ニューヨークを拠点とする気鋭、中村恭士のリーダー作が遂に登場した。ぼくはマイロン・ウォルデンの『モメンタム』(2009年リリース)で初めて彼の名前を意識し、骨太で堅実なプレイに爽快感を覚えた。今回の新作でもベースの頼もしさに浸ることができる。
共演者が、またいい。ピアノのローレンス・フィールズは去る10月にクリスチャン・スコットのバンドで来日したばかり、ジョー・ロヴァーノの許でも活動する逸材だ。ドラムスのクラレンス・ペンは90年代から第一線に立つベテランで、マリア・シュナイダー・オーケストラでの演奏がよく知られていよう(中村は彼のバンド“ペン・ステーション”の一員でもある)。
「But Beautiful」では旋律を奏でるものの、基本的には“バッキングにまわったときの凄み”を満喫させてくれるのが本作におけるベースの役割だ。そして3人は「Stablemates」「Naima」といったカヴァー曲でハーモニーやリズムを小気味よく解体し、オリジナル曲ではメロディアスに、ときに50~60年代のモダン・ジャズを念頭においたかのようにスウィングする。録音も実に生々しい。
■澤野工房
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