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Interview with アンドレス・ベエウサエルト アルゼンチンの至宝 アカ・セカ・トリオの中心メンバーに聞く 取材・文/ARBAN編集部

アンドレス・ベエウサエルト

INTERVIEW
INFORMATION

 アカ・セカ・トリオの中心人物にして、南米最重要ピアニストのひとりアンドレス・ベエウサエルト。アルゼンチン出身の彼の音楽には、ラテンアメリカのフォークロアや、アメリカのジャズ、静謐な現代音楽の様相もある。
 こうしたミクスチャーでオルタナティブな作風は、昨年発表されたソロアルバム『Andrés Beeuwsaert』で爆発。世界中の批評家から賞賛を集めた。そんな彼が、この11月にモントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン2017(11月3日〜5日)で来日。注目の“ソロ名義のパフォーマンス”を披露する。さらに現在、アカ・セカ・トリオの次回作が完成間近という情報も…。



——あなたの音楽家として活動は、アカ・セカ・トリオがよく知られています。その一方で、アンドレス・ベエウサエルト個人としての作品も発表しています。このふたつの活動には、どんな違いがある?

「普段はソロよりもアカ・セカ・トリオの活動のほうがずっと多いです。でも二つの活動は互いに補い合っています。例えばアカ・セカの活動ではあまり即興の演奏をする場面がありません。でも私は即興で演奏をするのがとても好きなので、そこはソロ作品の演奏で取り入れています」

——ほかにもタチアーナ・ハーパとのデュオ作なども発表していますが、あなたが関与した一連の作品には“共通点した何か”があります。自分ではそれを何だと思いますか?

「僕の音楽は旅や視覚的風景、映画からの影響を強く受けていると思います。これらは僕のアーティストとしての形成にとても役立っているんです。自分の音楽をひとりの視聴者として聴くと、常に自然の存在をはっきりと感じます。田園、海、夕暮れとか…」

——最新作『Andrés Beeuwsaert』では、あなたが「ピアノという楽器の表現の可能性」について真摯に取り組んでいることがよくわかります。また「人間の声で表現できること」に対しても非常に意識的だと感じました。

「うれしい意見です。私がコンサートをするときは、即興にあてる時間を多くとり、またその場で生じる状況に時間を割くようにしています。つまりその場の思いつきやライブの鮮度を大切にしています。それがいい結果を生むこともあればそうでないこともあります。なぜなら常に同じ強度で表現や感情が保てるとは限らないからです。すべてを正確に計画した場合と違って、このような表現手段を選ぶにはそれなりのリスクもあります。歌については、僕の歌い方は時や経験とともに変わるし、コンサートの瞬間にどう感じているかによっても変わります。でも永遠に模索を続けるなかで、どこか直感的で正直なところから生まれてくるものです。ピアノで弾いているものと合わせるための一つの音として声を使うことも多いですね。うまく融合するように努めています」

——政治や経済、人権、環境などの社会的問題に対して、あなたが最も興味を持っていること何ですか?
 
「いま世界で起きている状況は、まったく楽観視できません。僕が注目している唯一の人はジャック・フレスコです。彼の世界を見る視点、彼が唱えた真の代替社会を創る方法に深く共感します。このインタビューを読んだ方には『ザ・ヴィーナス・プロジェクト』について調べてほしいと思います。残念ながらフレスコ氏は今年101歳で亡くなりましたが、彼のプロジェクトは続いていて、いつの日か実現されることを望んでいます」

——あなたは自分の音楽に、社会的な使命を課していますか?

「音楽は人を助けます。僕の活動は人々にいい影響があると感じています。けれど、音楽自体がこの地球が直面する現実や現在の社会的状況を変えることができるとは思いません」

——これまであなたが一緒にプレイしたミュージシャンのなかで、最も刺激的だったのは誰ですか?

「これまで本当に崇拝するミュージシャンたちと一緒にプレイする機会に恵まれ、その共演リストは膨大です。何人かだけ名前を挙げるのも不公平です。だから“自分が目標としてきた人たちに出会い、多くの夢が叶った”とお答えしましょう。そのことをとても幸せで光栄に思います」

——モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン2017(11月5日)の出演が控えていますが、今回のステージはどんな内容にしたい?

「アカ・セカ・トリオで演奏している曲や僕自身の作曲、それからマリオ・ラジーニャ、レア・フレイリ、ウーゴ・ファットルーソやカルロス・アギーレの作品を、日本の皆さんと分かち合いたいです」

——あなたはこれまでに何度か日本を訪れていますが、日本に来ていつも感じることはありますか? ネガティブなことも含めて。

「日本について悪いと感じることは何もないですよ! いいことばかりです。日本人には敬意があって、親切で温かく、音楽を熱心に聴いてくれます。日本食もいつもとても楽しんでいます。寿司と様々なスープのファンです。国内の移動も会場も快適で、いつもすばらしいピアノがあります。ミュージシャンにとって日本は楽園だと思います。日本はいつも僕の期待を上回っています」

——逆に、あなたが演奏旅行に出かけてアルゼンチン(ブエノスアイレス)に帰ったとき、いつも感じることは何ですか? 

「ピアニストとしては、アルゼンチンの劇場にいいピアノの用意がないことに慣れています。もしくはピアノ自体がなかったり、調律がよくなかったり、客席の音響がよくなかったりします。だから日本の状況は本当にすばらしいと思います。アルゼンチンの好きなところは、僕たちを応援してくれている人々の温かさや愛情です。それはとても特別なもので、いつもうれしく思います」

——今後、あなたが計画している作品やプロジェクトはどんなものですか? また、今後あなたがやりたいと思っているプロジェクトや、音楽家としていつか達成したい夢があれば、教えてください。

「現在、すごく崇拝しているグスタボ・サンタオラージャというミュージシャンと一緒に演奏をしています。昨年から彼のグループのメンバーになり、一緒に演奏ができることがとても幸せです。アカ・セカ・トリオの新譜については、もう少しでレコーディングを終えるところです。来年はたくさんのツアーの予定があります。夢は、映画音楽を作ってみたいです。まだ一度も作ったことがありません。それから自分の音楽を交響楽団で演奏してみたいですね」


モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン 2017公式サイト
http://www.montreuxjazz.jp/

2016年発表のソロアルバム
http://www.nrt.jp/andres_beeuwsaert/release_information_53.html