投稿日 : 2019.02.28 更新日 : 2021.07.27
【シティポップ海外人気を検証】海外のキーマンたちが語ったシティポップブームの現在
取材・文/中村 望
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近年、海外で「日本人アーティストの過去作品」が注目されている。その多くは70~80年代に発表されたポップス作品で、たとえば、竹内まりやの楽曲「プラスティック・ラブ」はYoutubeで2000万回以上の再生回数を叩き出し、細野晴臣、矢野顕子、佐藤博などの旧タイトルは、アナログ盤で次々と海外で復刻。
また、テレビ東京系の番組『YOUは何しに日本へ?』では、大貫妙子の『Sunshower』(1977年)や山下達郎の『For You』(1982年)など、日本の旧作を求めて来日した外国人に密着。その放送回は大きな反響を呼び、のちに『Sunshower』のアナログ盤は何度も再プレスされることになった。ここ日本でも「シティポップ」というキーワードとともに旧作が再評価されているが、そこに外国人も参入しているわけだ。
では、外国の愛好家たちはこの現象をどう捉えているのか? そもそもなぜ、こんな盛り上がりが発生したのか。その実相を探るべく、日本の旧作を復刻する海外レーベル関係者や、ジャーナリストたちにインタビューを実施。“海外の当事者たち”の声を聞いた。
◆今回の取材協力者たち
本拠地はパリ。矢野顕子のアルバム『ただいま』や『Japanese Girl』、佐藤博の『Orient』などを再発している。
本拠地はジュネーブ。清水靖晃の『案山子』、ムクワジュ・アンサンブルの『ムクワジュ・ファースト』や高田みどりの『鏡の向こう側』などを再発している。
本拠地はワシントン州シアトル。細野晴臣の諸作や、80~90年代の日本作品を集めたコンピレーション作品『Kankyō Ongaku』などをリリース(今回の取材に対応してくれたのは、同レーベルのリイシュー・プロデューサーYosuke Kitazawa氏。Visible Cloaksのメンバーでレーベル「Empire of Signs」を運営する日本作品の識者Spencer Doran氏)
音楽・映画・アートなどの幅広い分野を取りあつかうフランスの有力カルチャー情報誌(今回の取材に対応してくれたのは同誌の記者アゼディーヌ・ファール氏)。
YouTubeがブームを牽引
まず最初の疑問は「なぜ今、日本の過去作が再注目されたのか」である。その大きな要因となっているのは、やはりインターネットだ。おもにYoutubeをはじめ、米最大級の音楽データベース「Discogs」などが、日本産音楽の情報源として機能している。また、2010年頃にネット上で広まったブーム「Vaporwave(ヴェイパーウェイヴ)」(注1)で日本のシティポップが数多くサンプリングされたことも過去作の発見に一役買ったようだ。
注1:2010年代前後、ネット界隈で生まれたカウンターカルチャー的ムーブメント。昔の音楽、ゲーム、商業コマーシャルなど、リアルタイムを知らない若者にとっては新鮮でローファイなコンテンツを使い、再アレンジされた音楽ジャンル。80年代の大量消費時代を皮肉っているともいわれ、その後アート方面にも広がりを見せた。
新世代アーティストたちの影響も
多くの人がインターネット経由で知ることとなった、日本の70〜80年代サウンド。仏『Les Inrockuptibles』誌の記者アズディン・フォール氏は、そのきっかけとなった事例を語ってくれた。
LI(仏)「このトレンドがいつ始まったのかは分からないけど、フランス人が日本の音楽に興味を持ったきっかけがYoutubeであったことは確かだね。僕らはYoutubeのおかげで、日本の旧作にも新作にもアクセスできるようになったし、今ではクリックひとつで角松敏生のすべての曲を見つけられる。たとえ数分前まで彼のことを知らなくてもね」
同氏が日本の音楽に出会ったのは15年前。当時はインフルエンサー(影響力のある人物)となる存在はいなかったようだが、今では各国の著名アーティストたちがインタビューでYMOやシティポップについて言及し、カバー曲も発表している。「こうした動きも要因のひとつ」と同氏は語る。
LI(仏)「マック・デマルコ(注2)、コナン・モカシン(注3)、ホームシェイク(注4)などの著名アーティストたちは、欧米の若い世代に日本の過去作を伝えるインフルエンサーになっている。何年か前に、マック・デマルコはセキトシゲオの〈Chamber of Reflection〉をカバーしたんだ。それが人々にシティポップを広めたきっかけのひとつじゃなかったかな」
◆マック・デマルコ「Chamber of Reflection」
注2:カナダ出身のシンガーソングライター。米『Pitchfork』誌で2012年と2014年度の「ベスト・ニュー・ミュージック」を獲得。坂本龍一、細野晴臣、山下達郎などのファンであることを公言。
注3:英国を拠点に活動するニュージーランド出身のアーティスト。NME、ザ・ガーディアン紙など各国メディアが絶賛する新鋭。
注4:カナダ・モントリオールを拠点に活動するシンガーソングライター、ピーター・セイガー率いるプロジェクト。新感覚のベッドルーム・ポップで注目を集めている。
日本のカルチャーはイケてる!?
