投稿日 : 2019.08.23 更新日 : 2020.11.25
【横浜・野毛/Sakura Taps】月替わりの選曲が楽しめるビアバー
取材・文/富山英三郎 撮影/高瀬竜弥
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「音楽」に深いこだわりを持つ飲食店を紹介するこのコーナー。今回は、横浜の野毛地区にて2015年にオープンしたビアバー『Sakura Taps(サクラ タップス)』を訪問。かつてジャズバーだったという場所だけあり、シックで居心地のいい空間。そして、毎月テーマを設けて選曲されているBGMにも注目です。
かつてジャズバーだった場所にオープン
この連載でも過去に紹介した、ちぐさ、ダウンビートといった老舗のジャズ喫茶が点在する横浜の野毛地区。その一方で、昔ながらの風情のなかに、安くて美味しいお店がひしめく呑み屋街として、若い女性からも人気を集める観光地となっている。
そんな魅惑の野毛エリアにあるビアバー『Sakura Taps』は、国内を中心としたクラフトビールの専門店ながら、BGMを選曲家に発注し、プレイリストをwebで公開するなど音楽にもこだわりを見せる。
「1990~2000年まで、上大岡でDJバーをやっていたんです。そのとき、レギュラーでプレイしてくれていたDJが矢野さん。彼とはその後も友達づきあいが続いて、ここをオープンするときに、選曲をお願いしました」とは代表の高橋恒治さん。
『Sakura Taps』は2015年のオープンだが、野毛にはすでに多くのクラフトビール専門店があったとか。それでもこの地を選んだのは、物件が魅力的だったからだという。
「ここは以前、ジャズレーベルのファイブスターズレコードが、アンテナショップ的にやられていたジャズバーだったんです。重厚感のある雰囲気だったので、多少手を加えた程度でほぼ居抜きでやっています」(高橋さん)
料理、コーヒー、クラフトジンも楽しめる
ウッドの風合いを生かした店内は、英国のビアバーのような趣がある。それでいてカジュアルな要素もあるので、ついつい長居してしまう。ほぼ毎日入れ替わるクラフトビールは常時8タップ。国内のブリュワリーを中心に、IPA、ラガー、シュバルツ、バーレイワインなど、バランスの取れたラインナップを心がけているとか。近年は季節限定のビールも多く、足を運ぶたびに面白い一杯に出会えるのが魅力だ。
「料理にもこだわっていて、すべてのメニューは添加物を使わずに調理しています。また、野菜は国産を使用し、肉や魚は産地表示をしています。たんぱく質が多い、ビールと一緒に食べても気にならないようなメニューが多いですね」(高橋さん)
コーヒーは、辻堂の27コーヒーロースターズのハウスブレンドを定番に、シングルオリジンを含めた2種類を常時用意。ペーパードリップで淹れている。また、最近はクラフトジンもラインナップしている。
月ごと、テーマの違うBGMを選曲
「いい意味でビールに傾倒しすぎないことを大事にしています。それはメニューだけでなく、公式サイトやSNSを充実させたり、選曲を専門家にお願いしているのもその一環。飲食店に限らず、お店の雰囲気においてBGMが占める割合いはものすごく大きいですから。同じ内装でも、かかっている曲調でガラリと変わるんですよ」(高橋さん)
選曲を担当する矢野研二さんは、現在はプロのDJではないものの、いまもなお幅広い音楽を掘り続けている。当初は月1~2回、お店に合う楽曲を持ってきてはパソコンにダウンロードし、それをランダム再生していた。しかし、2年ほど前から月ごとにジャンルや季節毎のテーマを設け、1日の営業時間である6時間30分の楽曲をセレクト。そこからランダム再生している。
「お店の雰囲気に合うだろうなと思ったものを素直にセレクトしています。とはいえ、ここはDJバーではなく、あくまでも視覚や味覚(ビールや料理)にこだわったお店なので、あまり音楽を目立たせたくないと思っています。お店を出たときに“居心地がよかったな”と思えるような、余韻を感じられる曲を選んでいます」(矢野研二さん)
エッジの効いたジャズが似合う店
日々、ジャンルレスに音楽をチェックしながら、自分用と『Sakura Taps』用に気になった曲を振り分けているという矢野さん。現在は月ごとにテーマを変えているが、セレクトには常にベースとなる曲があるという。
「スムース・リユニオンの『BMPD』という楽曲です。このお店がオープンするときに、ぴったりだなと感じたんですよ。スティーリー・ダン系というか、アーバンでジャズな雰囲気もある楽曲。やっぱり、この街やこの店の雰囲気にはジャズがしっくりくると思うんです。その一方で、クラフトビールやコーヒーなどエッジを効かせたものを揃えているので、オーセンティックなジャズというよりは最近のものが似合う。アルファ・ミストやカマシ・ワシントン。あとは、ジョー・アーモン・ジョーンズとかトム・ミッシュとか」
8月は初の試みとして、シティポップを中心とした邦楽のみの選曲にチャレンジした。毎月のプレイリストは、「SakuraTaps音楽部」というFacebookやブログで公開している。また、プレイリストから抜粋して、1時間程度でDJミックスしたものをYouTubeにアップするなど、積極的に発信している点がユニークだ。
お客さんの目当てはやはりクラフトビール
「来店理由の9割はクラフトビール目当てなので、音楽を理由に来られる方は決して多くはないですね(笑)。でも、いつか音楽系のイベントをやってみたい。うちのお客さんは40代が中心ですが、最近は若い女性も多いです。また、土日の野毛は観光地なので遠方の方もよくお見えになります。あとは、パシフィコ横浜でカンファレンスがあると、欧米の方が日本のクラフトビールを飲みに来られます」(高橋さん)
野毛のジャズ喫茶に立ち寄った帰りに、クラフトビールを一杯飲んで帰るというのも一興。その際は、人気定番メニューが商品化された、「燻製ミックスナッツ」をお土産にすることをお忘れなく。これ、かなりの美味です。
・店名 Sakura Taps(サクラ タップス)
・住所 神奈川県横浜市中区花咲町1-16-1
・営業時間 17:00~23:30(月曜~金曜)、15:00~21:30(日曜・祝日)
・定休日 無休
・電話番号 045-334-8873
・オフィシャルサイト http://sakurataps.com/