桁外れのライブ・パフォーマンスを見せる若手集団……というふれこみでスナーキー・パピーが日本に紹介されたのが2013年のこと。ベーシストのマイケル・リーグを中心に流動的なメンバーで結成。ジャズ+ファンク+ダンス+フュージョンを融合した「Jafunkadansion」を標榜した音楽性と、ズバ抜けた音楽力で以降3度のグラミーを受賞するなど、彼らが「現在最高峰のバンド」にまで登りつめるのにさして時間はかからなかった。
2015年には「ブルーノート・ジャズ・フェスティバル・イン・ジャパン」にも出場。パット・メセニー(g)やジェフ・ベック(g)といったラインナップの中では新参ながら、満場の観衆を沸かせたこともまだまだ記憶に新しい。また同年にオランダのメトロポール・オーケストラと共演した『シルヴァ』では、ストリングスをフィーチャーしながらドラスティックな情景を描き出し、翌年の『クルチャ・ヴァルチャ』では民族音楽の要素を色濃く取り入れるなど、ここ数年は新たな世界観を求めてさまよっていた過渡期にもみて取れる。そんな彼らだけに、3年ぶりとなる新作にどれだけの注目が集まっているかも想像できるだろう。
CDを手にとって感じたのは……まずそのジャケットの地味さ。魚が、骨と、身と、目に別れている。何かが違う。音を聴いてその違和感は実感となった。一聴した派手さも、変拍子を交えた超絶的なテクニックもさておき、じっくりと聴かせる作品に仕上がっているではないか。ホーン・セクションによる圧倒的なインパクトはなりを潜め、代わりにボブ・ランゼッティ、クリス・マックイーン、マーク・レッティアーリという3人のギタリストをフィーチャーしたロックなサウンドが骨子となったのも印象的だ。
これまでの音楽性とは明らかに異なる作風だが、これもまた、スタジオならではの音作りにこだわった末であると思えばうなづける。カタルシスをめいっぱい解放するライブと、腰を据えて制作するスタジオ作品。その両翼をバランスよく武器にできてきたともいえるだろう。
ちなみにタイトルの「イミグランス」は「移民」を指す「イミグラント」からの造語。リーグは本作に寄せて「すべてのことが常に流動的で、そしてまた私たちも常に移民である」とコメントしている。このアルバムに収められているのはまさに、人種を越えて集まったメンバーが音楽の国境さえ軽々と破ってみせたという「移民」の勇姿。そう思えばこの質素なジャケットも、骨と身に別れ、感覚さえ切り離されても、それぞれが独立した意思を持って前へと進もうとする力強さの暗喩にも思えてくる。
本作を携えてのワールド・ツアーは日本からスタート。個の集合としての「バンド」から、集合体としての「スナーキー・パピー」へと変異を遂げた彼らが、どのようなステージを繰り広げるか。新たな歴史の幕開けを目撃したい。
Snarky Puppy
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