ネットの普及と、著名人の言動。欧米の人々が興味を示す理由はそれだけなのだろうか。探っていくと、また別の背景も見えてきた。
WWS(仏)「そもそも、フランス人は昔から日本のカルチャーに好意的だ。ケンゾー、イッセイミヤケ、コム・デ・ギャルソンなどの日本のファッションやアート。それに、映画監督のジャン=リュック・ゴダールやフランソワ・トリュフォーが日本映画が大好きだったおかげで、日本の映画は50年代からすごく有名だった。つまり僕らにとって、“日本はイケてる”んだよ」
さらにフランスやスイスでは、70年代の終わり頃から日本のアニメ作品がテレビ放送されており、この影響も大きいようだ。
WRW(ス)「日本の音楽との出会いは、子供の頃にスイスで放送されていた『UFOロボ グレンダイザー』、『鉄腕アトム』、『宇宙戦艦ヤマト』といったアニメや、『ウルトラマン』『スペクトルマン』などの特撮ヒーローもの。番組中に登場する未来のテクノロジーや、前衛的な音楽、奇妙な効果音はとても神秘的で、映像としてもユニークだった。日本の文化をもっと知りたくなったよ」
◆『UFOロボ グレンダイザー』
WWS(仏)「(若い世代の)フランス人の多くは、『キャンディ・キャンディ』や『アルプスの少女ハイジ』、宮崎駿作品なんかのアニメを観て育ったから、日本の美学に対して親近感を持っている。フランス人は昔から日本のカルチャーが大好きなんだよ」
DJたちが果たした功績も大きかった
どうやら、70年代から「日本の大衆文化」(の一端)は欧米でも知られていたようだ。しかしなぜ、70~80年代当時に「日本の音楽作品」は話題にならなかったのか。その理由は単純なものだった。
WWS(仏)「当時、日本の音楽作品(レコードやCD)は輸入されていなかったからね」
LITA(米)「日本の音楽はアメリカではほとんど知られていない。豊かで複雑な歴史を持っているのに、日本以外ではほとんどリリースされてこなかったからね」
流通していないのだから知らなくて当然。彼らによると、日本の音楽が「発見」され始めたのは20年ほど前。DJカルチャーの広がりとともに情報も増えていったという。
WWS(仏)「関心が高まったのは2000年頃、DJカルチャーを通じてだったと思う。レアなレコードが掘られたり、リバイバルされたりしたね。日本産のシティポップは欧米のDJたちの間で長い時間をかけて広まっていったんだ」
LITA(米)「DJ活動を通してYMOなんかのクラシックはいくつか知っていたよ。YMOのシングル曲は、エレクトロ/Bボーイ・カルチャーでは有名だったからね」
情報ソースはライナーノーツとYMO
しかしながら、多くの欧米人にとって日本語は“謎の言語”。ネットが普及した現在であっても、旧譜を探すのは困難なはず。彼らは一体どんな方法でアーティストの存在を知り、過去の音源にたどり着いているのだろうか。
坂本龍一&細野晴臣らYMOの影響力
今回の取材でもっとも印象的だったのは、海外におけるYMOの存在感だ。彼らのコメントの中には必ず、YMOとそのメンバーの名前が挙がるのだ。特に坂本龍一や細野晴臣のソロ作品は、海外の音楽マニアたちの間で“日本作品を探す重要な指標”となっているらしい。
WWS(仏)「入り口は、坂本龍一の『Forbidden Colours』(1983年)だった。この曲は当時ヨーロッパで大ヒットしたんだ。70年代から80年代にフランスで育った人は、この曲と、映画『戦場のメリークリスマス』(1983年)で日本の音楽を認知した。あと、細野晴臣もいろんなアルバムでベースを弾いているから、彼の足跡を辿ることで矢野顕子も見つけたんだ」
デヴィッド・シルヴィアン/坂本龍一「Forbidden Colours」
