ドラマー、ケンドリック・スコットによる新作。自身のユニット“オラクル”名義のアルバムとしては2枚目。前作で見せたロックやエレクトロミュージックへの直接的なアプローチは影を潜め、あくまでジャズのフォーマットのままでジャズが持つ即興音楽としての魅力を前面に出しているのが印象的。さらに演奏の呼吸、演奏意図、楽曲への理解度などが高次元で共有されていて、まるで譜面を読んでいるのかと錯覚するように全員が即興でアンサンブルしていく。ときに絡み合うように、ときにパズルのピースをひとつずつハメていくように、ときにまろやかに溶け合うように、まるですべての楽器がシームレスに繋がってひとつの響きを形成していく。空気をたっぷりと含ませ柔らかく、ふくよかに鳴らすジョン・エリスのサックスが楽曲を膨らませ、濃密なアンサンブルの中の楽器の隙間に入り込んで、スルスルッと空白を埋めていくようなマイク・モレーノのギターがまるですべてのサウンドを吸着させているようにも聴こえる。どこまでが事前に決まっていて、どこまでが偶然に生まれているのかまったく分からないが、意図を共有したすべての演奏者がそれぞれの場で的確に機能してひとつのサウンドが作られて行くマジカルな感覚は、カテゴライズを拒む軽やかさをはらんでいる。
■オフィシャルサイト
http://kendrickscott.com/