アコースティック・ギターで独自の世界観を構築し続けているベテラン・ギタリスト、ラルフ・タウナーのソロ・アルバム。彼のトレードマークともいうべきナイロン弦の6弦ギターと、スティール弦の12弦ギターを駆使して、とても繊細で静かだが、その裏に熱い情熱を秘めているような演奏を聴かせている。決して弾き過ぎず、必要最小限の音で表現された音楽は、音と音との“隙間”も心地よく、楽曲を奏でるというよりも、自分の中から湧き上がってくる音たちを集めて、それをギターで紡いでいる、というような印象を受ける。タイトル曲以外は彼のオリジナル曲だが、クラシカルだったり、フォーク調だったりと、アコースティック・ギターという楽器の良さを活かした、ピュアなメロディを持ったものばかりだし、そしてなにより、ビル・エヴァンスの名演でも知られるタイトル曲の、1音1音を噛みしめるかのように奏でられていくギターのメロディが、この上なく美しい。