また、アメリカのレーベル「LIght in the Attic」(細野晴臣の過去作5タイトルを復刻)はこう述べている。
LITA(米)「細野晴臣作品はこれまでの僕らがリリースした楽曲のスレッドになっている。どういうわけか、素晴らしい日本の音楽には彼が関わっていることが多いんだ」
また、彼らの重要資料として機能しているのが、日本の充実したライナーノーツ。これを手がかりにすれば、(彼らにとって)無名のアーティストでも容易に発見することができるという。
LITA(米)「東京の音楽シーンは複雑だけど相互に結びついている。最初は著名なアーティストからスタートして、音楽的な系譜を辿ったんだ。ライナーノーツを読めば、どのミュージシャンが、誰のアルバムでプレイしているかが分かるし、無名のアーティストでもすぐに見つけられる。例えば、松武秀樹の名前は、僕の好きな多くのアルバムのライナーノーツに載っていたんだ」
そのほか、ファン同士のネットワークも重要な情報源のひとつ。ときには日本の識者からもアドバイスをもらっているという。
LITA(米)「僕にはアメリカ人、ヨーロッパ人、日本人など、助言してくれるたくさんの人がいる。彼らとトレードしたり、レコードを売ってもらったり、オススメしてもらったりね」
WRW(ス)「オンラインやレコード屋でも掘るけど、友達とお気に入りをシェアしあったり、レーベルをフォローしてくれている人がオススメを送ってくれたりもするんだ」
70~80年代の日本サウンドは宝の山
前述の通り、70~80年代当時は日本作品が海外でほとんど知られていなかった。ところが近年、ネットの力によって浮き彫りとなった日本の音楽シーンは、彼らにとって突如現れた未知の新世界。これまで誰も踏み込まなかった“宝の山”のようだという。
LITA(米)「まるで欧米文化とは別のパラレルワールドのようだよ。僕らから見ると、前衛的になった自分たちの文化を、違う目線から見ているような感覚だね。僕たちの文化が、誰も知らないところで研ぎ澄まされて、僕らにとって非常に魅力的なものとなって突如現れたってとこかな」
WRW(ス)「僕らにとっては魔法のようだった。全く知らなかった音楽だし、未知の新世界を発見したような気分だったよ」
WWS(仏)「長いことブラジルやアフリカ音楽に注目していた(欧米の)コレクターたちは、新たな領域に踏み出し、ついに日本のレコードに辿り着いた。70~80年代の日本の音楽には、素晴らしいものがたくさんあったことがわかったんだ」
日本の商業音楽の歴史をふり返っても、その作品数は膨大なもの。つい最近発掘したという彼らにとっては、なおさら巨大で魅力的な“宝の山”のように見えているのかもしれない。
高いクオリティとユニークな音楽性が魅力
彼らにとって未知の世界だという日本の音楽だが、具体的にはどこに魅力を感じているのだろうか。彼らが口を揃えるのは「楽曲そのもののクオリティや構成力の高さ」だが、日本人では気づきにくい「ユニークさ」もあるという。
WWS(仏)「魅力はその優れた音楽性とクオリティの高さだと思う。構成も演奏も素晴らしいよ。僕らの国の音楽とテイストが似ているけど違いも感じる。日本には長くて豊富な音楽の伝統があるし、彼らが生み出すサウンドはフレッシュでエキゾチックなんだ」
WRW(ス)「雰囲気や音質、楽曲の構成は僕らがこれまで聴いてきたものとまるで違う。本当に魅力的だよ。欧米の音楽から影響を受けたのか、それとも全く新しいスタイルを作ったのか、どちらにしても、日本のミュージシャンのアプローチはユニークだ。日本の音楽は伝統への敬意と実験性を完璧なバランスで体現している。さらに僕らを魅了する最も重要な点は、“今の時代にも完全にフィットしている”ところだね」
“言葉の壁”は障壁にならない?
