上原ひろみが、アンソニー・ジャクソン（b）、サイモン・フィリップス（ds）と結成した“ザ・トリオ・プロジェクト”による4作目。彼女のオリジナル曲を、3人が息の合ったプレイで聴かせている。彼女の曲は、展開が二転三転し、また変拍子なども多く使われた、複雑で緻密なものだが、そういった“難しさ”をまったく感じさせないくらい、3人がドライブしまくり、またきっちりとストーリーを語っている。1曲1曲、目を閉じて聴いていると、さまざまな景色が浮かんでくる、とても視覚的な音楽だ。これは彼らの演奏者としての、とてつもないスキルの高さと、表現力の豊かさ、そして5年間やってきたことによる意思疎通があって初めて可能になることだろう。もはや彼らは、“3人組”というよりは、ひとつの生命体のように、そこに存在している。上原ひろみのピアノが自由に空間を泳ぎ回り、そんなピアノを支えたり、煽ったりしながらも、大きく包み込んでいるメンバーの抱擁力もすごくステキだ。
■オフィシャルサイト
http://www.hiromiuehara.com/
文：熊谷美広