12年のときを経て、シネマティック・オーケストラが新作とともに帰ってきた。
発売前から音楽通の間でも何かと話題になっていた本作だが、いざ聴いてみると、その仕上がりは予想以上。前作『Ma Fleur』(07年)の雰囲気を残しながらも、各曲の完成度、アルバム全体のストーリー性はさらに深みを帯びた。
文字通り“1本の映画”のような、彼らの集大成とも言える一枚だ。
ちなみにタイトル曲の「To Believe」が先行発表されたのは2016年のこと。この時点でアルバム完成は間近であったはずだが、実際リリースされたのはその3年後の2019年だ。そもそもなぜ、本作にはこれほどの長い時間が必要だったのだろう?
米メディア「XLR8R」のインタビューの一節で、彼らはドキュメンタリー映画『フラミンゴに隠された地球の秘密』(08年)の音楽に着手したことで「自分たちの本質を見失ってしまった」と語っている。
「あれはすべてにおいてキャパ・オーバーだった。僕たちは70人編成のオーケストラとともに映画の世界に踏み込んだわけだからね。結果的に僕たちは自分たちの本質を見失ってしまったんだ」
こうした背景も一因となっていたようだ。ともあれ、この12年という歳月は、彼らの気持ちをリセットする意味合いもあったようで、お陰で「自分たちの現在地を確かめることができた」という。
そんななか、ついに完成した本作『To Believe』には、熟練から若手までさまざまなゲストが起用されている。壮大なストリングスで全編を支えるのは、フライング・ロータスやカマシ・ワシントン作品でも活躍する人気アレンジャーのミゲル・アトウッド・ファーガソン。
なかでも注目は、「A Caged Bird/Imitations of Life」でラップ/ボーカルを披露しているルーツ・マヌーヴァ。シネマティック・オーケストラとの共演は、アルバム『Every Day』(02年)以来、じつに17年ぶりとなる。
なおシネマティック・オーケストラは、4月18日(木)と19日(金)に大阪・東京で初のホール・コンサート・ツアーを実施。19日の東京公演はソールドアウトしたようだが、18日の大阪公演は当日券も販売中とのこと。最新作を生で体感したい方は、足を運んでみてはいかがだろうか。