日本の楽曲の大半は日本語で歌われている。歌詞は音楽にとって重要な要素のひとつだし、謎の言語で歌われる楽曲に抵抗があってもおかしくない。だが、彼らは意外にもポジティブに捉えているようだ。
WRW(ス)「僕らは歌詞が音楽のバリアになるとは思っていない。僕らは英語を学ぶ前から英語の音楽を聴いているけど、楽曲の本質やパワーを感じている。僕らが好きな日本のアルバムにもこれと同じことを感じているんだ」
LITA(米)「多くのリスナーたちも同じだと思うけど、歌詞が理解できなくても、その文化が何であるかは感じていると思う。良い音楽に、作られた場所や言語は関係ないからね」
日本の洋楽ファンがそうであるように、言語は彼らの障壁にはなっていない。良質な音楽は言語を超え、純粋な音楽ファンの琴線をビシビシと刺激しているようだ。
評価は高いが“大きなうねり”にはなっていない
取材に応じてくれた面々は日本の音楽を高く評価してくれている。まあ、当然である。これを仕事にしているのだから。そこで気になるのは、彼ら以外の海外リスナーのリアルな声だ。実際、各国のリスナーは日本の過去作にどんな反応を示しているのだろうか。
WRW(ス)「スイスではすごく良い反応だよ! 高田みどりのジュネーブ公演はソールドアウトだったし、DJも日本の音楽をかけている。20代から40代を中心に、この音楽に熱中している人たちはどんどん増えているね」
LITA(米)「アメリカでは、こういう音楽を初めて聴いた人と、国内リリースを心待ちにしていた人の二通りだけど、どちらも等しくエキサイトしている。前者は、全く新しい音楽の扉を開いた人たち。後者は、ついにアナログ盤を手にして、違法アップロードや質の悪いmp3に頼らなくて済むと喜んでいるよ」
この発言は重要である。「再発のアナログ盤」と「質の悪いmp3音源」の二択しかないとは、どういうことか? ネットを駆使して情報は得られるのに、肝心の「現行の正規音源(データ)」を入手する方法がないのである。じつは、彼らが欲しがる楽曲の多くが、SpotifyやiTunes storeなどで扱っていないため、結局、当時の現物(レコードやCD)を探すか、再発を待つしかないのだ。彼らがわざわざ日本まで来てレコード盤を探す理由も、ここにある。
そんな状況が、昨今のアナログ盤リバイバルと結びついたのは幸運だった。一方で、こうした(正規音源の)枯渇感によって、あたかもシティポップが大人気であるかのように錯覚している可能性もある。実際のところ、リアルなファン数はどのくらいなのだろうか。
LI(仏)「J-popはフランスでもたくさんの人を集めているけど、シティポップの人気は、まだ大きなものではないね」
LITA(米)「これらの音楽を魅力的に感じているアメリカ人は一部だろう。なぜなら日本の音楽は、ここではほとんど知られていなかったからだ」
WWS(仏)「恐らくヨーロッパやアメリカには、“数千人”のファンがいるんじゃないかな」
どうやら、高い評価を受けているものの、まだまだ一部の音楽ファンの間での話のようだ。しかし、その人気は徐々に拡大しているという。
LITA(米)「発売から何十年も経った今、ようやくアメリカに姿を現した素晴らしい音楽が、“日本ではずっと続いていた”と気づいた人がどんどん増えているよ」
WWS(仏)「日本の音楽はフランスやヨーロッパでは、まだよく知られていない。けど、今はトレンドが動き始めてハマる人が増えているよ」
清水靖晃がベストセラー入り
山下達郎、竹内まりや、大貫妙子をはじめ、細野晴臣、矢野顕子など、日本でも人気/知名度の高いミュージシャンは海外でも高い人気を獲得している。一方で、日本での知名度とは裏腹に、この復刻ブームでヒットしている意外なアーティストもいる。
