投稿日 : 2019.10.25 更新日 : 2020.11.25

【東京・原宿/JAZZ UNION】最高の音響で新譜が聴けるジャズ喫茶

取材・文/富山英三郎  撮影/高瀬竜弥

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いつか常連になりたいお店 #42

「音楽」に深いこだわりを持つ飲食店を紹介するこのコーナー。今回は、裏原宿エリア(東京都渋谷区)にある『JAZZ UNION』を訪問。自ら立ち上げた医療法人の理事長も務める、精神科のドクターが経営しているだけに、スケールの大きい話がいろいろと聞けました。

スタッフの多くは女性ジャズミュージシャン

若者の街として知られる裏原宿エリアに、造花のツタが巻かれた螺旋階段、その上に赤い十字の看板が設置された不思議な建物がある。1Fは原宿メンタルクリニック、その2Fにジャズ喫茶『JAZZ UNION(ジャズ ユニオン)』はある。

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「もともとはクリニックの休憩室だったんです。そこを改築して2012年にオープンしました」

そう語るのは、『ジャズ ユニオン』のオーナー桑崎彰嗣さん。1Fにあるメンタルクリニックだけでなく、栃木県で介護老人施設を運営するなど多角的な経営で成功している精神科医でもある。 赤と黒を基調とした店内は11席とコンパクト。スタッフは主に女性ジャズミュージシャンが日替わりで担当しており、彼女たちとのフランクな会話を楽しみながら、いい音でジャズが聴けるスペースとなっている。

ネルドリップで淹れられるオールドビーンズの美味しい珈琲は、阿佐ヶ谷にある『カフェドゥワゾー』のもの。スタッフは美味しく淹れられるようになるまで練習をするのだとか。そんな同店の特徴は、毎月30万円分ほど購入している新譜が聴ける点にある。店内には常時約800枚のCDやレコードが並ぶ。

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「自宅には約13万枚のCDやレコードがあって、常に店と循環させています。いくつかの店舗にお願いしていますが、主には僕の好みを知っている『ディスクユニオン 新宿ジャズ館』のスタッフに選んでもらっています。コンテンポラリージャズと再発ものがメインですね」

音響設計は数多くのホールを手がける唐澤 誠

以前は、毎月50万円ほども購入していたジャズコレクター。ガレージを改築したという自宅のストックルームは、データセンターのような専用ラックが並ぶ圧巻のスペースとなっている。

「自分でも何を持っているかすべては理解していないので、一期一会のような感覚で選んで聴いています。人が良いと言ったものをすぐに聴けるのがいいですね」

リスニングルームも4つ所有しており、その空間設計だけで各々3000~4000万円ほどかけているとか。そこには、ヴァイオリンでいうストラディバリウス級の音響機器が鎮座している。

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「音響設計は、国立文楽劇場や京都芸術劇場の春秋座などを手がけられている唐澤 誠さんにお願いしています。実はこのお店も唐澤さんが日曜大工的に施工してくれたんです。”自宅のリスニングルームとは違って、そんなにお金かけられないでしょ?”と言ってくれて」

一流ミュージシャンたちもライブをおこなう

そのおかげもあり、ジャズ ユニオンは吸音と反射のバランスが良く、音の良さが際立っている。現在は月に1度ライブがおこなわれており、定員22人の空間は常に満員。ミュージシャンたちからも音がいいと評判だ。

「当初は、スタッフが知り合いのジャズメンを集めてライブを始めたんです。そのうち徐々に有名な方たちも出演してくれるようになって、板橋文夫さん、竹内直さん、ユキ・アリマサさんなども演奏されています」

このコンパクトな空間で一流プレーヤーが演奏しているとは驚きだ。そこにいるすべての人が舞台上にいるような感覚だろう。そんなつながりの中で、ユキ・アリマサと荻原亮によるデュオ・アルバム『Nightmarish Paradise』が、店名を冠したレーベルから昨年リリースされている。12月にはお店でライブレコーディングをする予定もあるとか。

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癒されて疲れない音を目指したシステム

こうなると気になるのが、お店にある音響機器だ。メインとなるのは、JBLのオリンパス(スピーカー)に、マッキントッシュの真空管アンプ275。真空管はすべてヴィンテージ管(1本約5万円)が使われている。プリアンプは知る人ぞ知る、札幌にあるジャズ工房に特注した桑崎モデル。そして、C.E.C.のCDプレーヤーに、真空管TUBE DACが繋がっている。もはやマニアックすぎてよくわからない。

「自宅のリスリングルームは、モニタースピーカーのようなスポットの限られる設備なんです。でも、ここではどこに座っても満足できるような音を目指しました。JBLオリンパスは音像が定位せず、広がり重視で低音がブーミー。つまり、癒されて疲れない。それらすべての機材は自宅の倉庫にあったものです」

ボーカルものをかけるときに使うというセカンドの機材ですら、ウエスタンWE755のスピーカーに、浅野アンプ300Bという贅沢な仕様。これらの音響機器で最新のジャズが聴けるとあって、ジャズ好きだけでなくミュージシャンも多くやってくるとか。

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最高の音響を若い人たちに体感してほしい

「平日の昼間は60~70代の方が多いですが、週末は若い人がふらっと入ってくることもあります。若い子はみんなスマホで音楽を聴いていますが、こういう設備で音楽を体験する機会を得てほしい。そこで興味を持ったらライブに足を運んでほしいですね、やっぱりジャズはライブが一番ですから」

高校時代、オスカー・ピーターソンの「Alice In Wonderland」を聴いてからジャズにハマったという桑崎さん。一番好きなアルバムはバド・パウエルの『Jazz Giant』だと語るが、熱狂的になったのはフリージャズで、森山威男の追っかけでもあったとか。最後の質問として、現在も新譜を買い続けている桑崎さんに、ジャズとはどういう音楽なのかを聞いてみた。

「ジャズとは即興音楽ですよ。できれば4ビートがほしいですね、スウィングしないとあまり面白くないですから。フリーでもスウィングはできるんです、やっぱり音楽はウキウキしないと」

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・店名 JAZZ UNION(ジャズ ユニオン)
・住所 東京都渋谷区神宮前4丁目28−8
・営業時間 13:00~20:00(金曜~月曜)、13:00~21:00(水曜、木曜)
・定休日 火曜
・電話番号 03-5770-5472
・オフィシャルサイト http://jazzunion.jp/

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