第一次世界大戦という人類の傲慢さが起こした未曾有の惨事。そこにイーノは現在も変わらぬ慢心する人類の姿を見る。本作をそんな人類への警笛とするため、その慢心の象徴としてタイタニック号の沈没事件を彼は本作のテーマとした。アルバムは、その半分を占める表題曲と「Fickle Sun」三部作の計4曲で構成されている。表題曲は暗雲たる航海を進むかのような不気味な風が終始流れ、「Fickle Sun (i)」でカタストロフィへと突入する。アンビエント~ポスト・クラシカル的手法でストーリーを描く一大叙情詩と言えるだろう。続く「Fickle Sun (ii) The Hour Is Thin」は淡々とその厄災を記録していく。アルバムの最後はイーノの『Another Green World』(1975年)あたりのサウンドを彷彿とさせる、光に満ちたイーノ自身によるヴェルヴェツのカヴァー「I’m Set Free」が飾る。サウンドはそのキャリアを包括し、なおかつ現代の社会へのメッセージを含んだ、イーノの新たな傑作と言えるだろう。
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