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Interview with 上原ひろみ またも驚きの新作発表…
モントリオールのステージで何が起きたのか?
取材・文/内本順一
写真/Giovanni Capriotti

上原ひろみ

INTERVIEW
INFORMATION



——そもそも、どうしてエドマール・カスタネーダはハープでジャズ・ミュージシャンを志すようになったんですかね?

「1994年にニューヨークに移住してジャズに出会ったそうです。1978年生まれなので、彼が16歳のときかな。デューク・エリントンやチャーリー・パーカーを聴いてジャズにとりつかれたって言ってました」

——出身は南米ですよね

「コロンビアのボゴタという街です。ハープがストリートミュージシャンの楽器のように扱われているところらしくて。それを見て“僕の楽器だ”と思って弾き始めたと言ってました。もともとコロンビアとベネズエラではハープが生活に根付いた楽器としてあって。踊るためにハープがあるといった感じで、みんなが馴染んでいるらしいんです。恐らく沖縄の三線みたいなことじゃないかと思うんですけど」

——ああ、なるほど。自分は今までハープというとクラシック音楽で使われる楽器というイメージを持っていたから、それが踊るためにあるというのは目から鱗です。

「私も知らなかったので、その話を聞いて初めて、どうして彼がああいう演奏スタイルなのかがわかりました。クラシックでよく使われているペダル・ハープのほうが、私たちには馴染みがあるじゃないですか」

——ちなみに、これまで自分がハープ奏者とガチで演奏するのを想像したことは……。

「一度もないです(笑)。イメージできなかったですね。でもハープとやりたかったというよりは、エドマール・カスタネーダとやりたくて始まったことなので。別にハーピストを探していたわけではなく、エドマールという人と出会ってしまったのでこうなったという感じです」


出会ってから1年後の奇跡



——彼の人柄について教えてください。

「ものすごく明るい人です。いつもニコニコしてる。太陽みたいな人ですね。“太陽の子、エドマール”って感じです(笑)」

——上原さんとエドマールの、似ているところってありますか?

「やっぱりエネルギー・レベルですね。彼が言ってたんですけど、バンドをやるにあたって最初に苦労するのは、自分のエネルギー・レベルにまでバンドを引き上げることなんですって。でも私にはその必要がない、と。お互いが感化しあって生まれるエネルギー量だけで汗だくになっちゃうよね、って言ってました(笑)」

——だって、上原さんのエネルギー・レベルはとてつもないから。以前「弾き始めたら休憩もしないで、ずっと弾いてる」って言ってたじゃないですか。エドマールとはどうですか?  ちゃんと休憩とってます?

「そこに関してはやっぱり私のほうが異常性が強いみたいで(苦笑)、エドマールのほうが『休憩しよう』って言います」

——“異常性が強い”と自分で認めるんですね(笑)

「あははは。自分ではそう思わないんですけど、なんか人に言われることが多くて」

——アルバムの話をしましょう。本作を聴いてまず思ったのは、ライブ盤としての意味や魅力を強く感じられる作品だなと。最後まで通して聴くことで得られる感動がハッキリとあるし、観客の熱も凄くて、ステージの上と下とによってダイナミズムが生まれている。

「本当に素晴らしいオーディエンスなんですよ。モントリオールはいつも行くたびに、お客さんの音楽に対する寄り添い方と集中力が素晴らしいなって思います。素晴らしい街はほかにもいくつかあるけど、モントリオールは特別。お客さんの“聴く力”をすごく感じる」

——だからこそスタジオ盤を先に作るのではなく、モントリオールというその場所でのライブ盤をまず出したかった。

「観客の皆さんと一緒に作るというのがライブ盤を録る楽しさです。5月~6月にヨーロッパとアメリカを回ったあとの公演だったので、タイミングとしてもいちばんよかったと思います。自分としてはモントリオールでエドマールと出会ったので、モントリオールで録りたいという気持ちがすごくあって。じつは日にちも一緒だったんですよ。2016年の6月30日に出会って、2017年の6月30日に録ったという」

——ぴったり1年後ですか?

「そうなんですよ。自分たちでその日をブッキングしたわけではなくて、たまたまそうだったというのが、偶然のなかの必然というか。いま振り返ってみても、これは本当にいいライブだったなって思いますね。集中力も熱気もあって、お客さんに自分たちがすごくいい状態にしてもらって。一緒に作ってる感じがしたんです」
 

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