冒頭、軽快なエレピのサウンドに乗ってエレクトリック主体のコンテンポラリーなジャズが展開されていく。新生インパルス!が契約したイブラヒム・マーロフの日本デビュー盤。
レバノン生まれの彼が親しんできたアラビア音楽のメロディを取り入れるために、ピストンが4つあるトランペットを駆使して“微分音”を表現する。その旋律はイスラムの礼拝の時刻を告げるアザーンの抑揚と酷似し、まるでアラブの国々の旧市街に入り組んだ、迷宮のような音階が新鮮だ。パリの音楽学校で学び、『VICTOIRES DUJAZZ 2010』でフランク・テノ賞を獲得するなど、数々の権威ある世界大会で存在感を示してきた彼。超速のパッセージはもちろん、エキゾチックな旋律をゆったり聴かせるスロウの楽曲も印象深い余韻を残す。その独自な音楽性は2014年に公開された映画『イヴ・サンローラン』に起用されたり、スティングやエルヴィス・コステロと共演したりと、活躍の場を広げている。イブラヒムの微分化されたフレイズに反応するかのように細かいパルスを発信し続けるドラムスの音も現代的な感触に満ちたモダンな作品だ。
■オフィシャルサイト
http://www.ibrahimmaalouf.com/