モッズが終焉を迎えつつあった1960年代後半、マンチェスターなどイギリス北部のワーキングクラスの若者から生まれ、のちのレイヴシーンにも大きな影響を与えた「ノーザン・ソウル」ムーブメント。彼らはレアなソウルやファンクの7インチレコードをプレイし、日常の鬱憤を晴らすかのように踊り狂った。
映画の舞台は、そんなシーンの最盛期ともいえる1974年。イギリス北部のバーンズワースという町に住む冴えない高校生が、「ノーザン・ソウル」なサウンドに出会うところから始まる。彼はこれまで経験したことのない、ダンス音楽カルチャーが持つパッションにヤラれ、DJを目指すべくレコードを掘り、パーティに出かけ、アメリカでレア盤を買い付けることを夢見るようになる。
その過程でファッションに目覚め、ドラッグに出会い、仲間を失い、恋が生まれと、『さらば青春の光』や『トレインスポッティング』、『24アワー・パーティ・ピープル』といったイギリスの名作を踏襲する、リアルで甘酸っぱいユースカルチャー映画に仕上がっている。
希少なキラーチューンを掘り当てるさまは、90年代日本のレア・グルーヴのムーブメントを思い起こさせ、太めのパンツで踊り狂うさまは00年前後の日本のレイヴシーンともリンクする。DJやクラブシーンに少しでもアクセスしたことのある人にとっては、かつての自分と重ね合わせて心が揺さぶられることだろう。また、これまで謎の多かった「ノーザン・ソウル」の実体が垣間見られるという点でも必見の映画。
監督のエレイン・コンスタンティンは、「ノーザン・ソウル」のムーブメントを実体験し、その後はニック・ナイトのもとで修行した敏腕フォトグラファー。それだけに、映像の切り取り方がスタイリッシュである点も見逃せない。
2/9(土)より新宿シネマカリテ、神戸・元町映画館ほかにて劇場公開!
詳細は、
http://northernsoul-film.com/
『ノーザン・ソウル(NORTHERN SOUL)』
2014年|イギリス|102分|R15+|日本語字幕・升本直子|字幕監修・NIGHT FOX CLUB|協力・After School Cinema Club|配給・SPACE SHOWER FILMS
2015年 英国アカデミー賞(BAFTA AWARD)英国デビュー賞ノミネート(監督・脚本)
2015年 ロンドン批評家協会賞 ブレイクスルー英国フォルムメーカー賞ノミネート(監督・脚本)
2015年 トロント国際映画祭オフィシャルセレクション