2児の母となって発表する4年ぶりの新作。約15年前のデビュー作発表後はピアノよりも主にギターで曲を作っていた彼女だが、今回は自宅キッチンにあるピアノで曲を作り、弾き語りを聴かせてくれる。所属するブルーノートの75周年を祝うイヴェントでジャズの巨匠たちと共演したことで改めてジャズに目覚めたようで、今作ではそこで顔を合わせたウェイン・ショーターやドクター・ロニー・スミスを招き、彼女のボーダーレスな感覚を滲ませつつジャズの伝統に則したオーセンティックなヴォーカル作品に仕上げてきた。本人もハモンドB-3オルガンを弾いた「フリップサイド」のようなグルーヴィなアップもあるが、中心となるのは歌声も含めてブルースを感じさせる「トラジェディ」のような落ち着いたトーンのバラード。ホレス・シルヴァーの名曲「ピース」のカヴァーが実によく似合う内容で、ニール・ヤング「ドント・ビー・ディナイド」でも彼女らしいポップ・センスを発揮しながらジャズに着地している。ブライアン・ブレイドが大半の曲でドラムを叩くなか、カリーム・リギンスも数曲で参加。静かだが内に秘めた力強さを感じさせる。
■ノラ・ジョーンズ公式サイト
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