキャット

INTERVIEW
INFORMATION

 日本国内4都市でのライブを終えた直後に行われた、サンダーキャットのインタビュー。疲労困憊のなか、エナジードリンクと眠気覚ましドリンクのカクテルを飲みまくり、さすがDrunk(最新アルバム)の作者らしい回復法で、徐々に言葉数も増えてきた。
 インタビュー前編では、父親のバンド仲間であるジェラルド・ブラウンにベーシストとしての基礎を学んだことを明かしたが、ベーシストとしてのサンダーキャットは、低音部を支えるだけでなくメロディそのものを弾いてギタリストばりに幅広い表現力を見せる“ジャコ・パストリアスやスタンリー・クラークとも比較される超絶技巧”を備えたプレーヤーだ。そのプレイの“凄み”は今回のライブでも際立っていた。

──今回のライブではPファンクっぽいベースも飛び出しましたが、ジョージ・クリントンはあなたのことを「ブーツィ・コリンズの21世紀ヴァージョン」と評したとも聞いています。

「美しくて素晴らしい褒め言葉だね(笑)。そこにはネガティブな意味合いもないはずだし、素直に嬉しいよ」

──あなたとフライング・ロータス、シャバズ・パラセズはWOKEというプロジェクトを立ち上げて、ジョージ・クリントンを招いた“The Lavishments Of Light Looking”という曲を発表していました。一方、ブレインフィーダーから出ると噂されているクリントンの新作はどうなっていますか?

「そうだなぁ……やっぱり自分はリアリティ重視というか、アイディアはたくさんあるけど、それが実現するかどうかまだ分からないから、あまり口にできないんだ。いろいろな可能性やミステリアスな部分を残すことが自分は好きだし、音楽は常に作られていて、いまも動いているしね」



──では、出るまで楽しみにしています。ベースプレイの話に戻しますが、今回の来日公演でも、あなたは6弦ベースを使って広い音域をカバーしていて、ベーシストであってベーシストではない多彩な表現者という印象を改めて受けました。

「6弦のベースを使うと可能性が広がるんだよね。ベースというと普通は4弦で、それがベーシストだと思われがちだけど、本当のベーシストは(何弦だろうと)“単にベースを弾く人”だと思っている。ざっくりとした言い方だけど、自分にとってはニーズを満たしてくれるのが6弦のベースということなんだ」

──ライブでは激しいインタープレイも印象的で、ドラムのジャスティン・ブラウンの手数の多さや、鍵盤のデニス・ハムの機敏さにも目を奪われましたが、即興性が高いのに均整がとれているのがさすがだなと。

「大事なのはメンバー同士のコミュニケーションだと思う。ライブをやってるときも互いに意思疎通を図って、誰かがソロをやっているときや即興をやっているときも相手の動きを見ながらお互いを理解し合ってプレイしていく。自分たちの場合は、ひとつの目的意識を持っていて同じところを目指しているので、そういった意思疎通は凄くとれていると思うね」

──ライブにしてもレコーディング音源にしても、あなたの音楽はジョージ・デューク的なプログレッシブ感覚やトリップ感がある。特に70年代前半〜中期のMPS時代のデュークを強烈に連想させます。

「ジョージ・デュークは父と共有した初めての音楽だったんだ。初めて聴いたレコードはスタンリー・クラークの『Journey To Love』(75年)だったけど、父は音楽に興味を持たせようと自分にいろんな音楽を聴かせてくれた。なかでもジョージ・デュークの『Faces In Reflection』(74年)を聴いたときに、もの凄く衝撃を受けたんだ」


──他にお気に入りの“ジョージ・デューク作品”を挙げるなら何?

「彼の関わるものはすべてが素晴らしいよ。フランク・ザッパのマザーズ・オブ・インヴェンションで演奏していたときの音楽も強烈だった。その一方で彼の歌声はとてもライトだよね。だけど凄く心がこもっていて、偽りがなく、感じたままを歌っているんだなぁというのが伝わってくる。何度も彼の音楽を聴いているけど、彼に代わる人は誰もいないというか、どんなポップ・ミュージックが出てこようと、どんなラッパーが出てこようと誰もジョージ・デュークにはなれないというか、それくらい僕の中では偉大なんだ」

──あなたの甘いハイトーン・ヴォイスは、マイケル・マクドナルドの歌い方を真似ていたとも聞いていましたが、それ以上にジョージ・デュークっぽいですよね。

「んー!(親指でグッドサインをしてニンマリ)」

 今夏の〈フジロックフェスティバル '17〉への出演も決まったサンダーキャット。つい先日には、10月まで続く“北米ツアー”と、世界各国のフェス出演プランも発表された。その数、約50本。サンダーキャットの快進撃と睡眠不足はまだまだ続きそうだ。



取材協力:BEATINK http://www.beatink.com/Labels/Brainfeeder/Thundercat/