ジャイルス・ピーターソンというシーンのキーマンから届けられた逸材、ダイメ・アロセナによるデビュー・アルバム。ジャイルス、ダイメのそれぞれの拠点であるロンドンとハバナを股に掛けてレコーディングされたこのアルバムは、ラテンはもとより、ジャズやソウルなどさまざまな表情をみせてくれる一枚だ。
昨年リリースされたキューバの音楽シーンの発掘企画シリーズ「Havana Cultura Mix – The Soundclash!」への参加でジャイルスの心を鷲掴みにした彼女。8歳から歌手活動を始め、14歳の時に在籍していたビッグ・バンドLos Primos時代には大御所ジャズ・トランペッターのウィントン・マルサリスとの共演経験もあり、22歳にして既に新人らしからぬ表現力豊かな歌声を持ち合わせている。
これまでにホセ・ジェイムズや、グレゴリー・ポーター、ザラ・マクファーレーン、ディグス・デュークといった魅力的なシンガーを発掘してきたジャイルスを魅了するだけあってダイメの歌声には人々を惹きつける強い魅力を感じ取ることができる。それはエラ・フィッツジェラルド、エリカ・バドゥからの影響を公言しているようにジャジーな面、ソウルフルな面を持ちつつも、ルーツにあるキューバの宗教サンテリアの音楽の要素も溶け込んだ神秘的な歌声だ。その個性的な歌声はどんなジャンルやスタイルの音楽でもダイメ色に染めてしまう。このアルバムは彼女が「本物」だということを証明してくれる。