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休日、ゆったりとした気分で音楽を楽しみたい。そこに合わせる素敵な一杯とは? そんな音楽とお酒のマリアージュを楽しむ連載。第5回目は、南青山(東京都港区)にあるワインとお好み焼きのお店『赤い部屋』の飯田貴志さんにセレクトしていただきました。
作詞家・松本隆さんのエピソード
大瀧詠一『カナリア諸島にて』
大瀧詠一さんの『ロングバケーション』(1981年)は以前からよく聴いている一枚ですが、最近お客さんから聞いたエピソードが面白かったんです。 A面の3曲目に「カナリア諸島にて」という名曲がありますよね?
作詞をした松本隆さんは、この曲を作った時点ではカナリア諸島に行ったことがなく、書籍で読んだ世界観から膨らまして書いたとか。その後、ずいぶん経ってから実際に行かれたようですが、最初に着いたのは諸島のなかでも一番大きいグラン・カナリア島。そこは歌詞のイメージとまったく違って、本人は「ヤバい」と思ったというんです。
しかし、テネリフェ島に渡ったら、歌詞のイメージとぴったりの世界がそこにあった。もし、事前に来たことがあったとしても、あれ以上の歌詞はできなかっただろうと仰ったというエピソードがあるほど。
カナリア諸島で作られた、フルーティな赤
エンビナーテ/ベンヘ ティント 2017
そんな話を聞いたタイミングで偶然出会ったのが、カナリア諸島のワイン。しかも、これはテネリフェ島で作られているんです。さっきのエピソードを教えてくれたお客さまにお出したら、とても喜んでくれました(笑)。
『ベンヘ ティント 2017』は、ビオロジック農法(有機農法)によるナチュラルワイン。テネリフェ島は奄美大島と同じ緯度ですが、標高が1000mもあるところに古代品種の葡萄の木が育っています。海抜が高いため、低気圧の影響で雨はさほど降らないのですが、その代わりに霧が多くて湿度が高い。湿度があると、うどん粉病などの病害に侵されやすく量産が難しいんです。
味わいとしては、アルコール度数12%なのでパンチはありますが飲み口は柔らかい。さくらんぼのようなフルーティさが特徴です。冷やしても個性を失わない赤なので、この時期は軽く冷やしてから飲むのがおすすめ。その後、常温になるにつれて旨味が出てくるので、アルバム1曲目の「君は天然色」から、3曲目の「カナリア諸島にて」になる頃が、一番いい感じで味わえます。少し塩っぽい酸味や鉄っぽさがあり、余韻が長いので、のんびりとした時間が過ごせます。
翌日が休みの日の深夜に飲みたい
個人的には、翌日が休みの仕事帰り、深夜にパートナーと一緒に合わせたいですね。『ロングバケーション』は夏全開のアルバムではなく、どこか寂しさがある。その感じが、疲れて帰ってきたテンションと、翌日が休みという開放感に合うんです。
夏野菜をかじりながら、テネリフェ島のワインと大瀧詠一さんの「カナリア諸島にて」をマリアージュする時間。それが最近のお気に入りです。
JSA認定シニアソムリエの松坂 愛さんと共に、2016年「赤い部屋」をオープン。お好み焼きと音楽のセレクトを担当している。店内には、70~90年代のジャズやソウル、シティポップのアルバムが置かれ、常にレコードで鳴らしている。また、内装は店名通り、赤く染まっていてムーディな雰囲気。
・店舗名 /赤い部屋
・住所/ 東京都港区南青山6-6-21 グロービルB1
・営業時間/18:00~25:00
・定休日/日曜
・電話番号/03-6883-4583
・オフィシャルサイト/https://www.facebook.com/akaiheya16/