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Interview with ニルス・ラン・ドーキー&デビー・スレッジ 「デビーとレコーディングするなんて…
人生ってアメイジングだなと思うよ」
取材・文/林 剛
撮影/Makoto Ebi

ニルス・ラン・ドーキー&デビー・スレッジ

INTERVIEW
INFORMATION

 デンマークを代表するジャズ・ピアニスト、ニルス・ラン・ドーキーの最新作『Improvisation on Life』。ベーシストのトビアス・ダル、ドラマーのニコラス・バルデレベンとのピアノ・トリオで吹き込んだアルバムだ。今作では、ニルスのオリジナルに加えて、マイケル・ジャクソンの「Man In The Mirror」や、ラベルの代表曲「Lady Marmalade」、ノラ・ジョーンズで知られる「Don’t Know Why」、ビージーズの「How Deep Is Your Love」などのカバーも収録。

   6月末、そのメンバーとブルーノート東京でライブを行なったニルスが、アルバムでプリンスの「Kiss」を歌い来日公演にも同行したデビー・スレッジ(シスター・スレッジ)とともにインタビューに応えてくれた。


──おふたりがライブやアルバムで共演することになったきっかけを教えてください。

ニルス 2015年1月にコペンハーゲンのフェスにピアノ・トリオで出ていたら、客席にデビーがいたんだ。その時のベーシストがシスター・スレッジのアルバムを全部持っていて姉妹の見分けがつくほどの大ファンで、ステージで突然震え出してね(笑)。

──客席にデビー・スレッジがいる! しかも俺たちを見てる……と。

ニルス そう(笑)。それで休憩時間にデビーに声をかけたんだ。で、その週の終わりくらいにあったライブに出てもらったんだけど、最初の3曲くらいを一緒に演奏する予定が、乗りに乗って6曲くらいになって……スペシャルなケミストリーがあるね、ってことで共演に至ったんだ。

──ニルスさんが音楽活動を始めた頃、シスター・スレッジは世界的に人気がありましたよね。

ニルス 79年に彼女たちの『We Are Family』が出た時、僕は16歳だった。70年代、デンマークにもアメリカの音楽が盛んに入ってきて、放課後には毎日みんなでレコードを聴いていた。スティーヴィー・ワンダー、ウェザー・リポート、ハービー・ハンコック……。シスター・スレッジの曲も何回聴いても飽きない。タイムレスだよね。そのメンバーのデビーと一緒のステージに立つだけでなくレコーディングまでするなんて、人生ってアメイジングだなと思うよ。

──ライブでは「We Are Family」も取り上げていますが、デビーさんは、あの典型的なシック・サウンドの曲をピアノ・トリオのバックで歌うことになったとき、どう思いましたか?

デビー 原曲自体には強いグルーヴとメロディがあって、聴いたらすぐにハッピーになれる曲なので、どんな風にカバーをしても成立すると思った。ニルスは美しいアレンジを加えてくれて、すぐに気に入ったわ。

ニルス こういう風にアレンジしてもいいか? と、シスター・スレッジのメンバーにデモを送ったんだ。そうしたら快い返事をもらえてガッツポーズだったね。

──デビーさんはニルスと組む前にピアノ・トリオをバックに歌った経験はあったのでしょうか?

デビー ニューヨークのコットンクラブでビッグ・バンドみたいな感じのバックで歌ったことはあるけど、こういうピアノ・トリオは初めてだった。ニルスのバンドと一緒に歌うと、新しい綺麗な水の中に足を踏み入れたようでありながら、慣れた水であるかのような気分にも感じるの。ニルスのトリオは多様性があるわよね。

ニルス 今回の来日メンバーはレコーディング・メンバーでもあって、ベースのトビアスもドラムのニコラスもすごく若いんだけど、ソリッドなジャズの知識と技術があるうえに、ラテンやR&B/ソウル・ミュージックの技術も持っているんだ。そういう多様性のある人を使っていかないと今の音楽シーンにはそぐわないし、引き出しを広くしてオープンな姿勢で作っていかないといい作品が作れないと思うんだ。

──新作でカバーした曲はどういう基準で選んだのですか?

ニルス 自分の大好きな曲だよ。プリンスの「Kiss」は発売当時から好きだし、マイケル・ジャクソンの曲もビージーズの曲も同じ理由さ。誰かが作った曲をカバーするときは、その曲をフィールしていないと自分では弾けないし、同時に楽しくなければいけないと思っているからね。

──ライブではファレル・ウィリアムスの「Happy」も演っていますよね。

ニルス そう、あの曲も好きなんだ。自分はコペンハーゲンにジャズ・クラブを持っているんだけど、そこで毎晩演奏してデビーとも1か月毎晩コラボをしていると、進展がありながらもマンネリ化していくから、新しいことにチャレンジしないと身が持たない。それもあって「Happy」を演ったんだ。



──今回の来日公演ではデビーを主役にした〈ソウル・ナイト〉の方でジェイムス・ブラウン(JB)の「I Got You(I Feel Good)」や「It's A Man's Man's Man's World」などをカバーしていましたが、JBの声真似をしたり、かなり思い入れがあるように見えました。

デビー アーティストとして本当にJBのことが大好きなの。シスター・スレッジのメンバーはみんなJBが好きで、特に妹のキムはJBのことを真似するほど好きだった。JBの音楽は子供たちも踊り出すくらい生き生きしているわ。

──もう40年以上も前の話ですが、“キンサシャの奇跡(※1)”と呼ばれたモハメド・アリとジョージ・フォアマン戦。あのタイトルマッチを前にしたコンサート「ザイール’74」で、JBやスピナーズと同じステージに立っていますね。ちなみに、あの時はまだファースト・アルバムが出る前だったと思うのですが。

デビー ええ。当時のマネージャーがスピナーズと同じだった関係で出演したの。その時はまだ若かったから不思議の国に迷い込んだような感じでエキサイティングだったわ。最初のアルバム(75年作『Circle Of Life』)のジャケット写真はその時に撮ったものなのよ。

──あのコンサートの様子は、映画『ソウル・パワー』にまとめられていますが、グラディス・ナイト&ザ・ピップスの「On&On」を歌ったんですよね?

デビー そう。もちろんグラディスが好きだったんだけど、当時(彼らのような)男性グループのハーモニーが好きで、よくカバーしていたの。あの曲は別格ね。

──最後に、今回デビーとともにアルバムやライブに参加したアマンダ・トムセンについてはどう感じていますか?

ニルス アマンダは典型的なスカンジナビア女性のハイトーン・ボイスなんだけど、彼女はアメリカのR&Bやソウルが好きで、聖歌隊出身でゴスペルも歌うから、それとスカンジナビアっぽさが融合した感じがいいんだ。まだ19歳なんだよね、彼女は。



※1:1974年10月にザイール共和国(現在のコンゴ民主共和国)で開催されたプロボクシングWBA/WBC世界統一ヘビー級タイトルマッチの通称。この対戦に合わせて、現地で『ザイール74』と題されたコンサートが開催された。


アルバム『Improvisation on Life』
http://www.rambling.ne.jp/catalog/improvisation-on-life/

 

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