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オンラ『Fundamentals』

2011年の『Chinoiseries Pt. 2』から4年ぶりのオンラ(Onra)の新作。Jディラ・フォロワー的なビート・メイカーとしてスタートし、『Chinoiseries』では中国や東南アジアの古い音源を用いた独自のビート作品を展開していたが、2010年の『Long Distance』はデイム・ファンク(Dam-Funk)にリンクするシンセ・ファンク~ブギー集で、そこからニュー・ディスコなどにもコネクトする一面もみせた。いっぽう、バディ・サティヴァ(Buddy Sativa)と組んだヤター・ブフータ・ジャズ・コンボ(Yatha Bhuta Jazz Combo)ではスピリチュアル~エクスペリメンタル・ジャズをやるなど、多彩な顔を持つ。そんなベトナム系仏人のオンラが今回取り組むのは、ラッパーやMCと組んでのヒップホップ~R&Bアルバム。10歳のときにN.W.A.のセカンド・アルバムを聴いてヒップホップにハマった彼にとって、いわば原点回帰のアルバムだ。
シンガー/MC陣では『Long Distance』でもコラボしていた盟友のオリヴィエ・デイソウル(Olivier Daysoul)ほか、今回は西海岸のベテランのダズ・デリンジャー(Daz Dillinger)や、ブラック・ミルク(Black Milk)、ドゥー・オア・ダイ(Do Or Die)、スージー・アナログ(Suzi Analogue)ら米国勢がゲスト参加。全体に80年代半ばから90年代半ばのミドル・スクール期の香りが漂い、なかでもN.W.A.やドクター・ドレー(Dr. Dre)、スヌープ・ドッグ(Snoop Dogg)らに代表される西海岸勢のGラップやウェッサイへのオマージュが感じられる。『Long Distance』以降のメロウなシンセ・ブギー色も携え、R&Bとヒップホップを繋いだジョデシィ(Jodeci)あたりのテイストも。90年代を過ごした者にとっては懐かしさを感じさせるかもしれないが、こうしたサウンドを過去の遺物として埋もれさせるのではなく、モダナイズさせて2010年代の新しい音楽ファンに対して聴かせる、そんな意思が感じられるアルバムだ。

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