投稿日 : 2018.12.14

【最新事典】イスラエル・ジャズの20人

構成・文/原 雅明

イスラエルジャズの20人

現ジャズシーンにおける“ひとつの勢力”と言えるほど、活躍がめざましいイスラエル出身ミュージシャンたち。この一群は、「世代別」に紹介されることも多い。

たとえば、アヴィシャイ・コーエン(Bass)やオメル・アヴィダル(Bass)といった、1970年代前半生まれの“第一世代”。そして、トランペッターのアヴィシャイ・コーエンやエリ・ディジブリ(Sax)といった1970年代後半生まれの“第二世代”。さらに、1980年代生まれのオメル・クライン(P)やシャイ・マエストロ(P)の“第三世代”といった感じだ。

最近では、シャハル・エルナタン(G)やオフリ・ネヘミヤ(Dr)といった1990年代生まれも台頭。すでにイスラエルのジャズマンは“第四世代の時代”に突入しつつあるようだ。

そんなイスラエル出身の「要注目ジャズマン20人」を、生年の順&動画で見られる代表曲とともに紹介します。

 


アヴィシャイ・コーエン(Bass)
Avishai Cohen

1970年生まれ。
オメル・アヴィタルと同じく1992年にニューヨークに渡った、イスラエルを代表するベーシスト。自身のトリオではシャイ・マエストロやニタイ・ハーシュコヴィッツら後進のプレイヤーを輩出した他、オーケストラ作品からヴォーカル・アルバムまで手掛け、多彩な音楽性を誇る。https://avishaicohen.com/

[まずはこの1曲♪]
Avishai Cohen

『An Evening with … −Arab Medley Revisit− live (Nancy Jazz Pulsations, 2018)』

 


オメル・アヴィタル(Bass)
Omer Avital

1971年生まれ。
テルマ・イェリンを卒業後、軍のオーケストラを経て、1992年にニューヨークへ渡り、コンテンポラリーなジャズシーンで確固たる地位を築いたイスラエル・ジャズの第一世代を代表するベーシスト。自身のグループではルーツに根ざした音楽を積極的に採り入れた演奏も聴かせる。https://www.omeravital.com/

[まずはこの1曲♪]
Omer Avital
『Afrik』

 


アナット・コーエン(Cl、Sax)
Anat Cohen

1975年生まれ。
アヴィシャイ・コーエン(Tp)の姉であるクラリネット、マルチリード奏者。兄のユヴァル(Sax)も含めて3コーエンズでも活動。弟と同じくテルマ・イェリンからバークリーを経てニューヨークで認められた。デキシーからコンテンポラリー、ブラジル音楽までを難なくこなす。https://www.anatcohen.com/

[まずはこの1曲♪]
Anat Cohen & Trio Brasileiro
『Choro Pesado (Dudu Maia & Douglas Lora)』

 


アヴィシャイ・コーエン(Tp)
Avishai Cohen

1978年生まれ。
トランペッターのアヴィシャイは、90年代末からニューヨークで活動を始める。オマー・アヴィタルとナシート・ウエイツとのトリヴェニなどを経て、近年はECMからリーダー作を発表する一方、ビッグ・ヴィシャスではモダンなビートも採り入れながらも、トランペットは一貫して艶やかで美しい響きを持つ。http://www.avishaicohenmusic.com/

[まずはこの1曲♪]
Avishai Cohen’s Triveni
『Dark Nights, Darker Days (Live in Studio)』

 


エリ・ディジブリ(Sax)
Eli Degibri

1978年生まれ。
バークリー、セロニアス・モンク・インスティテュートを経て、ニューヨークでカート・ローゼンウィンケルやアーロン・ゴールドバーグらとクインテットを結成。トランペットのアヴィシャイと共にイスラエル・ジャズの第二世代を代表するテナー・サックス奏者。豪快かつ哀感のあるプレイが特徴。http://www.degibri.com/

[まずはこの1曲♪]
Eli Degibri
『Cliff Hangin’ (Official Video)』

 


