Arban

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Roy Hargrove Quintet
2016 01.26 tue. - 01.29 fri.  @Blue Note Tokyo
取材・文:島田奈央子
写真:古賀恒雄

Roy Hargrove Quintet

REPORT
INFORMATION

 ジャズ・トランペッターと聞いて、私の中で真っ先に浮かぶのは、まずはマイルス・デイビス。続いてウイントン・マルサリス、その次に挙げるのは、このロイ・ハーグローヴである。1990年にウイントンに才能を見出され、メジャーデビューを果たしてからというもの、常に貪欲で意気盛んで、その勢いと飛び抜けたセンスが実を結び、若手ミュージシャンたちのトップを走り続けた。彼が起こした数々のセッションや活動の中でも、ジャズ、R&B、ヒップ・ホップの要素をミックスしたグループ、“RHファクター”は、ネオソウルというジャンルを確立し、強烈なインパクトを残している。また彼が指揮をとっている“ロイ・ハーグローヴ・ビッグ・バンド”では、伝統的なジャズバンドの形をとりながらも前衛的なアレンジを次々と施し、現代ビッグバンドの新境地を開いた。ビッグバンドの来日公演から2年。ロイ・ハーグローヴが青山・ブルーノート東京に戻ってきた。
 今回は5人編成のアコースティック・ユニット“ロイ・ハーグローヴ・クインテット”での来日公演。メンバーは、ジャスティン・ロビンソン(アルトサックス)、サリヴァン・フォートナー(ピアノ)、アミーン・サリーム(ベース)、ジェレミー・クレモンス(ドラムス)。ロイの同世代と若手が混ざったバンドである。このバンドでのライブは、伝統的なモダンジャズと現代感覚をブレンドした音楽というのが触れ込みだった。“RHファクター”から入ったファンにとって、このストレートアヘッドなジャズは受け入れられるのか? その前に彼らは、会場に足を運ぶのだろうか? と、正直、客層は想定できてなかった。
 しかし、そんな心配は全くの無用で、ロビーにも会場にも20~40代の男女であふれかえっていた。その満席の会場の真ん中を突っ切って、ロイ・ハーグローヴが颯爽と登場。ジャケットとデザイン系のスリムパンツというお洒落な出で立ちで、ステージからオーラを放っていた。



 息つく間もなく、すぐに演奏がスタート。リズムセクションのグルーヴから既に熱くなる。オープニングは、2006年にリリースされたアルバム『Nothing Serious』に収録されている「Camaraderie」から。このアルバムはまさに今回のクインテットの軸になっているもので、サックスはメンバーのジャスティンが吹いている。そういう意味では、今回のライブは、アルバム『Nothing Serious』のイメージに回帰したものなのかもしれない。トランペットとサックスの激しい掛け合いで展開していくこの曲は、後半になればなるほど盛り上がる。会場も一気に熱くなり、今後のライブの展開にも期待が高まった。MCはわりと少なめで曲が次々と続いていく。サックスやピアノと魅せるアンサンブル、バンド全体のインタープレイ。どれも極上で聴き応えがある。また、個々の楽器の長いアドリブソロでは、ロイはステージ横の椅子に座り、彼らの演奏をじっと聴いているのが定番のスタイルだった。
 そろそろステージに上がった方がいいのでは? と誰もが思い始めた頃、突然暗闇から吹き始め、エンディングに向かう演奏をしたり、シーンを変えて次の曲に入ったり、ロイだからできる自由でクールな演出を見せつけた。時折ミュートやフリューゲルホルンを使う事もあり印象的だったが、特にインパクトが強かったのは、ライブの後半で披露した彼の生歌だった。
 ナット・キング・コールの歌でも有名なバラード曲「My Personal Possession」を、前半は演奏し、後半はしっとりとした歌で聴かせた。アンコールでもサム・クックの「Soothe Me」を歌い、拍手喝采の中、会場を後にした。最初から最後まで、飽きさせない演出で沸かせた、ロイ・ハーグローヴ。この会場の盛り上がりは、ストレートアヘッドなジャズだから、とかどうだとかは、もはや関係ない。ジャンルを超えたカッコ良さは、やはり超一流だった。



 

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