投稿日 : 2016.05.02 更新日 : 2018.01.26

Shuya Okino presents Mondo Grosso’s The European Expedition Tribute Live

取材・文:島田奈央子 写真: Yasunari Akita(Plural)

Shuya Okino presents
Mondo Grosso's The European Expedition Tribute Live

彼らのライブをどれだけ心待ちにしていたことだろうか。アシッドジャズブーム全盛期だった90年代を代表する和製ジャズバンド、MONDO GROSSOのスペシャルライブ。開催場所のビルボードライブ東京、ビルボードライブ大阪のチケットは、発売後すぐにソールド・アウト。約20年ぶりに実現したこの貴重なライブを、見逃せないというファンが会場に詰めかけた。

1階から3階までギッチリと入った満席の会場を見渡すと、大半は40代から50代の男女。90年代にモンドと共にクラブジャズを愛好していた同士だと思うと、密かに胸が躍る。

彼らがクラブシーンを賑わせ始めたのは90年代初頭。それまでは、ハウスやユーロビートが台頭していたが、沖野修也率いる、DJユニットKyoto Jazz Massiveが、70年代のソウルジャズやジャズファンク、ラテンジャズなど、メジャーなものからマニアックなものまでを独自のセンスで選曲し、クラブを大人の空間に変えたことから、お洒落な若者たちが注目し、日本でもアシッドジャズブームが始まった。MONDO GROSSOは、このKyoto Jazz Massiveから派生したバンドで、音楽プロデューサー、大沢伸一がジャズやブラジリアン、アンビエント系サウンドをオリジナル曲に反映し、生演奏を軸にした骨太なクラブサウンドを次々と創出していった。活動全盛期にはヨーロッパツアーを敢行。全国各地のイベントでも常に満杯だった。しかし、96年には大沢のソロプロジェクトという形へと変貌。ライブよりも制作活動が多くなっていった。MONDO GROSSO以降もクラブジャズシーンは根付いているが、彼らのような一大ムーヴメントまでには至っていない。今もなお、彼らの存在や影響力はクラブジャズシーンでは絶大なのである。
それだけに今回のライブは特別で、非常に楽しみだ。

このライブの仕掛け人は、活動当時、マネージャー兼プロデューサーを務めていた沖野修也。1995年のヨーロッパツアーの模様を収録したライブアルバム『The European Expedition』のリリース20周年を記念し、再現しようと特別に開催した。参加メンバーは、SOIL&“PIMP”SESSIONSやquasimodeのメンバーなど、彼らに影響された若手ミュージシャンたちと、活動当時も参加していたフランス人ラッパーのB-Bandj、世界で活躍するドラマー、屋敷豪太やMonday満ちるなど、総勢9人がステージに集結した。リーダーの大沢伸一は、沖野とライブ前のトークセッションに参加。MONDO GROSSOのヒストリーを語り、会場を大いに盛り上げた。

沖野修也のオープニングの挨拶後、『The European Expedition』にも収録されているアンビエント的な雰囲気の「Buddha」が始まった。“どんなライブになるんだろう?”と会場に緊張感が高まったが、続く「Yellow Note」のファンキービートで緊張が弾け、MONDO GROSSOらしいクラブサウンドが始まった。元晴とタブゾンビのW管楽器は演奏しながらステージの端から端までを激しく動き回り、屋敷豪太(ds)、西岡ヒデロー(per)、池田憲一(b)のリズム隊による、骨太の切り込むグルーヴで会場を盛り上げた。

そして、赤いドレスとファーのベストで華やかに登場したのは、歌姫、Monday満ちる。彼らの代表曲でもある「Anger」では、フルートを吹き魅力的な演奏で観客を沸かせた。そしてこの曲では、アルバムにも参加しているラッパー、B-Bandjも登場。また「Tree,air,and Rain On The Earth」や「Vipe-P-M-」など、こんなにもいっぺんに見てしまっていいのだろうか? と思うくらい、次々と代表曲が流れてくる。アレンジは、もちろんアルバムと違い、ソロ演奏を長めにとって、ライブの醍醐味を味わえるような内容になっている。また、曲の途中、屋敷豪太が参加しているイギリスのグループ、SoulⅡSoulのヒット曲、「Keep on Movin’」を組み込んで演奏するという、サプライズもあった。

とにかく、聴くところ、見るところに溢れていて、あっという間の1時間だった。ライブを見るだけで、こんなにも疲れるものだろうか。そう思ってしまうくらい、ステージも客席も真剣に楽しんだと思う。思い起こせば、当時のMONDO GROSSOのライブも真剣で、観客を十分に楽しませていた。

「俺らはまだ全然終わってないよ」と示すような今回のライブは、再び彼らの物語が始まるスタート地点のようにも思えた。