ヤロン・ヘルマン(P)
Yaron Herman

1981年生まれ。
リモン音楽学校からバークリーに進むも数か月で退学し、以降はパリを拠点に活動を続けている。モダンなタッチのピアニストで、中東音楽の要素も忍ばせているが、ビョークやジェイムス・ブレイクの曲なども積極的に演奏し、エレクトロニクスや歌の導入にも意欲的。http://yaronherman.com/

[まずはこの1曲♪]
Yaron Herman
『No Surprises (Radiohead cover)』

 


オメル・クライン(P)
Omer Klein

1982年生まれ。
テルマ・イェリンからニューイングランド音楽院に進んでダニーロ・ペレスやフレッド・ハーシュに学び、ニューヨークのシーンでの活躍。現在はドイツに拠点を移している。同郷のハガイ・コーエン・ミロとアミール・ブレスラーとのトリオでは、ユダヤ音楽を自然に咀嚼したスタイルを確立。https://omerklein.com/

[まずはこの1曲♪]
Omer Klein
『Sleepwalkers』

 


ダニエル・ザミール(Sax)
Daniel Zamir

1982年生まれ。
テルマ・イェリンからニュースクール大学に進み、ニューヨークでジョン・ゾーンと出会い、彼のレーベルTzadikと契約を交わして十代でデビュー作『Satlah』を発表。ユダヤと東欧音楽への関心が深く、ソプラノ・サックスとヴァーカルも取り、それらを取り入れたエモーショナルな演奏を見せる。http://danielzamir.com/home/en

[まずはこの1曲♪]
Daniel Zamir
『Shir Hashomer(Jazzhead 2013)』

 


ギラッド・ヘクセルマン(G)
Gilad Hekselman

1983年生まれ。
テルマ・イェリンからニュースクール大学に進み、すぐにニューヨークのシーンで活躍を始める。カート・ローゼンウィンケルらに連なるジャズ・ギタリストとして評価を高めてきた。伝統音楽からの影響はあまり感じさせず、コンテンポラリーなサウンドを追求している。https://www.giladhekselman.com/

[まずはこの1曲♪]
Gilad Hekselman
『VBlues(Studio Session)』

 


アヴィヴ・コーエン(ソル・モンク)(Dr)
Aviv Cohen(Sol Monk)

1983年生まれ。
リモン音楽学校を卒業後、すぐにプロとして活動を始め、ニューヨークとイスラエルを行き来する。アヴィヴ・コーエンとしてストレートなジャズ・ドラマーの活動をする一方、ソル・モンク名義ではRaw Tapesを拠点にビート・ミュージックにフォーカスした活動を続ける。https://www.facebook.com/avivcohenofficial/

[まずはこの1曲♪]
Sol Monk
『Third Eye feat. Jenny Penkin』

 


オムリ・モール(P)
Omri Mor

1983年生まれ。
クラシック・ピアノからスタートし、ジャズを学び、オメル・アヴィタルやアヴィシャイ・コーエンらに若くして認められた。アラブ・アンダルシアや、アルジェリア・シャアビといった音楽の探求にも熱心で、新たなクロスオーバー・ミュージックを自身の活動では表現している。http://omrimormusic.com/

[まずはこの1曲♪]
Karim Ziad, Omri Mor & Mehdi Nassouli trio jazz gnawa, guest Sami Waro
『@ festival Opus Pocus』

 


オデッド・ツール(Sax)
Oded Tzur

1984年生まれ。
サックス奏者として2011年からニューヨークのシーンで活動を始める。それ以前は、ロッテルダム音楽院で北インドの古典音楽を学んでいた。それらの影響もあり、コンテンポラリーなジャズの世界でも彼のテナー・サックスは型にはまらないスピリチュアルな響きを得ている。https://www.odedtzur.com/

[まずはこの1曲♪]
Oded Tzur Quartet
『Single Mother』

 


シャイ・マエストロ(P)
Shai Maestro

1987年生まれ。
テルマ・イェリン在学中にアメリカ・イスラエル文化基金の奨学金を得て渡米、バークリーの奨学金も得るが辞退する。ベースのアヴィシャイ・コーエンのトリオに加入したことでブレイクし、2010年から自身のトリオで活動を始める。作曲面でも新作『The Dream Thief』で新たな境地を開いた。https://www.shaimaestro.com/

