ジェシー・ウェアのツアー・ドラマーだったことがきっかけで、彼女やディスクロージャーを輩出したPMRからデビューした、サウス・ロンドン出身のドーニクことドーニク・レイ。似たような経歴を持った“歌えるドラマー”と言えば、オブ・モントリオールやヤーセイヤーのドラマーだったシンケインことアーメッド・ガラブがいるが、汎カリブ的なサウンドだったあちらと比べると、こちらはもっとR&Bオリエンテッドなスタイルが特徴だ。一昨年リリースされたリード・トラック「Something About You」で“マイケル・ジャクソンの再来”と騒がれたことも記憶に新しいが、シンセを基調としたアーバンなエレクトロR&Bとネオン・カラーのカバー・アートは、ヴァンパイア・ウィークエンドとラ・ラ・ライオットのメンバーによるサイド・プロジェクト、ディスカヴァリーやフランク・オーシャンのアルバムを連想させ、マイケルの「ヒューマン・ネイチャー」をカバーしたトロ・イ・モワあたりのインディーR&B勢とも親和性が高い。まずは名刺代わり、とばかりに不敵な面構えで見下ろすセルフ・タイトルのデビュー・アルバム、ぜひその顔と名前を覚えておいてほしい。