「昔のソウルは良かった。今は駄目だ」を連発する年配のソウル・ファンは少なくない。そんな人々にヴィクター・デイヴィスを、ジョン・ルシアンを、そしてこのコン・ブリオを聴かせたい。三者はそれぞれ、2000年代初頭、1970年代、2016年のサウンドということになるが、果たして「今は駄目だ」氏がそれらの音源の年代を正確に言い当てることが出来るだろうか。ソウルの系譜は正しく脈々と受け継がれ、素晴らしい新譜が発表されていることを知っているのだろうか。
その最新型がこのコン・ブリオである。メロウ・ソウルの新解釈であったヴィクター・デイヴィスに対し、コン・ブリオは驚くことにソウル・ミュージックのほとんどすべての手法を、この1枚のアルバムに収めた。もちろんメロウなナンバーもある。しかし同時にメガヒットを呼ぶようなフックの強いアレンジやコーラスも次々飛び出して来る。「本当にこれがデビューアルバムなのか?」と唖然とする。このグループのボーカルを執る23歳のジーク・マッカーターに対して「天才的ボーカリスト」という手垢のついた表現は使いたくないのだが、他の言葉を思いつかず少し困っている。