[まずはこの1曲♪]
Shai Maestro
『What Else Needs to Happen? (Official Video)』

 


ニタイ・ハーシュコヴィッツ(P)
Nitai Hershkovits

1988年生まれ。
アミット・ゴランのプライヴェート・レッスンを受け、アメリカ・イスラエル文化基金の奨学金を得て渡米。2012年にアヴィシャイ・コーエンのトリオに加入し、ピアニストとして評価を決定的なものとする一方、旧友であるリジョイサーらイスラエルの新たな流れにも積極的に関わっている。https://www.nitaihmusic.com/

[まずはこの1曲♪]
Nitai Hershkovits
『Explaining Sage』

 


リジョイサー(PD)
Rejoicer(Yuvi Havkin)

生年不明。
ロンドン生まれテルアビブ育ちのプロデューサー、マルチ奏者。バターリング・トリオのメンバーであり、レーベルRaw Tapesの設立者。イスラエル音楽の新たな潮流を作った存在といえる。現在は、ニタイ・ハーシュコヴィッツやアヴィヴ・コーエンら、ジャズ・ミュージシャンとのプロジェクトTime Groveに力を注いでいる。https://www.facebook.com/Rejoicer.Energy.Dreams/

[まずはこの1曲♪]
Rejoicer
『Double Astral Move(Dungeon Sessions)』

 


セフィ・ジスリング(Tp)
Sefi Zisling

生年不明。
テルマ・イェリン出身で、ジャズのみならず幅広い音楽シーンで活躍するトランペッター。ファンク・バンド、ファンクンシュタインの一員としてデビューし、クティマンのオーケストラなどにも参加。リジョイサーのプロデュースでソロ・アルバム『Beyond The Things I Know』をリリースし、自身のカルテットも率いる。https://www.facebook.com/sefizislingmusic/

[まずはこの1曲♪]
Sefi Zisling Quartet
『Open The Door』

 


アミール・ブレスラー(Dr)
Amir Bresler

1989年生まれ。
テルマ・イェリンでジャズと出会い、若くしてドラマーとして活動を始め、ベースのアヴィシャイ・コーエンのコンサートに参加したのをきっかけに、シャイ・マエストロやニタイ・ハーシュコヴィッツにも重用された。一方LBTというDJも交えたユニットを主宰し、アフロビートを探求している。https://amirbresler.bandcamp.com/

[まずはこの1曲♪]
LBT
『Kicha Studio Sessions Vol. 2』

 


J・ラモッタ・すずめ(Singer、Tp)
J. Lamotta Suzume

生年不明。
テルアビブ生まれのシンガー、ビートメイカー、トランベッター。ジャズを学んでいたが、2014年からベルリンに移り、ネオソウルやビート・ミュージックのシーンで注目を集めた。シンガーとしてだけでなく、サンプラーを使ったトラックメイキングにも優れた才能を発揮し始めている。http://www.jlamotta.de/

[まずはこの1曲♪]
J.Lamotta すずめ & The Dizzy Sparrow
『Advice』

 


シャハル・エルナタン(G)
Shachar Elnatan

1993年生まれ。
父がジャズ・ギタリストだった影響で6歳からギターを弾き始める。2012年にカート・ローゼンウィンケルのテルアビブ公演をサポートして注目され、ベースのアヴィシャイ・コーエンが主宰するRazdaz Recordzからデビュー作『One World』をリリースした新鋭。https://www.shacharelnatan.com/

[まずはこの1曲♪]
Shachar Elnatan
『At Distance (Live Session) 』

 


オフリ・ネヘミヤ
Ofri Nehemya(Dr)

1994年生まれ。
ドラマーの父の影響でドラムを始め、テルマ・イェリンからバークリーに進む。ベースのアヴィシャイ・コーエンのバンドに抜擢されたのをきっかけに、エリ・ディジブリやシャイ・マエストロのバンドにもフィーチャーされた、若手で最も注目を集めるドラマー。https://www.ofrinehemya.com/

[まずはこの1曲♪]
Ofri Nehemya Quartet
『Just Sayin’ (studio version)』