20年以上にもわたるトータスの変化は、そのまま世界的なポストロック・サウンドの変化とも考えられる。1994年のデビュー作はノイズからジャムへの橋渡しとなった。しかしジャム系のサウンドが定着しはじめた98年の名盤『TNT』では、ステレオラブと双璧をなす幻想的なエレクトロニカを実践。早々とその軸足を変えていた。2005年以降のアルバムはより一層ミクスチャが深まったが、同時に若干の混迷も見られた。7年ぶりとなる本作は、良い意味でのカオスに溢れている。メンバーのジョン・マッケンタイアによると1973年のヒット曲「ロック・オン」のストレンジなカバーは「子供の頃、ラジオで何度も耳にしていたことを思い出した」からだそうだが、「At Odds With Logic」には70年代のラウンジ感が、「Hot Coffee」には同時代のソウル感がある。なんと「Yonder Blue」というソウル・バラードまでも収録されている。エクスペリメンタル・サウンドによる70年代の再構築。そんな印象が残った。