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最高の音で聴く“三宅純の集大成” MJFJ2017のセット予告も?
2017 10.16 mon.  @晴れたら空に豆まいて
取材・文:富山英三郎
写真:高瀬竜弥

最高の音で聴く“三宅純の集大成” MJFJ2017のセット予告も?

REPORT
INFORMATION

 『モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン 2017』の最終日(11/5)に、ヘッドライナーとして登場する三宅純。彼は即興を信条とするジャズ・トランペッターとしてキャリアをスタートし、現在は作曲家として、パリを拠点に映画やCM、ダンス、舞台など多岐にわたる作品への楽曲提供を行っている。 

 また、自身が選び抜いた世界各国のミュージシャンやシンガーを多数率いてのコンサートも開催。2016年には、リオ五輪閉会式のハンドオーバーセレモニーのために『君が代』のアレンジを担当したことでも話題となった。
 

 

ハイレゾ音源での57分20秒・全19曲

 
 そんな三宅純の最新アルバム『Lost Memory Theatre act-3』が、11月15日に発売される。去る10月16日には、『晴れたら空に豆まいて』(東京都渋谷区)にて先行試聴イベントを開催。これは、『モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン 2017』のプレ・イベントとして企画されたものだ。当日は、三宅純と交遊の深い画家・寺門孝之が進行役となり、会場が誇るメイヤーサウンドのスピーカーからハイレゾ音源で最新作が流された。
 
「前作の『Lost Memory Theatre act-2』から3年半かけたアルバムです。57分20秒・全19曲、移ろいゆく風景などを感じながら、まずは黙っていっきに聴いてほしい。とはいえ、今回はそうもいかないので何曲かかけてはお喋りしていきます」と三宅純。
 

 

すべてのことは“記憶”から作られる

 
 プレイボタンが押される前に、進行役の寺門孝之が“Lost Memory Theatre”のコンセプトや経緯、その思いについて聞いた。
 
「もともとは、20年程前に“レーベルを立ち上げないか?”と誘われた際に思いついたコンセプトなんです。そのとき、どういうことに自分は魅かれるのかを考えて…。人々の失われた記憶が流入し、記憶に満たされ、帯電する劇場があったらなと思ったんです。レーベルの話は実現しませんでしたが、このコンセプトは自分にとってライフワークのひとつになりました。自分がやってきたことのすべては、この劇場の中に含められているかもしれない。現時点では、このact.3で完結だと思っていますけど、もしかしたら隣に“ロスト メモリー コロシアム”ができるかもしれない(笑)」(三宅純)
 
 『Lost Memory Theatre act-1』(2013)、『同 act-2』(2014)は、フランスやドイツの音楽誌で『音楽批評家大賞』『年間ベストアルバム賞』などを連続受賞。ジャイルス・ピーターソンが英BBCで特集を組むなど、欧州を中心に大きな反響を生んだ。
 
「“記憶”ってものすごく不思議なもので…。先日、カズオ・イシグロがノーベル文学賞を獲ったときも、“人間は何を忘れ、何を忘れまいとするか”というような話をしていて。すべてのことは“記憶”から作られるような気がするんです」(三宅純)
 

 

各曲の制作秘話が次々と語られた


 『act-3』はピアノから始まる魅惑的なエピローグからスタートする。そして、三宅サウンドのアイコンともいえるブルガリアン・ヴォイスが響き渡る2曲目へ。最初の3曲を聴き終えたトークタイムでは、彼女たちがおこなっている独特な発声練習風景が上映された。このように、動画なども挟みながら進行されていく。
 
 トークでは、気まぐれで奇傑なアート・リンゼイに振り回されながらも、彼の才能に惚れ込んでいる様子が伺える話や、リサ・パピノーとの制作秘話などが次々と語られていく。その中には、盟友でありマルチリード奏者の故・宮本大路の話も。
 
「1・2・8曲目には彼の生前の演奏が使われています。音っていうのは不思議で、その楽曲のために演奏されたものでなくても、機能する場合には永遠に命が残る。それもひとつの“記憶”と同じようなもの。僕は彼の演奏がとても好きだったから、今後もそういうことはやっていきたい」(三宅純)
 
 後半戦のスタートは、今回のマスタリングを担当したオノ・セイゲンと、『サウンド&レコーディング・マガジン』の編集長・國崎晋が舞台に上がった。マスタリング作業は、通常2~3日で終わるが、このアルバムでは1ヶ月以上費やしたという。また、スイス本国の『モントルー・ジャズ・フェスティバル』に出演した際の話も飛び出した。


 

記憶は輪廻する

 
 試聴会は続き、各アーティストとの興味深いエピソードが語られていく。終盤にはこのアルバムにも参加し、三宅純作品には欠かせないシンガーの勝沼恭子も登壇。そして、ついにエピローグの曲が会場に流れる。しかし、『act.3』はそこで終わりではない。ラストは三宅純ファンにとってお馴染みのあの曲が収録されているのだ。
 
「曲順はものすごく大事で。どこから初めて、どう終わるかの試行錯誤は常にあるんです。今回終わって良しとなったのは、act.1とのシンメトリー化ができたから。記憶は輪廻するものであり、その中で消えていくもの。そういうものが組めたので、Lost Memory Theatreは今のところ完結したと思っている」(三宅純)
 

 

ジャズフェスの常識を打ち破る!?

 
 最後に、『モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン 2017』についても語られた。

「16人編成の多国籍部隊を引き連れ、ジャズフェスティバルの常識を破り、ほぼワンマンショー的な内容で2セットやります」(三宅純)
 
 そう言い残しながら、今年5月にサンパウロで行われた『ジャパン・ハウス サンパウロ』の開館記念コンサート映像が流れる。今回のフェスがどうなるのか? ヒントはここにあるのかもしれない。




 
 
■会場で『Lost Memory Theatre act-3』を予約した人の特典としてサイン会を実施。
 
 

 
三宅純
Lost Memory Theatre act-3
(2017年11月15日、日本先行発売)
P-VINE RECORDS
¥2,600
 
シリーズ完結編となる「act-3」が遂に完成! 人々の失われた記憶は、これまで以上に幅広い思い(曲調)で満たされ、帯電していく…。この戯曲ともいえる異世界をサポートするのは、アート・リンゼイ、リサ・パピノー、コスミック・ヴォイセスなど、三宅純作品に欠かせないメンバーたち。さらに、ギリシャの国民的歌手であるディミトラ・ガラーニや、ピナ・バウシュのカンパニーで最古参のメンバーであるナザレット・パナデロ、女優のメヒティルド・グロスマンなどなど。それら多種多様なアーティストたちが繰り広げる、幻想的で不思議な世界は、あなたの記憶と同調して混ざり合っていく。そんな不思議なアルバムなのだ。
 

モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン 2017
http://www.montreuxjazz.jp/