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モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン 2017 DAY3
2017 11.03 fri. - 11.05 sun.  @恵比寿ザ・ガーデンホール
取材・文/川瀬拓郎
写真/太田功二, Taiki Murayama

モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン 2017 DAY3

REPORT
INFORMATION


 改めてフェスの最終日を振り返ってみると、文字通りのジャズというよりも、ボサノバを含めたラテン・フレイバーが特徴的なラインナップであった。ワールド・ミュージックといってしまうと陳腐に聞こえてしまうが、まさに世界を旅しているかのような感覚、音を通じて映像が見えてくるような不思議な体験を得ることができた。

 本イベントまで、事前の下調べもしないままでいたのは、とにかくフラットな気分で音楽に身を委ねてみようと思っていた。それは、今まで慣れ親しんだロックやポップスなら、一聴しただけで好きか嫌いかが瞬時に判別できてしまう自分が、馴れ親しみのない音楽にどのような反応をするのか、自分自身が知りたかったからでもある。

 暖かな日差しとひんやりした風が心地いい三連休の日曜日、集まっていたオーディエンスからもリラックスしたムードが感じられる。年配の方も見かけるが、メインとなるのは30〜40代くらいの方である。どちらかといえばコンサバが優勢であるが、ハット使いでさりげなく個性を感じさせるきれい目カジュアルの男性、自然体のカジュアルながらも上質そうなニットやストールでエレガンスを感じさせる女性も散見できた。

 しばらくラウンジスペースでファッションチェックをしてから、メインステージへ。

 お辞儀をしながらスポットライトに照らし出されたのは、現代アルゼンチン音楽における最重要アーティストと評される、アンドレス・ベエウサエルトである。アカ・セカ・トリオの中心メンバーとして知られ、ソロでも精力的に活動している。

 アンドレスが1曲目に披露したのは、静謐な空間にすっと広がっていくようなエレクトリックピアノの音色。そこへ歌詞のないヴォーカルが重なっていく。水の波紋に音を付けるとしたら、こんな感じかも知れない。あえて変化の少ないブルーの照明と相まって、なんとも優しく、ゆったりとしたムードに包み込まれていく。2曲目はエレピの音色を変え、軽快なテンポのナンバー、3曲目は民謡のようなメロディーが印象的な楽曲を披露。曲間には英語のMCを挟みながら、スムーズに進行して行く。終始エレクトリックピアノと本人の歌声のみだが、それゆえこうした曲調のちょっとした変化がとても心地よい。

 アンドレスの奏でる音楽に没入していくうちに、何となく思い出してしまったのが、グラミー賞を受賞したことでも知られる、米国人フォークシンガーのボン・イヴェールである。決して音楽的、地理的、人間的な接点があるわけではないが、静謐な中から立ち上がる澄んだ音が次第に広がって、やがて全体を包み込んでいくような感覚が共通しているように思えた。そんなことを考えているうちに、抑揚の効いたタッチで紡がれた旋律が印象的なラストソングへ。歌とエレピだけで、ここまでたくさんのイメージを表現することができるのかと感心し、心地よい余韻に浸ることができた。

 そして本日の目玉である三宅純の登場を待つ。いよいよ、あの“ロスト・メモリー・シアター”の世界を生で体感できるのだ。しかも「16人編成の多国籍部隊を引き連れ、ジャズフェスティバルの常識を破り、ほぼワンマンショー的な内容で2セットやります」という氏の事前のコメントに、いやがおうにも胸が高まる。やはりフェスの大トリというだけあって、会場は次第に来場者が増えて賑やかになっていった。

 薄暗いステージに照明が点ると、上手側の手前に三宅純、後方にストリングス、ホーンセクションが構え、下手側はピアノとパーカション、そしてあのブルガリアンヴォイスである。そして、女性ヴォーカルのリサ・パピノーと勝沼恭子、男性ヴォーカルのブルーノ・カピナンが中央に出揃う。


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