イギリスのマルチプレイヤー、ダイレクターサウンドことニコラス・パマーの新作。2003年のデビュー以来6作目になる。ジャズ、エキゾチカ、映画音楽などさまざまな形容をされるが、本作のエッセンスは非常に明確だ。まず感じるのはカルロス・ダレッシオに近い映画音楽の感覚。ダレッシオが持っていた現代音楽のテイストに加えて、静かなフレンチポップのような、あるいはブラジルのMPBインストのような、静寂感を湛えたポップセンスがパマーの特徴だろう。そして極私的エキゾチカとでもいうべきプライベート・サウンド感覚。これこそが最も強力に感じられる。最小限のエフェクトとテクニックで並べられる各パートを聴いていると、1980年代初頭の日本のアンビエント系ニューウェイヴも思い出す。日本はもちろん世界的にもすっかり聴かれなくなった原初的なサウンドだが、あの時代に通じる無防備ですらある創作への意欲を持つ音楽家が2016年を浮遊していることに驚くような、嬉しいような…。
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