レッチリに見初められ、クインシー・ジョーンズからは自宅に招待、サンダーキャットとはマブダチ。そんな夢みたいな話を現実にしているのがLA出身の異才、ルイス・コールだ。
多くのマルチ・プレイヤー(複数の楽器の奏者)を輩出する近年の音楽シーンの中でも彼の存在感は異質。息もつかせぬ強烈なグルーヴと予測不能な音楽性、遊び心に溢れたチープでローファイな映像演出。これを一度食らうと頭から離れなくなってしまう。
そんな彼の最新EP『Live Sesh and Xtra Songs』が、フライング・ロータス主宰のレーベル Brainfeederからリリースされた。(販売はデジタルのみ)
本作は、6曲の未発表曲と3つのライブ録音で構成。AOR風のシンセワークに、ファンキーなリズム隊、前半4曲に登場するビッグバンドやしっとり聴かせる後半の楽曲もいい味を出している。LA発の作品だけに、夏の暑さも吹き飛ばすような爽快な聴き心地だ。
と、これだけでも十分魅力的なのだが、この作品の全貌は映像を絡めた方が伝わるだろう。まずは収録曲の「F it Up」の映像を観ていただきたい。
ご覧の通り、実はこの曲、一軒家で収録されたものなのだ。階下のリビングには10数人のビッグバンドを配し、ベランダには謎のダンスを披露するコーラス隊。キッチンにはキーボード、トイレにはギタリスト…。
画面左上では「F・ワード(Fuckなどの禁止用語)」の回数をカウントし、よく観ると冒頭のキーボード・スタンドは尻丸出しの人の下半身仕様だ。こうしたイタズラじみた発想も彼の魅力。しかし、こんなにふざけてるのに曲はカッコイイなんてズルイ…。
そんなルイスのキャリアはジャズ・ドラマーとしてスタート。南カリフォルニア大学ソーントン音楽学校でジャズを専攻し、ブラッド・メルドーやラリー・ゴールディグスといった一流ジャズマンたちとのセッション経験も持つ本格派だ。
加えてギター、ベース、キーボードも巧みに操り、ボーカルまでこなす多才っぷり。しかもオーケストラのスコアまで書けるというから恐れ入る。
ネット界隈では、すでに話題となっていたルイスだが、その知名度を押し上げたのは、大学時代の友人ジェネヴィーヴ・アルターディ(vo)とのユニット「ノウワー(KNOWER)」だろう。中毒性の高いポップ&エレクトロな曲調で人気を博し、ファンを公言する音楽界の大物たちも多数。
「コイツらはまじでアホだ。愛してる」(サンダーキャット)
「ノウワーを観た人は『もっと聴かせてくれ!』とひざまずくだろう」(クインシー・ジョーンズ)
冒頭でも軽く触れたが、レッチリ(レッド・ホット・チリペッパーズ)のアンソニー・キーディス(vo)は「bank account」という曲でルイスに惚れ込み、ヨーロッパ公演のオープニング・アクトに抜擢したらしい。
ちなみに、この曲の歌詞はこうだ。
「銀行口座を見たくないよ。銀行口座を見るのが怖すぎる…」
どこまでもふざけている…(笑)。
そんなルイスだが、昨年5月にはノウワーとして来日しており、同年12月におこなわれたソロ公演は全日ソールドアウト。彼の音楽は、すでに日本をも侵食し始めているのだ。夏はこれからが本番。茹だるような暑さの中でこそ彼の音楽を体験してほしい、そんなオススメの一枚です。
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