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Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN

日本の地に「Blue Note JAZZ FESTIVAL」が初上陸した。このフェスティバルは2011年からニューヨークで行われ、すでに現地の人気フェスティバルとなっている。チャレンジ精神溢れるアーティストたちが集うその生きるジャズのスピリットを受け、ここ日本でも大きな反響のなか第1回目を終えた。2015年9月27日(日)、この日は中秋の名月。横浜赤レンガパークの会場には20~30代の若い客層も詰めかけ、約1万人規模の野外ジャズ・フェスティバルとなった。コンテンツはジェフ・ベック、パット・メセニーといったジャズのニューフェイズを築き上げた憧れのスターと、ロバート・グラスパー、スナーキー・パピー、ハイエイタス・カイヨーテといった話題の新世代が混じり合ったラインアップ。そして以下レポートするフレッシュな3バンドのステージは、多くのファンを惹きつけていた。

開場後の13:00。舞台周辺はビッシリと観客に覆い尽くされていて身動きがとれない。フェスの一発目は、ハイエイタス・カイヨーテだ。彼らの2枚のアルバムを聴いた人なら、摩訶不思議なリズムと支離滅裂なメロディ、歌声含めその存在が奇天烈でとびっきりおしゃれなフロント、ネイ・パームをこの目で確かめたいと思ったに違いない。彼らの新作アルバム『Choose Your Weapon』(2015年)のタイトル曲からスタートし、同新作から3曲が続けざまに披露されたが、目の前で放たれる彼らの音は録音物での印象よりもずっとバンドとしての完成度が高いもので、パンチの効いた硬いビートや現代的で真新しいスキャット含め歌唱力に長けた美声に誰もが驚いただろう。大きく手を広げながら漂うようなネイの動きを見て、捉えどころがなかった曲のノリが掴めてくる。グラミー賞ノミネートの「Nakamarra」、『天空の城ラピュタ』をもとにした「Laputa」で観客の一体感が生まれ「Boom Child」、そして「Molasses」でペリン・モスのドラミングに拍手がおこる。アンコールでの「By Fire」まで瞬く間に曲が流れ、完全にビートトラックと化した重い後ろ乗りのグルーヴが会場を覆った。「こんなドラムの音出せるんならバンドやりたくなったわ」という声が聞こえる。ハイエイタス系のバンドブームがこれからくるかもしれない。

15:45のスナーキー・パピー目当てに、ステージ前の場所取りが1時間前から行われている。彼らを待つ客の中にはミュージシャンやジャズ研の大学生の姿も目立ち、「ハモンドBー3!本格的!」と楽器の機種や配置にも目を見張る。「ノーステキサス大学出身でしょ。アンサンブルに関してはピカイチだよね」ハイエイタスの見どころがリズムなら、スナーキーはアンサンブルといったところか。『We Like It Here』(2014年)収録のドラマチックな冒頭曲「Shofukan」で幕を開け、大歓声が上がる。30名もの構成員からなる彼らだが、当日は9名がステージに上がり一瞬にしてフィジカルな雰囲気に空気を変えた。シンセ使いのメロウチューン「Think of God」のハーモニーとともに空の雲が切れ、爽快な青空をバックにチューンアップした3曲では、エレキ・ギター、ボコーダー、そしてコリー・ヘンリーのテクニカルなアドリブでより一層白熱。ラストの「Quarter Master」でニューオーリンズのブラススタイル、古典的なスウィングまで組み込んだ見事なアレンジを披露し、最後まで観客を沸かせた。

16:45。ここでロバート・グラスパー・トリオを迎える観客は、芝生にくつろぐなど思い思いのスタンスで楽しんでいて、ジャズクラブにはない大らかな空気が漂っている。ライブの定番曲、プリンス「Sign ‘O’ The Times」、そしてハービー・ハンコック「Tell Me A Bedtime Story」でダミオン・リードの多彩なリズムパターンのドラムソロから、新作『Coverded』(2015年)収録の「The Worst」に流れで、約20分間ノンストップで待望のアコースティック・トリオが堪能できた。その後のフレディ・ハバード「Little Sunflower」では驚くべきことにパット・メセニーが登場。世界初共演となったこのステージでのグラスパーはいつになく挑発的ともいえる、はしゃいだようなアドリブを披露した。公開インタビューでもその嬉しさを語っていた彼だが、不意に見せたおどけたパフォーマンス含めサービス精神溢れるステージングを見せてくれた。2007年『In My Element』のオリジナルメンバーで奏でられた「Silly Rabbit」とともに、横浜の海上に姿を見せた満月。ラストにかけてのこの光景は、本フェスティバル1回目の語り草になるだろう。

帰り道「このフェス、ジャズじゃないね」と楽しそうに話す若い客の姿が印象的だった。そう、この日はステレオタイプのジャズではなく、時代を映す自由なジャズ感に満ちていた。その感覚は一番エッジーな音としてまた来年アップデートされ、そしてこれからも受け継がれるはずだ。

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