2009年発売の『イエスタデイズ』(2001年録音)あたりからキース・ジャレットは旧録と新録を交互に“新譜”として出すようになった。『クリエイション』(2014年録音)から1年半ぶりのリリースとなる本作は、今からちょうど20年前にイタリアで行なわれた4つのコンサートからの収録。通して聴くと約300分かかる。
ぼくは彼が楽しそうな表情でソロ・ピアノを演奏するのを見たことがない。ゼロの状態から音世界を創造して発展させていく苦しみは間違いなくあるだろうし、観客の一挙一動にも相当、センシティヴになる性質の持ち主でもあるようだ。だがいちど鍵盤に指を振り下ろそうと決めてからの迷いは、いっさい感じられない。メリハリのある打鍵だなあ、リズム感がいいなあ、ピアノがうまいなあ。やっぱ第一人者と呼ばれるだけあるわ。静かに出てやがて抽象的な展開へと移り、そこから左手のベース音を重視したポップでリズミカルなパートに移り、エンディングでは波がひくように音が去る。フェラーラ公演のノリが、とくに熱い。
Universal Music Japan
http://www.universal-music.co.jp/keith-jarrett/products/ucce-1161/