昨年7月の訃報がいまだに信じられない。菊地雅章のECMレーベル第2弾が登場した。2012年にリリースされた『サンライズ』(09年録音)以来、約4年ぶりの“新作”だ。収録は2012年10月に東京文化会館の小ホールで行なわれた。6月にはギター、ベースとのトリオで「ブルーノート東京」に出演しているが、本アルバムはソロ・ピアノによるパフォーマンスだ。
3~8分のインプロヴィゼーション9種と、ボサ・ノヴァの定番「黒いオルフェ」(別名「カーニバルの朝」)、60年代に書いた「リトル・アビ」で構成されている。曲が進むごとに、ゼリー状になった音の襞が四方八方からゆっくりと迫ってきて、だんだんと自分のからだがそれに包まれていくような気分になる。なかでも神技の域に達しているといっていいであろうペダルと空気の操作によって、とてつもなく厚く豊かな倍音を生み出す「東京パートIV」は圧巻。0分55秒あたりから1分02秒にかけての響きは“驚愕”という言葉がふさわしい。ピアニスト、イーサン・アイヴァーソン(ザ・バッド・プラス)によるライナーノーツも菊地に対する敬意が溢れていて清々しい。
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