先日本人にインタビューした際にDJ KRUSHは、実に11年ぶりとなるオリジナル・アルバム『Butterfly Effect』を制作する上で90年代に自身が残した諸作を意識したという旨の発言をしている。その言葉通り、本作は、その後のヒップホップ、クラブ・ミュージックに絶大な影響を与えたDJ KRUSH流の“暗闇のロービート”のセルフ・オマージュとも言える仕上がりになっている。だが、“原点回帰”という一言で説明することは憚られる。MPC RENAISSANCEの制作への導入、また推測するにエンジニアとの濃密な共同作業によって、紛れもなく2015年のDJ KRUSHの音を鳴らしているからだ。ラップ、ダブ、現代音楽、ジャズ、ロック、ダブステップ――これらの音楽的要素の調理の仕方は、ゼロ年代以降のクラブ・ミュージックの現場を生き抜いてきた経験の賜物であろう。ベースは太く、音質はクリアで、メロディーが強調されている。また、新垣隆、Free the Robots、Divine Styler、Crosby Bolani、Yasmine Hamdan、tha BOSSといった個性的なゲスト・アーティストとの共作曲でもDJ KRUSHの色は少しも薄まることがない。サウンドの均質化が一方で進むクラブ・ミュージックにおいて、オリジナリティとは何かを改めて考えさせられる作品だ。
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