例えば、サックス奏者の清水靖晃。彼のアルバム『案山子(かかし)』(1982年)は、昨年「Discogs」が発表した第1四半期のセールス・レポートでベストセラー入りを果たし、「TOP 20 BEST SELLING RELEASE VARIATIONS」で第2位となっている。
Discogs 2018年第1四半期セールス・レポート
https://blog.discogs.com/en/discogs-q1-2018-marketplace-analysis/
清水靖晃『案山子』
また、ムクワジュ・アンサンブルでも活躍した打楽器奏者の高田みどりは、ヨーロッパを中心に高い注目を集めており、2016年におこなわれた彼女のスイス・ジュネーブ公演はソールドアウト。英メディアの「Vinyl Factory」は、高田を特集したショート・ドキュメンタリーも公開している。
Midori Takada: In Motion
海外での復刻ブーム、今後の展望は?
昨年、英メディア「Vinyl Factory」は、日本の作品が海外で復刻され続ける現状について記事を発表。同誌は、2017年に欧米でヒットした、高田みどりの『鏡の向こう側』や清水靖晃の『案山子』は、復刻の成功例として「海外レーベルによるリバイバルの流れをさらに加速させた」と述べている。
また同誌は、海外レーベルが率先して再発に乗り出した理由に、「日本のレーベルがアンビエント作品などの再発に消極的になり、海外で手に入りにくくなった」ことを挙げている。
日本のレーベル「ベターデイズ」では…
昨年、30数年ぶりに再始動した日本のクロスオーバー/フュージョン系の伝説的レーベル「BETTER DAYS(ベターデイズ)」には、海外からの音源使用オファーが絶えないという。昨年、本誌がおこなった同レーベルのインタビューで担当者の野村氏はこう語っている。
「海外からの音源使用のオファーは、毎日のようにあります。いちばん多いのは清水靖晃さんの『案山子』(1982年)ですね。2番目がムクワジュ・アンサンブルの『ムクワジュ・ファースト』(1981年)。次いでカラード・ミュージックの『カラード・ミュージック』(1981年)ですね。この3作品が圧倒的に多い。あと、マライアの『うたかたの日々』(1982年)も海外の人気は高いです」
【BETTER DAYS】対談「あの頃、何が起きていたのか? ベターデイズ発足の経緯と“若き才能たち”」
この波は、この先10年は続くだろう
今回の取材を通して、「海外で日本の70~80年代作品が注目されている」という噂は事実であることがわかった。しかしその実態は、どうやら我々が考えていたよりも小さな規模で、熱を上げているのは一部の音楽ファンであるという側面も。例えるなら、映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』によって日本でも話題になったキューバ音楽のようなものだろうか。
しかし、このブームはまだまだ始まったばかり。今後さらに広がっていく可能性は十分にあり得る。仏『Les Inrockuptibles』誌のアズディン・フォール氏も「この波は、この先10年は続くだろう」と語っている。
また、今回取材に応じてくれた各国レーベルも、年内に多くの日本作品の再発を予定しており、今後は90年代や00年代作品の復刻も画策しているという。彼らにとっては、なにも70~80年代だけが特別なわけではない。音楽が素晴らしければ「時代もジャンルも関係なく、どんどんリリースしていきたい」という姿勢なのだ。