上原ひろみ率いる“ザ・トリオ・プロジェクト”のライブが、ブルーノート東京で行なわれた。上原ひろみが、アンソニー・ジャクソン(b)、サイモン・フィリップス(ds)という2人の巨匠とトリオを結成したのが2010年。そこから約5年間、世界中でライブを繰り広げてきただけあって、ユニットとしても円熟期に入りつつある。 ライブは、2016年2月3日にリリースされる、彼らの4作目となるニュー・アルバム『SPARK』のタイトル曲「SPARK」からスタートした。上原ひろみ自身、“お客さんがまったく聴いたことのない曲を1曲目にやるという暴挙”と語っていたが、新曲でライブを始めるというのは、彼らにとっても大きなチャレンジだといえるだろう。彼女の曲らしく、基本的なリズムは5拍子で、展開も次々と変わっていくという、かなり入り組んだナンバーにもかかわらず、3人の圧倒的な演奏とエネルギッシュなパフォーマンスで、観客をどんどんと彼らの世界に引き込んでいく。これは彼らの演奏が、聴き手の頭ではなく、身体とハートに直接訴えかけているからだろう。3人がひとつになってグイグイと突き進んでいくアンサンブルは圧倒的だ。この日演奏されたのは、「TAKE ME AWAY」「DILEMMA」「IN A TRANCE」など、ほとんどがニュー・アルバムからの楽曲だったが、まったく違和感なく聴けたのは、3人が創り出すストーリーが、聴き手にしっかりと“景色”を見せていたからだと思う。じつは私は、事前にニュー・アルバムも聴いていたのだが、すでにこのライブでは、その楽曲がさらに成長して、違う表情を見せるようになっていた。新曲なのに、ライブで演奏することによって、すでに進化しているのだ。これがこのトリオの大きな魅力であり、彼らが新曲ばかりを演奏するのも、それが彼らの“現在”を最も的確に表現できる楽曲だからだろう。