投稿日 : 2016.08.02 更新日 : 2018.01.25
indigo jam unit Final Billboard Live
取材・文/熊谷美広 写真/Yuma Totsuka
2016年夏をもって、活動を休止することを発表したindigo jam unit。彼らのBillboard Live TOKYOでのファイナル・ライブが、6月10日に行われた。
樽栄嘉哉(p)、笹井克彦(b)、和佐野功(dr.per)、清水勇博(dr)という、2005年の結成時から共に活動してきた4人のメンバーがステージに登場し、2007年のアルバム『REALism』に収録されていた「AdrenaLine」と「Matador」から、ライブはパワフルにスタートした。彼らはレコーディングでも、ライブ一発録り、ダビング一切なしという姿勢をずっと貫いていたが、ライヴ・ステージでは、そのパフォーマンスがよりエネルギッシュに、そしてよりアグレッシヴになっていく。4人がひとつのリズム・マシーンのようにまとまって、グイグイとグルーヴしていく演奏は迫力満点だ。基本的に彼らの楽曲は、1コードか2コード、もしくは循環コード系のものが多く、メロディというよりは、短いリフをつないで、それを繰り返し繰り返し演奏していくことによって、楽曲が生き物のように様々な表情を見せていく。まさにループを生演奏でやっているような、そんな面白さに満ちたアプローチだ。4人のメンバーがただひたすらグルーヴし、うねり、渾身のプレイを展開していく。特に今回は、Billboard Liveでの最後の演奏ということもあり、各メンバーのプレイにも、さらに力が入っているようだ。またステージ後方のスクリーンには、昔のニュース映像、イメージ映像、CGなど、それぞれの楽曲をイメージした様々な映像が流され、会場の空気を、より彼らの世界観へと誘っていく。
その後も『Pirates』(2008年)から「Giant Baby」、『indigo jam unit』(2014年)から「Horizon」、『REBEL』(2012年)から「RIO」と、様々なアルバムからセレクトされたナンバーが演奏され、さらに『Pirates』の初回限定盤のDVDにのみ収録されていたレアな楽曲「Cross」が演奏された。ミディアム・ファンク・ナンバーで、後半のドラムとパーカッションのバトルは迫力満点だった。そして「REN」(『REALism』)に続いて、東日本大震災からの復興への願いが込められた「Phoenix」(『INDEPENDENT』、2011年)が演奏された。ボレロ風のリズムに乗せて、次第に熱気を帯びてゆき、最後は4人のアンサンブルが大きなうねりとなっていくナンバーで、彼らの気持ちの入ったプレイがとても感動的だった。さらに「DANZA ETERNA」(『REBEL』)が演奏され、続く「2×2」(『2×2』、2006年)では、樽栄嘉哉と和佐野功の2人が4ビートのジャズを、そして笹井克彦と清水勇博の2人がファンキーなグルーヴを交互に演奏するという、まさにタイトル通りのユニークなナンバーで、indigo jam unitの音楽性の広さと、それぞれの演奏者としてのスキルの高さを見事に表現していた。そしてラストは、『Pirates』に収録されていたアップ・テンポのダンサブルなナンバー「Trailer」で、会場もひとつになって大いに盛り上がり、さらにアンコールでは2009年の『Collectivity』に収録されていた、ノリノリのサンバ・チューン「Rush」が演奏され、和佐野功のボンゴ・ソロも炸裂して、ライブは大盛況の中、幕を閉じた。
“ラスト”だからといって、ことさら悲壮感や終末感もなく、またそれについての特別なMCもなく、いつも通りのindigo jam unitのライブだった。そういうところが、とても彼ららしいな、と思う。indigo jam unitとしての活動はストップするが、メンバーそれぞれの音楽は続いていくし、彼らの音楽に対する情熱が消えてしまうわけでもない。きっと一人一人が、さらに進化した音楽を聴かせてくれることだろう。きっとこれは、indigo jam unitの新たなる旅立ちなのだ。そんな期待にも満ちた、とてもポジティヴなライブだった。