カリブというと、キューバやハイチを思い浮かべる人が多いと思いますが、今作はそのあたりからもう少し東、西インド諸島のフランス海外県グアドループやマルチニークで聴かれ発達したビギンという音楽の金字塔。艶やかなジャケットデザインそのままな、20世紀前半にパリから持ち込まれたジャズの影響であろう軽やかに歌うクラリネットとソプラノサックスにピアノ。そしてレゲエやクンビアを知ったダンスミュージック・リスナーに馴染みやすいシンプルながらしっかりと刻むリズム。このリズムはグアドループ近隣のマルチニーク出身で、先日来日も果たしたシャソルもアルバムで取り入れています。ピアノはカリビアン・ジャズのパイオニアで今尚現役のアラン・ジャン・マリー。パリ経由の都会的で優雅な音色にうっとりしながらも、根底に流れる島の土着性のグルーヴを感じずにはいられません。まさにカリビアン・レア・グルーヴと言える今作は1966年の暮れのある日、ラム酒を飲みながら一晩で録音されたらしいです。