Arban

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Patti Austin
~AORセット~
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取材・文:菅野聖
写真:Masanori Naruse

Patti Austin 
~AORセット~

REPORT
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 19時ジャスト。ミュージック・ディレクターも務めるトレヴァー・ローレンスJr.がビルボードライブ東京のステージでひとりドラムを叩き出した。続いて現れたベーシストのデル・アトキンスがリズムを重ね、パワーを加速。そこへ、キーボーディスト、キム・ハンセン&アンディ・ウェイナーのふたりが順にステージの両サイドで鍵盤を奏で、サウンドを拡張させる。ズンズンズンと熱いビート&サウンド・シャワーを浴びながら、勢いよく登場したのがパティ・オースティンだ。いきなり張りのあるヴォイスを響き渡らせ、瞬時に観客の心をキャッチ。オープニングから飛ばしまくるディーヴァに早くもクライマックス気分を味わう。会場から沸き上がる大歓声にパティもかなりの上機嫌。こりゃあ、凄いことになるぞと、心拍数が上がった。
 2011年発表のアルバム『Sound Advice』に収録していた「A Little Bit Of Love」では、巧みに声を操りながら楽曲に上質な揺れを与え、スキャットも思うがまま。エラ・フィッツジェラルドを彷彿させるフレーズが聞こえてきた時には、つい口角が緩んでしまった。1988年のアルバム『The Real Me』に収められていたスタンダード曲「煙が目にしみる」の曲紹介では、男性が歌っているかのごとく、野太い声でサワリを口ずさみ、プレイヤー陣を誘導。多彩なフェイクで味付けしながら、パティ・ワールドをクリエイト。まだ3曲目だというのに、すでに汗だくの彼女は、ポニー・テールを持ち上げながら、洋服の上からタオルで脇汗を拭く真似をし、観客を笑わせる。



 メロウなグルーヴを放出したジェイムズ・イングラムとのデュエット曲「Baby, Come To Me(あまねく愛で)」に続く、ミシェル・ルグラン作曲のバラード「How Do You Keep The Music Playing?」の豊かな表現力にも感激。一転、ローリング・ストーンズのカバー「You Can’t Always Get What You Want」では完全にロックン・ローラーに成りきるパティ。貫禄あるシャウトに客席も当然ヒート・アップ。凄まじい迫力に圧倒されるばかりだ。そのパワーはMCでも衰えず、オーディエンスをいじりながらグイグイと盛り上げていく。ラテン・ナンバー「Love Wines」もリズムに乗りながらエネルギーを発散させ、ピアノ・ソロを挟んだパワフルなスキャットではスタンダード曲「枯葉」を盛り込むという展開も。これには本人も大満足だったようで、歌い終わった途端にガッツ・ポーズをしていた。ガラリと雰囲気を変え、静かに歌い出した「Enjoy The Silence」では、“シュ、シュ”と効果音的ヴォイスを駆使しながら、アフリカンな空気を描き出していった。立ったままカホンをプレイしていたトレヴァーも大フィーチャーし、幻想的な風景に瞬間移動。
 「来日した際には必ずやるし、自分でもやりたい曲」と紹介した人気ナンバー「Say You Love Me(愛してると言って)」のイントロが流れ出すと客席からは歓喜の声が漏れ出る。彼女が17歳の時に作ったこの曲は、今も多くの日本人に愛され続けているのだ。そんな日本人がいかに素晴らしいか、熱くエールを送りながら祈るように歌ってくれた「Lean On Me」には、彼女の魂が感じられ、ジーンと胸が熱くなった。気が付けば、あっという間に終演時間。鳴り止まぬ拍手を受け、アンコールに応えた楽曲は「You Gotta Be」。まさにノリノリ、約1時間半のショーはスタンディングオベーションで幕を閉じた。
 あらかじめ<AORセット>と告知されていた今回のステージは、コンテンポラリーな楽曲をメインとしたラインナップで、往年のファンにとっても喜ばしい時間だったに違いない。しかも、送り出された楽曲はさらなる深みを増していたのだから、嬉しい驚きもあったはず。4歳からショー・ビジネスの世界で生き抜き、クインシー・ジョーンズの秘蔵っ子と言われた彼女も65歳(!)。キャリアの中で培ってきた歌声は、パティ・オースティンが現在進行形のボーカリストだということも伝えていたのだ


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