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宮本大路『Last Picture』完成記念リスニングセッション
2017 06.20 tue.  @晴れたら空に豆まいて
取材・文:富山 英三郎
写真:内野秀之

宮本大路『Last Picture』完成記念リスニングセッション

REPORT
INFORMATION

 昨年10月、惜しまれつつもこの世を去った、日本が誇るマルチリード奏者の宮本大路(だいろう)。PINK BONGOのリーダーとしての顔はもちろん、熱帯ジャズ楽団、アルトサックスの宮野裕司と組んだCROSS COUNTER。さらには、数多のミュージシャンたちのサポート、信頼の置けるスタジオミュージシャンとしてなど、華麗なる経歴は果てしなく続く。
 そんな宮本大路が制作中だったアルバム『Last Picture』が完成した。残念ながら本人はその完成に立ち合うことはできなかったが、この“最後のソロアルバム”の完成を記念して、40年来の盟友であり同作のプロデューサーでもある三宅純などが集い、リスニングセッションが開催された。



 今回のアルバムの発端は、2014年9月7日まで遡る。宮本大路は、自身も出演した三宅純パリ公演での楽屋で、同氏にソロアルバムのプロデュースを依頼。当時はまだ検査入院が決まったばかりで、健康そのものに見えるなか、彼は「タイトルは『ラスト・アルバム』か『ラスト・ピクチャー』にしようと思っている」。さらには、「3年以内に完成できればいい」と語ったという…。
 三宅純は当時を振り返り、「そのタイトルが邪魔をして、なかなか着手できなかった」と話す。ゆえに、本格的に着手できたのは2016年。それは宮本大路が最初の手術から復帰した時期だった。結果的に、このアルバムのために書き下ろせた曲は2曲、本人の演奏を録音できたのは1曲のみとなってしまった。しかし、ラスト・アルバムには宮本大路の多彩な演奏が詰まった魅惑の12曲が収録されている。プロデューサーである三宅純氏は、一体どんな魔法をかけたのだろうか?



 2017年6月20日、翌日にアルバム『Last Picture』の発売を控えるなか、“晴れたら空に豆まいて”(東京都渋谷区)で行われたリスニング・セッション。司会は、宮本大路と誕生日が同じという縁もあった画家の寺門孝之。そして、バークリー音楽大学留学時に親交を深め、その後はお互いの才能が必要不可欠な存在となっていく盟友の三宅純。さらには、自身が演出する舞台の舞台音楽を通じて親交のあった、俳優・演出家の白井晃が登壇。

 会場の桟敷席には、宮本大路が愛用した楽器の数々が置かれている。また、舞台上にはアイコンともいえる白いバリトリンサックスの他、生前の写真、寺門孝之による肖像画、そして宮本大路が生前に気に入っていた絵をベースに、新たに描き上げたという及川キーダの絵が飾られていた。場内は女性客が7割近くと多く、そのなかには奥様の姿も見えた。
3人はシャンパンで献杯すると、アルバムの1曲目から順番にかけ、それぞれの思い出を語っていく。

 先述のように、今回のアルバムのために宮本大路が演奏できたのは1曲のみ。その他は、これまで数多くの仕事を重ねた三宅純が持っていた膨大な未発表音源データをもとに、一部はコラージュ的に仕上げたものだ。なかでも中心的な役割を果たしたのは、白井晃演出による『幽霊たち』(2011年)の舞台音楽だった。これは生前、本人も雑誌連載コラムに書くほど納得していた演奏だったという。

「舞台に来るお客様は、出演する俳優さんやそこで演じられる物語を観に来られるわけです。でも、『幽霊たち』の舞台音楽、とくにアルバムにも収録されている『Two before dusk』に関しては、”このサックスを吹かれているのは誰なのですか?”という問い合わせがすごく多かった」と白井晃が語る。



 その他、スタジオで録音している宮本大路と三宅純の阿吽の呼吸ともいえるやりとりなど、秘蔵映像も流された。また、三宅純よりさらに古い付き合いがあったという、ギタリストの伊丹雅博が語る出会いのエピソードトーク映像も。ジャズ専門誌の仲間募集欄を通じて会ったところ、当時の宮本大路はドラマーでまだ12歳。玄関を開けた瞬間、家族全員に出迎えられたという楽しい思い出話も飛び出した。

「僕も、最初の出会いはドラマーなんです。サックスを始めたばかりの頃は、こんなに凄いプレイヤーになると思ってなかった。その背景には、恐るべき修練の時間と生まれ持ったセンスがあったんだと思います。そして、今はまだ彼を失った穴を埋めることができずにいます」(三宅純)

 その後も、収録曲を聴きながら、尽きることのないお喋りが続いていく。アルバムに収録されている演奏はどれも聴衆の心を震わせ、惜しむべき存在であったことを改めて感じさせる名曲ばかり。また、宮本大路を知らない者にとっても、彩りが豊かで美しく、叙情的な作品として響くことだろう。
 なお、CDに封入されるライナーノーツを開けば、普段はあまり音楽を言葉で語ることがない三宅純の丁寧な解説を読むことができる。当日の内容と重なる部分も多く、リスニングセッションに足を運ぶことができなかった方々も、これを読めばさまざまな謎を解くことができるだろう。






宮本大路『Last Picture』
2017年6月21日リリース
定価:¥2,800+税

購入はこちらから
iTunes:https://itunes.apple.com/jp/album/last-picture/id1241831354
HMV:https://goo.gl/QJ9Yeb
Tower Records:https://goo.gl/TVX1p7

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